3月11日〜14日の期間、幕張メッセにて開催された「FOODEX JAPAN 2008 第33回国際食品・飲料展」に行ってきました。
“アジア最大級の食品・飲料のトレードショー”である今イベントは、いわば、世界各国の食品・飲料におけるプロの“売り手”とプロの“買い手”の出会いの場。双方がビジネス拡大のチャンスとあって、参加国数65カ国、のべ2412社がひしめき合う会場は、独特の熱気に溢れていました。
まず驚かされるのは、展示フロアの広大さ。その面積、なんと54,000平方メートル。どれくらいかというと、東京ドーム1個がまるごとすっぽり入ってしまうほど。ひとつひとつブースを回っていくと、4日間かかっても、とても全てを把握できそうにありません。でも、そんなこと言っていられない!未知の素材や、生産者との出会い、そして2008年のブームの火種が転がっているかも知れません。気分は、いざジャングルへ潜入する宝探しの探検家。海外出展ゾーンを中心に、パナデリアがフーデックスで出会った世界の“FOOD”をお伝えします。





「アメリカンフード=ジャンクフード」という固定概念はもう古い!と思わせるほど、オーガニック食材などナチュラル志向の食品が目立ったU.S.Aゾーン。ハワイのブースでは、美味しいチョコレートに出会いました。

アメリカ唯一のシングル・オリジン・チョコレート「WARUIA(ワルイア)」


ハワイのチョコレート・・・というと、お土産で定番のマカダミアナッツチョコレートの甘〜い味が浮かんでしまいがちですが、こんな本格的なチョコレートもあったんですね。ハワイ州はアメリカでカカオができる唯一の場所なのだそう。中でも、オアフ島の「ワルイア」は、日照条件や肥沃な火山土など、カカオ栽培に最も適した場所。農薬に頼らずに栽培されたカカオは、丁寧に手摘みし、ゆっくりと発酵・熟成させます。その生産量はわずか年間5000kg程度。この希少価値ゆえ、ハワイのチョコレートは「幻のチョコレート」とも言われているのだそうです。
このオアフ産カカオを使った、マリエカイ・チョコレート社の「WARUIA(ワルイア)」の55%ダークチョコレートは、フルーティーな香りと、野性味のある力強い後味が印象的でした。

ハワイの伝説の花「オヒヤ・レフワ」のハチミツ

また、ハワイは、純度の高い良質なハチミツが採れるのだそうです。マカダミアナッツや、ウィリーライキ(クリスマスベリー)など、ハワイ特有の植物由来のハチミツはどれも個性的な味わい。中でも、愛の伝説の花といわれる「オヒヤ・レフワ」のハチミツは、酵素が強くねっとりと結晶化したもの。濃厚でクリーミーな丸みのある甘みには、どこか懐かしさも感じられます。

バッファローのスカルネ君と一緒に記念写真をとれるサービスも・・・

ブースでは愉快なキャラクター達も大活躍。試食を配ったり、記念撮影をしてくれたりと来場者を愉しませてくれました。





「モンテイ・イブレイ社」のエクストラ・ヴァージン・オリーブオイル。独特な果実味となめらかな喉越しは、ワインのようにそのまま飲んでも美味しい


海外出展ゾーンでも多くのブースを構えていたのはイタリア。チーズに、オリーブオイル、そしてワイン!特にオリーブオイルは、州の数、街の数だけあるといわれており、どこも「自分のオリーブオイルが一番!」とばかりに自慢の味わいを披露していました。中でも味わい深かったのは、「モンテイ・イブレイ」社のオリーブオイル。シチリア島東部のモンテイ・イブレイ地域で生産されたオリーブオイルは、青いトマトのような清々しい果実味が特徴。のびやかな香りの最後に訪れる、喉の奥に残るほのかな渋みと辛みが独特です。
このオリーブオイルは、“D.O.P”といわれる「原産地名称保護制度」の元、生産されています。つまり、「エキストラ・ヴァージン・オリーブオイル」の保護と普及のために、EUから認定された文化遺産のようなもの。伝統的な栽培方法と、手絞りによる抽出は、決して大量生産に向くものではありません。長年の歴史の中で育まれた素晴らしい味わいを、国を挙げて遺していこうというイタリアの姿勢に、本当のグルメの在り方を感じました。

