豆を使ったアイデアレシピ・・・と、簡単に思うなかれ。この本のこだわりは、在来種の地豆を使ったアイデア料理なのです。
まず、豆の在来種を考えたことって、なかなかないですよね。
豆の料理と聞くと、健康的というイメージが第一にわき、もちろん、栄養が豊富な豆は健康にもいいのは当然なのですが、それ以上の興味がわいてくるのが、本書のすごいところでもあり、楽しいところ。



豆の大産地である北海道在住の著者の伊藤美由紀さんは、北海道遠軽町の雑穀商「べにや長谷川商店」との出会いから在来豆の魅力に開眼し、以来、作ってきた豆料理の数は500以上という豆料理愛好家。
ご自身でも在来豆を育て、食べる、加工するを実践。豆の魅力を伝えたいとコンパクトデジタルカメラで豆の写真を撮り続ける写真家でもあるのです。

そして、そんな伊藤さんのよき相棒となったのが、本書の企画、編集、構成などを担当しているブックディレクターのやぎぬまともこさん。
やぎぬまさんは、いつか豆料理の本を作りたいと熱望し、なんと構想8年の長い年月をかけて企画していたそうです。そして、国際豆年である今年、とうとうやぎぬまさんの夢もかない、このレシピ本が生まれたのです。

本書の魅力は、まず、一般的に広く知られている育成品種と在来種の豆の違いから勉強できること。日本人なら誰でも豆の世話になっているはずなのに、知らなかったことがいっぱい。豆だけでなく、農業全体に言えることだなと思うところもあり、心に響きます。 それにしても、豆の種類の多いこと!本書を見て、それぞれのレシピを作っているうちに、必ず、第2、第3の伊藤さんが生まれてくること間違いなし。

北海道の代表的な豆の分類図。原寸大の豆の大きさで紹介されている



さて、豆の知識を学んだ次は、豆の基本調理を学びます。
豆の料理をしようと思っても、豆って前の晩から水に浸しておかなきゃいけないし、ちょっと面倒くさい・・・って思っている人が多いと思います。
もちろん、本書でもその正当法のやり方も伝授してくれますが、それ以外にも「豆の浸水を省いていきなり茹でる」方法など、自分のスタイルにあった基本調理が選べます。

豆の基本調理を学びます。たくさん作っておいて冷凍保存しておけば、必要なとき、必要な分だけ使えます



そして、そのあとは、おすすめの豆を使った豆料理がたくさん紹介されます。
豆と野菜、豆と肉、豆と魚、スープにしたり、サラダにしたり、あ〜、豆のご飯もはずせない!おいしいスイーツにも姿を変えるし、豆って本当に万能選手です。
伊藤さんの数多い豆のレシピから厳選された100のアイデアレシピを見ていると、豆の可能性の深さ、広さに圧倒されます。

本金時とジャガイモの酒かす味噌煮。茹でた豆とレンジで加熱したジャガイモに酒かす味噌のタレを煮からめて作る大人向きの煮物は、この写真を見ているだけでよだれがでそう


栗いんげん入り豚の角煮。洗っただけの豆をほかの材料と一緒に煮込むことで時間を短縮。角煮を豆入りにすると豆にも味が入っておいしくなります


福白金時と玄米・ジャガイモのスペイン風スープ。スペインに炭水化物をトリプル使いしたスープがあると知って作ってみたというスープは、重たいどころかとろりとやさしく、思わずうなる味わいに


茹で豆、煎り豆からパパッと作る「ひと手間 豆の前菜」の紹介もうれしい


手亡と塩レモンの白いスコーン。優しい色合いに見ているだけで癒されます。塩レモンのほのかな塩気もいいアクセントに


その料理に使うおすすめの豆の中には、もしかしたら手に入りにくい豆もあるかもしれませんが、その時は、ご自分の手に入れやすい豆で作ってみてもOK。
でも、このレシピを見ていると、おすすめの豆を使って作ってみたくなるんですよね。 そんな時は、本書の最後に紹介されている「在来種の豆を買える店DATA」を役立ててみてはいかがですか。




食卓に並べやすい日本の在来豆アイデアレシピ100
地豆の料理


 著者:伊藤美由紀
 発行所:株式会社 誠文堂新光社
 定価:本体1,500円+税