文 佐々木 千恵美  


スイーツのポータルサイト『Sweet Cafe』を主宰し、パナデリアにも「フランススイーツ紀行」を連載されたお菓子研究家の下園昌江さんが、この6月にご自身のレシピ本を出されました。

お菓子研究家、下園昌江さん


まずは表紙を彩るクッキーとタイトルにひと目で引きこまれます。
なになに、このおいしそうなサブレたちにどんな秘密があるのかしら?


「おいしいサブレの秘密」表紙。ソフトカバー、オールカラー80ページのレシピ本ですが、カバーを取るとモノトーンで麻布のような質感がかっこいい。これぞ紙物出版物の愉しみ。


表紙をめくってみると、目次がさらにステキ。
まるでサブレの図鑑のように、名前、ページと共に一枚のサブレ画像が添えられています。
今日はどれを作ろうかなと、目次の画像を見ながら決められるのは心が弾みますよ。


サブレの図鑑のような見開きの目次。お店でお菓子を選ぶみたいに、完成形がひと目でわかるので、作ってみたい、食べてみたいサブレのページにすぐ行ける。計30種類のレシピはフランス菓子をベースに、ドイツ菓子やウィーン菓子などからもいくつかピックアップされている。


目次をさらにじっくり見てみると、3つのカテゴリーに分けられていることに気づきます。

 *「ねりねりバターで作るサブレ」
 *「さらさらバターで作るサブレ」
 *「とろとろバターで作るサブレ」

そう、この本のテーマであるおいしいサブレの秘密はバターにあったのです。

空気を取り込みサクッサクに出来上がる「ねりねりバター」はサブレの主軸。パイ作りと似た「さらさらバター」はサクッホロッ。液体にした「とろとろバター」はガリッザクッと素朴なルックス。

お菓子作りで重要なバターは、風味のよい油脂というだけでなく、その性質によって様々な働きをもたらします。冷たい状態とやわらかい状態、熱を加え液体にした状態で生地を作るとそれぞれ違うテクスチャーに出来上がるのです。


見た目だけではわからない数あるサブレの風味とテクスチャーを、バターを扱う3つの状態別製法に分け、それぞれの冒頭には特徴と基本となるサブレの詳しいプロセスが紹介されている。


バリエーションとなるレシピは、左頁に紹介付きの写真、右頁に分量、プロセスが細かく記載されているのに加え、保存方法も載っています。そうそう、作った後ってどのくらい日持ちするかや保存場所など、お家で作る場合は意外に戸惑うところ。お友達にプレゼントするときも一言そえられるから助かりますね。


ねりねりバターで作る「レモンアイシングのサブレ(サブレ・オ・シトロン)」。使った型の写真や仕上げのアイシングのかたさ状態もわかるようになっている。


ねりねりバターで作る「くるみのサブレ(ヌス)」。手で成型するものはポイントとなる手作業の写真が参考になる。


さらさらバターで作る「サブレ・リンツァー」。シナモン香るサブレとラズベリージャムでウィーン菓子のリンツァートルテを応用したジャムサンドに。さいころみたいなジャムの穴は口金を使って。遊び心が入れられるのも手作りならでは。


レシピはかなり細かく記載されています。0.1g単位のスケールを用意してきっちり計るのは少し面倒ではありますが、シズル感ある写真に心躍らせて美しくておいしいサブレを目指しましょう。

さあ、焼き上がったらお友達や大切な人にシェアするのはいかが?
サブレは日持ちするので沢山種類を作って詰め合わせにするのも楽しいですよね。本の最後には、かわいい箱や缶を選んでセンス良く詰めるコツが紹介されています。開けたときに相手の驚きと笑顔を想像しながら設計し、詰め合わせる作業は大変だけれど楽しいはず! あの人にはあれとこれとかわいいカードもつけて…と、眺めながら、妄想がどんどん膨らんで進んでしまう、そんな1冊になっています。ぜひ手に取ってご覧ください。


作ったサブレをぎっしり詰めて手みやげに! コツさえつかめばまるでパティスリーに並んでいるような詰め合わせができあがる。いくつかの例を参考に解説している。





おいしいサブレの秘密

 著者:下園昌江
 定価:本体1,500円+税
 発行:文化出版局
 発売日 : 2020/6/15
 単行本 :80ページ