シチリア名産のレモンを使ったオリーブオイルも


シチリアの“Azienda Agritola”からは、レモンを使ったオリーブオイル。オリーブの圧搾と同じ工程で、レモンを絞るので、味わい・香りともそのままオイルに凝縮されていてとても爽やか!その他、白トリュフやハーブ入りのオリーブオイルもあり、そのままお菓子やお料理のエッセンスとしても使えそう。

微炭酸が爽やか!新鮮な味わいのエスプレッソドリンク「Azzurrina」


飲んでびっくり!だったのが、エスプレッソドリンク「Azzurrina」。いわゆる、炭酸入りのアイスコーヒーのような感じで、すっきりとした甘みと喉越しの良さがポイント。コーヒー独特のカフェインの重みがなく、とても爽やかな味わい。コーヒーが苦手な人でも、これなら大丈夫そうです。瓶入りのカジュアルなパッケージで、このままカフェに置いてもオシャレ。コーラのような感覚で、気軽に飲めるエスプレッソ。若者にも受けそうです。

イタリア南部のチーズ“FATTRIA BIO”は、 軽いスモークの酸味が特徴

老舗メーカー「ビステファニー社」のパネットーネは、独特のもっちり感やリッチな味わいが魅力。創立当時のレシピを忠実に守り、新鮮な卵やバター、たっぷりのドライフルーツを使って作られます


バッファローと牛のミルクを半分ずつ配合したチーズや、オーク樽で熟成させたコーヒー風味のバルサミコヴィネガー、本場イタリアの酵母を使ったパネットーネなど、普段口にできないものも。いずれにも感じたのは、「食を愉しもう!」という姿勢。ブースでは、カウンターでワイン談義が咲いていたりと、さすがイタリア!おしゃれです。






スペインの美食といえば、イベリコ豚。中でも、ハモンイベリコは、イタリアのプロシュットディパルマ、中国の金華ハムと共に世界三大ハムのひとつで世界的に有名なハム。あっちを見ても、こっちを見ても、ハモンイベリコの立派な足がブースの上に鎮座していました。肉色は鮮やかなレッド。口の中に入れると、低い融点で油脂がさっと溶け出し、熟成された肉の香りが広がります。

手切りのスライスは、少し厚め。だからこそ、実感できる口どけのよさ。熟成が進むに連れて味、薫り共に深みが増します


また、お菓子に欠かせないスペイン生まれの材料、といえばアーモンド!スペイン国内では100種以上のアーモンドが生産されており、中でも主要品種のマルコナ種は、自然の滋味に富んだアーモンド本来の豊かな風味が自慢。アリカンテ地方のマルコナ産アーモンドを扱う「manolet」のブースでは、現地の方ともスペイン談義が弾み、「是非今度、アリカンテへ!」という話に発展。勢い、パナデリアスペイン視察旅行が実現するかも!?

平べったく丸みのある形のマルコナ種。脂肪分が多く、甘みがあってジューシーなのでお菓子作りに適しています

スペイン談義に花が咲いた「manolet」のブース。こちらの質問にも一生懸命耳を傾けてくれ、とても温かな人柄。ますますスペインに行きたくなってしまいました





中南米の国が並ぶJETRO(日本貿易振興機構)のブースでは、ボリビア原産のブラジルナッツが目をひきました。高さ40〜50メートル、最大2メートルの直径という大きな木。実はココナツの様な形の固い殻に包まれ、重さは2kgもあるのだとか。この木の実から取れる種子がブラジルナッツ。柿の種を大きくしたような形状で、シュガーでコーティングしてスナックにしたり、食べ物以外ではその保湿性を活かしてボディーオイルにするなど幅広い用途で使われます。

高木のさらにてっぺんに生育するブラジルナッツ。スコール前の強風で落下するのを待つという、なんとものんびりとした伐採方法。人間の頭にうっかり直撃することも・・・

1つの実の中に、15個前後の種子が。くるみに似た素朴な味わい





この頃、時計は既に14時を回っていました。胃袋の中は、オーガニックとジャンクが入り乱れ・・・。でも、ここで休んではいられません!再びテンションを上げて、いざ行かん、美食の国フランスへ!

