ホシノ天然酵母+国産の南部小麦。この2つの素材をメインにパンを焼き続けているのが、この本でパンの製作指導にあたっている、「天然酵母パン 南部」の杉山 勝さんです。実は杉山さん、10年ほど前まではパンが好きではなかったそう。中でも天然酵母のパンは“固い”とか“酸っぱい”イメージがあるため敬遠していたと言います。そんな杉山さんをパンの世界へと導いてくれたのが、「ピッコリーノ」の伊藤幹夫先生でした。伊藤先生が焼くホシノ天然酵母+南部小麦のパンを食べてそのおいしさに目覚め、ついにはお店を開くにまでに至った杉山さん。この本では、花粉症、アトピー性皮膚炎、化学物質過敏症の方でも食べられるような“体にやさしい”パンを作るためにオーガニック素材やアルカリイオン水を使ったり、国産小麦(中力粉)の特性を引き出すためにオリジナルのレシピを加えたりなどの独自の工夫をこらしつつ、家庭でも作りやすいレシピを紹介しています。






嬉しいのは、ひとつひとつの工程を、とても詳しく解説してくれているところ。まず生種のおこし方に始まり、生種が熟成していくようす、捏ね方、発酵の見極め、成形の仕方など、順を追ってコメントつきの写真を掲載。お店でパン教室を開いている杉山さん、教え方のツボを心得ているからなのでしょうか・・・まるで、教室を体験しているかのような丁寧さなのです。これなら、初めての人も安心してトライできそう。

中でも特徴的なのは、生地作り。中力粉である南部小麦は捏ねすぎないことと温度を上げすぎないことが大切。そのため、生種、水、粉を合わせる時にはさいばしでかき混ぜ、捏ねる時間も5分以内にするなど気をつけます。強力粉のパン作りに慣れている人には驚くことが多いかもしれません。





肝となる種作りも、写真と解説をしっかり
頭に叩き込んでから始めれば大丈夫



発酵不足、または発酵オーバー!? 写真を見れば、
うまく焼けたかどうかもチェックできます




さて、実際に作るパン生地の種類は、大きく分けて5種類。「基本の白生地」、全粒粉やライ麦などを入れた「ブレンド生地」、ナッツやフルーツなどを入れた「具入りのパン」、菓子パンも作れる「ソフト生地」、そしてバターを折り込んでいく「パイ生地」です。ホシノ天然酵母で作る南部小麦のパンは、酸味もなく、ふっくらもっちり仕上がるのが特徴。どれもイーストパンにはない独特の旨みや素朴な味わいで、日々のパンにぴったりです。そして、「ソフト生地」の章では、南部で人気の「レモンパン」も登場します。これは是非作ってみたい!


基本の白生地で作る田舎パン。マスターすれば
バタールや山型パンも作れます



黒米パンや発芽玄米パンなど、ブレンドすればよりヘルシーに


ナッツやフルーツをたっぷり入れた
木の実パンは、プレゼントにも最適



クッキー生地カリカリ感がたまらないレモンパン



酵母が育っていく過程を楽しめる天然酵母のパン。気温や湿度など環境の変化を受けやすいデリケートな一面もありますが、毎回違った表情を見せてくれるのも、また魅力です。その醍醐味は手作りしてこそ、味わえるというもの。皆さんもこの本を手に、早速、種作りから始めてみてはいかがですか?


プロが使う材料の計算法、ベーカーズパーセントの考え方や、
クープを入れる意味、ブレンド生地の扱い方など、コラムも充実







初めての人でもつくれる
体にやさしい天然酵母のパン

パン製作指導:天然酵母パン 南部
杉山 勝
杉山 律子
発行:昭文社
定価:1,200円(税抜き)