「アルザス」という言葉を聞いたことがありますか?
きっとお菓子好きなら胸がときめく言葉ですよね。

アルザスはフランス北東部に位置する地域圏で、ライン川とヴォージュ山脈にはさまれた自然豊かな土地です。

ドイツとの国境地域に位置するため、過去にはドイツ領土だった歴史をもちます。
そんな背景もあるためにアルザスはフランスでありながらドイツらしさも感じられる独特な雰囲気をもつ土地でもあります。

乳製品やフルーツが豊富なアルザス地方はお菓子の文化が発達し、パティスリーも多い地域です。そのため現在活躍する日本人パティシエにはアルザスでの修業経験を持つ方も少なくありません。

私がアルザスという地域を知ったきっかけも、あるお菓子屋さん(アルザスで修業された方のお店)との出会いでした。

それからというものの「アルザス」という土地がとても気になっていました。
独特の文化をもち、多くのパティシエを魅了するアルザスに一度は行ってみたい!と、強く思うようになりました。

そしてやっと2009年の夏に初めてアルザスを訪れました。
ずっと憧れていたアルザスは期待を裏切ることなく、想像していた以上に素敵な土地でした。

木骨組の家が立ち並び、色鮮やかに咲き乱れる花、そして南北に続くワイン畑など、アルザスには素晴らしい景色が広がります。


夏は美しい花々が咲き乱れる ストラスブールの街並み


それからというもの毎年アルザスを訪問しています。
そのたびに素敵な光景や美味しい食、穏やかな人々に出会い、ますますアルザス好きになってしまいました。

そんな私が旅の中で出会ったアルザスの景色、そしてアルザスのお菓子達について、紹介したいと思います。

一緒にアルザスお菓子旅をしているような。そんな気分になれるレポートにしていきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします!

アルザスの典型的な木骨組み
「コロンバージュ」の建物
荘厳なストラスブールの
ノートルダム大聖堂




アルザスには伝統的に伝わる郷土菓子が数多くあります。一年を通してある定番の他に、季節の行事にあわせて作られる独特なお菓子が多いのもアルザスならでは。まずはどんなお菓子があるのか簡単に紹介していきたいと思います。



王冠のような形をした陶器の型で焼いた発酵菓子。中にはレーズンが入っているのが一般的。アルザスのパティスリーやブーランジェリーには必ずと言っていいほど並んでいるアルザスの代表的な発酵菓子です。




「長いクグロフ」という意味の発酵菓子。横長の芋虫のような独特な形の型で焼く。
生地はクグロフと基本的には同じですが、少し変化をつけるためにくるみやシナモンなどを使ってアレンジしたものもあります。




シュトロイゼルが好きなアルザスらしい発酵菓子。
ブリオッシュに似た(もう少しライトですが)生地にシュトロイゼルをまぶして焼いた菓子パン。シュトロイゼルに軽くシナモンの風味を付けていることが多い。




フランスではどのお店でも人気のエクレア。
定番の味といえばチョコかコーヒーですが、アルザスではその二種類に加えバニラのエクレアがあります。白いフォンダンをかけたエクレアで、中にはクレーム・パティシエール(カスタードクリーム)が入っています。とても優しい味。




オーストリア発祥のお菓子「リンツァー・トルテ」が、アルザスではタルト仕立てで見かけることが多くあります。シナモンなどのスパイスをきかせたタルト生地に甘ずっぱいラズベリージャムを合わせた複雑で奥深い味のタルトです。




異なる2つの生地を層にした焼き菓子です。
外側がココア風味のダックワーズ、内側がアーモンドたっぷりの濃厚な生地で構成され表面にはたっぷりのアーモンド。食べ応えのある濃厚な味です。




「黒い森」という名前の生菓子です。お隣ドイツでは「シュヴァルツヴェルダーキルシュトルテ」という名前で親しまれています。黒い森「シュヴァルツヴァルト」をイメージしたお菓子で、針葉樹林とそこで採れるさくらんぼを表しています。ショコラ、グリオット、キルシュ(さくらんぼの蒸留酒)を組み合わせるのが一般的です。




冬から初夏にかけてアルザスで採れる野菜「ルバーブ」のタルト。ルバーブは酸味が強いため、たっぷりの甘いメレンゲで仕上げることが多い。




フランスではチーズをお菓子として使うことはほとんどないが、アルザスではドイツの影響を受け、チーズをつかったタルトがみられる。フロマージュ・ブランという非発酵タイプのチーズをつかったしっとりふんわりした食感は日本人にも好まれそう。




フランス全土で親しまれているパンデピス。はちみつとスパイスの香りとどっしりした食感を味わえる素朴な焼き菓子です。
スパイスが好まれるアルザスでも一年中よく見かけます。お店によってスパイスの調合や合わせる素材(生姜やオレンジなど)が違い、特徴が出やすいお菓子。




復活祭の時期に食べられる羊型のお菓子。生地はビスキュイで、ふんわり軽い食感。ユダヤ教の「過ぎ越しの祭」の際にいけにえの羊を食べる習慣に由来すると言われています。復活祭が近づくとたくさんの羊が並ぶ姿は圧巻!




栗の季節になると登場するお菓子。一見モンブランですが、アルザスでは「トルシュ・オ・マロン」と呼ばれます。その姿が松明に似ているから「Torche(トルシュ)」と呼ばれるという説があります。モンブランと違うのは土台の構成。生クリームの中にメレンゲが入っている事が多い。




サン・ニコラの日に食べられる発酵菓子。ソフトなパン生地を人型に成形したユニークなお菓子。プレーンのものやチョコチップ、顔あり顔無しなど、お店によって雰囲気がそれぞれで楽しい。




たっぷりのドライフルーツとナッツ、スパイスを少量のつなぎでぎゅっと固めたような濃厚なお菓子。フルーツがとれない冬でもフルーツを味わえるようノエルの時期に作られる。しっかりと濃い味なので薄くスライスして紅茶や赤ワインと合わせるとよい。




クリスマスの時期に作られる小さなサブレ類の総称。ナッツやスパイス、ジャムをつかったものなどがあり形や味は様々。マルシェ・ド・ノエルではたくさんの種類のブレデルを見かけることが出来る。



次回は私がストラスブールで訪れたパティスリーを中心に紹介していきたいと思います。お店の雰囲気やおすすめのお菓子などを交えて美味しそうな写真たっぷりでお届けしますね!






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