「フランスの素朴な地方菓子」、この本の「Introduction」にも書かれているように、日本各地にその土地の銘菓があるように、フランスにもその土地で親しまれている郷土菓子があります。
それは、バターや卵、小麦粉といった、身近な材料を使い、そのほとんどが焼きっぱなしで素朴なもの。決して華やかなものではないけれど、長い間ずっと人々に愛され続けています。
そして、そんな素朴な地方菓子は、どれもが歴史や背景、奥深いストーリーを持っているのです。



本書は、そんなフランスの素朴な地方菓子に心を奪われた下園昌江さんと深野ちひろさんによって、フランスの地方菓子への愛情がいっぱい詰まった1冊に仕上げられました。 それは、一朝一夕にできたわけではなく、お二人の長い間の研究や、実際に自分の足で何度もフランスを訪ね、自分の舌で試した日々の蓄積でできたもの。 長い時間をかけて大切に育て上げた知識が、この1冊に惜しげもなく詰め込まれているのです。

「地方ごとのお菓子の特色」のページでは、それぞれの地方菓子の特色を簡単にご紹介


まずは、「フランスのお菓子の返還」や「お菓子が生まれた背景」などを、しっかりと勉強します。
そのあとは、それぞれの地方ごとに、その地域の特色や食文化の特色などを説明しながら、その地方のお菓子を紹介していきます。
地方の特色を学ぶことによって、「だから、このお菓子ができたのか」という理由がよくわかります。
そして、それぞれのお菓子の説明部分には、そのお菓子にまつわるストーリーや歴史などが紹介されています。
これまで名前は知っていたけど、その歴史的背景を知らなかったお菓子などもあり、興味深く、どんどん読み進んでしまいます。

イル=ドゥ=フランス地方のお菓子「サン=トノーレ」は、お菓子屋とパン屋の守護聖人にまつわるお菓子。そして、「マカロン・パリジャン」は、華やかなフランス菓子の代表格。

アルザス地方といえば「クグロフ」。アルザスのパティスリーやブーランジェリーでは、必ずと言っていいほど見かけます。

「ブリオッシュ生地の地方菓子」のコラムでは、フランス各地にあるブリオッシュ生地のお菓子を集め、紹介されています。



お菓子の写真も本当にきれいでおいしそうで、見ているだけで幸せになります。
優しいタッチで描かれたイラストや、途中に入ってくるコラム部分、最後にはフランス地方菓子のレシピなど、すべてが充実した内容になっています。

それにしても、フランスの地方菓子、こんなにたくさんあったのか・・・と、改めてびっくりします。
まだまだ知らない地方菓子もあり、本書で紹介された118のお菓子、すべてを試してみたくなります。
現地に行かないと食べることができないものもあるので、本書の足跡を追うだけでも、けっこうな時間と労力がかかりそうです。
なかなかそこまではできない方が多いと思うので、せめて、この本を何回も読み直し、フランスの地方を回った気分を味わってみてはいかがですか。




フランスの素朴な地方菓子
長く愛されてきたお菓子118のストーリー


 著者:下園昌江・深野ちひろ
 定価:本体1,800円+税
 発行:マイナビ出版