“パンは小麦粉からできて、小麦粉は麦からできる”(本書より)
というのは当然のこと。でも、その麦のこと、皆さんはどこまで知っていますか?
この本は、小麦育種家を父に持つという特殊な環境で育った大和田聡子さんの、麦との交流を綴ったストーリー。







きっかけを作ってくれたのは、大和田さんが幼少時代にお父様が開発した岩手産の粉、「こゆき」。無事に商品化はされたものの、今では生産数は少なく消滅しかかっているという現実を知った大和田さん。これは何とかしなくてはと立ち上がります。それまではパンとワインが好きな普通の主婦だったそう。ところが、旨みがあって澄んだ味わいの「こゆき」に魅せられ、台所でパンと格闘するうちにますますのめり込んでしまい、デパートに卸したり通販を立ち上げたりなどの過程を経て、ついには自宅を改造して天然酵母のパン屋「ワルン・ロティ」を開業。そうこうするうちに、今度は自身のパンのルーツとなった父親の仕事を振り返ろうと、故郷、岩手の麦畑に足を運び、また、国産小麦の現状を知るために日本全国の麦畑を訪ねて・・・。







ひと粒の麦が大和田さんの人生を大きく変え、パンを食べる立場から、パンを作って畑と食卓を結ぶ立場へと成長していく過程が、自然体の生き生きとした文章で描かれています。そして何より、小麦への愛情がストレートに伝わってくるから、自然と、大和田さんだけでなく、国産小麦を開発している人や育てている人たちにエールを送りたくなるはず。


「パンとワインの幸福な出会い」の章では、ワルン・ロティのパンとワインの気軽な楽しみ方を紹介


パナデリアも、ワルン・ロティのパンが大好きです。こゆきを熟知した大和田さんが少しずつ丁寧に焼き上げたパンは、彼女のピュアな想いそのままの優しく澄んだ味わい。そんなワルン・ロティのパンのファンはもちろん、国産小麦は未体験というパン好きの方にも是非お薦めしたい1冊です!



麦畑からお届けするパン屋です

著者:大和田聡子
発行所:自然食通信社
定価:¥1,600(税別)




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