フランスで愛されている素朴なお菓子といえば「パン・デピス」。スパイスのパンという意味を持つお菓子です。このお菓子はその名の通り、スパイス風味のパンのようなお菓子。
小麦粉、シナモンやジンジャー、アニスなど数種類のスパイス、蜂蜜、牛乳などをあわせ膨張材で膨らませた素朴でスパイシーなお菓子です。

バターなどの油脂分は入ったり入らなかったりで、バターなしだとパサっと乾いた感じ、バター入りだとしっとりリッチな感じに仕上がります。
スパイスはお店によって使う種類や調合具合が変わってきて、その違いがパン・デピスの面白さでもあります。

パン・デピスといえば、ワインで有名なブルゴーニュ地方が知られていますが、アルザスでもたくさんのパン・デピスを見かけることができます。

華やかなお菓子ではないですが、大体のパティスリーで昔から親しまれているパン・デピスをいろいろと食べてきましたので、今回はそんなパン・デピスにスポットをあてて紹介していきたいと思います。


テュエリー・ミュロップ外観

まずはパティスリーのパン・デピスから。
アルザスを訪れる前々から気になっていたのがストラスブールの「テュエリー・ミュロップ」のもの。
雑誌で見て、一度たべてみたいなと思っていました。


美しく包装されたパン・デピス
ラインがシャープで洗練されています


パン・デピスはお店の人気商品のようで、パウンド型で焼かれたものがたくさん積み重ねられていました。
洗練されたミュロップさんの手にかかると素朴なパン・デピスも、すっきりシャープな印象。
フランスのパン・デピス特有のパサパサ感はなく、しっとり口溶けのよいリッチな味わいでした。比較的日本人にも受け入れられやすいので、パン・デピス初心者にもおすすめです。



ストラスブールのパン・デピス専門店

そしてこちらはストラスブールのパン・デピス専門店、その名も「パン・デピス」。
小さなお店の中にはたくさんの種類のパン・デピスがところ狭しと並んでいます。

迫力ある大きなパン・デピスたち クッキータイプのパン・デピス

ドライフルーツ入りのものナッツ入りのものなど、どれにしようか迷ってしまうほど。
試食も出してくれたりするので是非食べてみて下さい。
こちらのパン・デピスは、程よいスパイス感と甘さがあり、比較的さっぱりした味です。
水分は少ない方なので、牛乳や紅茶などと一緒に楽しむといいと思います。

量り売りなので、ある程度の大きさにカットされていますが、かなり重量感があって手に持つとずっしり重く迫力があります。こちらにはパウンドタイプの他にクッキータイプのパン・デピスも売っています。
ちょっとしたおやつにぴったりの可愛いパン・デピスです。


ジーグレー外観


栗と胡桃のパン・デピス

こちらはストラスブールのパティスリー「ジーグレー」。
お菓子もラッピングもとってもセンスあふれる素敵なお店です。

冬に訪れた時には、いつも以上にパン・デピスが充実していました。その中でも気になったのが栗のコンフィと胡桃入りのパン・デピス。フルーツやナッツが入ったものは定番ですが、栗入りは珍しいですね。
栗のほっくり優しい甘さとスパイスの相性が良かったです。表面にお砂糖をかけた楕円形のパン・デピスは、比較的乾いた感じの素朴な食感でした。



パン・デピス博物館

こちらは郊外にあるパン・デピス博物館。お菓子の家のような可愛い外観がとっても素敵です。
とは言っても、パン・デピスを展示しているとかいうわけではなく、アンティークのお菓子の道具や型が展示されています。

大きなパン・デピスがぎっしり デコレーションが賑やかなパン・デピス

お土産売り場にはアルザスのシンボル、コウノトリの人形と並んで、たくさんのパン・デピスが並んでいます。大きなどっしりタイプは、フルーツのコンフィ入りや、林檎とシナモン味、プレーンな味などバリエーションが豊富です。
それから、アイシングでデザインを施したハートの形のパン・デピスもおいてあり、レトロな可愛らしさがあります。


クリスチャンのパン・デピス


メゾン・フェルベールのパン・デピス

パン・デピスは、パウンド型で焼いたものが定番ですが、アルザスではこういうクッキーのような型抜きタイプのパン・デピスも見かけることがあります。
左の写真のパン・デピスはストラスブールのパティスリー「クリスチャン」のもの。
表面に薄く糖衣がけして、ナッツやフルーツを飾っています。
こういうタイプのパン・デピスはノエル(クリスマス)が近づくとよく見かけるようになります。

右の写真は、ニーデルモルシュヴィル村のフェルベールさんのお店のもの。
星型に抜いたパン・デピスにチョコレートをコーティングして、デコレーションしたもの。こちらもノエルの時期のものです。普段は地味なパン・デピスも、こうやってデコレーションすると華やかさがアップして、ノエルがやってくる気持ちを盛り上げてくれますね。


オレンジのパン・デピス チョコとジャム入り、リッチタイプのパン・デピス

そして、こちらはコルマールのパティスリー「ギルグ」のパン・デピス。
左はオレンジのコンフィ入りのもの。もっちりむっちりな食感にほのかに爽やかなオレンジ風味。
スパイスはそれほどきつくなく、食べやすい味です。
右は、キューブ状にカットしたパン・デピスの生地にフルーツのジャムをサンドしてチョコレートでコーティングしたタイプのもの。
パン・デピスのスパイスの香りにフルーツの甘酸っぱさとチョコレートのコクが加わりとってもリッチな味わい。また是非リピートしたい美味しさです!こちらもノエルの時期に出会ったもの。やはりノエルが近づくとパン・デピス関連のお菓子が増えてきますね。



サンタさんの顔がほのぼのパン・デピス 小人のイラストを貼り付けるという技入りパン・デピス

こちらもギルグのノエルの時期のパン・デピス。
星型のパン・デピスはサンタさんのアイシングがキュート!
楕円のパン・デピスには小人のイラストが貼られています。食べるのがもったいないくらいの可愛らしさです。


パン・デピスの食べ比べも楽しい!

もともとパン・デピスにはあまり興味がなかった私ですが、アルザスを旅するうちにすっかりパン・デピスのとりこに。日持ちするお菓子なのでいろんなお店で買ってきては友達とシェアして、パン・デピス食べ比べをするまでになりました。

本当に素朴なお菓子なので、作り手によって形も味も食感も様々。そんなところが興味をひかれるところでもあります。
アルザスを訪れたら是非いろんなパン・デピスを探してみてくださいね。




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