ずらりと並んだフランスのブースは、ワイン・ワイン・ワイン尽くし!端から試飲していったら、間違いなく千鳥足になってしまいそう・・・


たくさんのブースの中で一際輝いていたのが、マルイセイユのお菓子メーカー「fruidoraix」のコンフィズリー&ショコラ。とにかく、パッケージが可愛い!丸い缶に入ったキヌアパフの粒チョコレートや、化粧箱入りの色とりどりのヌガーにうっとり。

粒状のショコラは、日本でも流行した「キャビアチョコレート」に近い感覚。ヌガーは、ブルーベリーやチョコレートなど味のバリエーションもいろいろ


チューブ型のマロンペーストでおなじみの、クレマン・フォジェ社。こちらは、初めてマロングラッセを工業製品化した100年以上の歴史ある会社。製菓用のマロンクリームというと、サバトンに偏りがちですが、クレマン・フォジェ社のマロンクリームは、栗本来の味わいを引き出した、ナチュラルな味わい。クレーム、無糖タイプのピュレ、パウダーなどもあります。

保存料、着色料など添加物を一切使用しないというこだわりぶり。中身だけでなく、パッケージもキュート!



〜出展者セミナーより〜

「サントメ・プリンシペ島 有機カカオ栽培家
クラウディオ・コラーロ氏講演」



「クラウディオ・コラーロ」のショコラは、今年のサロン・デュ・ショコラ東京でも販売していましたが、まだ注目度は低いものでした。実は、サントメ・プリンシペ公国で生産される唯一の有機栽培、しかも原品種カカオによる無添加ショコラ。今回は、栽培から加工まで全てのオーガニックチョコレート作りに関わる、クラウディオ・コラーロ氏が来日。サントメ・プリンシペ島に移住し、「農民」として有機カカオ栽培を担う栽培家の生の声に、専門業者も集まり、活発な意見も交わされて、業界の有機カカオへの関心度の高さが伺えました。

クラウディオ・コラーロ氏


200年近く前、ポルトガル国王がプリンシペ島に移植した後、長らく忘れ去られていたカカオの原種「ファラスティロ・アメロナード種」。これを、コラーロ氏が1997年に発見。すぐさま現地に農園を購入し、未開の地であった雨林を整地することから始まり、長い月日を投じて有機チョコレート作りに尽力しました。コラーロ氏のテーマは、「カカオ本来の香りと味わいをショコラに移しこむこと」。品種ごとに異なる香りや味わいを認知するため、バニラを含む一切の香料を使用せず、ローストに至る全ての工程に最大の配慮を払います。そのチョコレートの特徴は、何より香りの強さ。温度を上げるとカカオ本来の香りが死んでしまうので、低温で練り上げることにあるのだそうです。

会場では4種のショコラを食べ比べしました


「Chocolate Soft(73.5%)」
雑味がなく、豆のようなほっくりと独特な味わい。素朴な味わいの中から、徐々にカカオの爽やかな酸味が立ち昇り、最後に木の皮のような香りが鼻をくすぐります。

「Chocolate80A Sable(80%)」
クリスタルシュガーが弾けると同時に、カカオが薫り立つ。初めにややスモーキーな香りがやってきて、味は後から。砂糖の甘みからカカオの甘みへと移行し、余韻はどこかハーブのような清涼感が残ります。

「Chocolate100%cacao」
カカオを大きめに磨細し、苦みを出さない製法の為、酸味はほとんどなく、ナッツのようなまろやかな味わい。溶けていくと共にフルーティーな香りが広がります。

「Chocolate Ubric」
カカオの果肉の部分から作った蒸留酒を使用。レーズンの甘みと共に、ラム酒のような妖艶な薫りが押し寄せる。どこか大徳寺納豆を思わせるような凝縮された力強い味わい。



とても気さくな人柄のコラーロ氏。ブースでは、「あれも、これも食べて欲しい!」とサンプルを惜しみなくカットしてくれました

自社製品であるコーヒー豆(アラビカ種)を使ったカカオ。コーヒーを先に感じるもの、後に感じるもの、同時に感じるもの・・・と時間差で味わうショコラに感動!




紹介できた商品は、ほんの一部。結局、日本の国内出展ゾーンはほとんど見られませんでした。本当〜に世界は広い!国の数、街の数、家庭の数だけ、人々に愛され育まれた様々な食があるのだということを改めて実感しました。「つなげる、つながる 日本と世界の食文化」というテーマだった今年のFOODEX。ここで生まれた“つながり”が、やがて発展し、新商品になったり、食品業界でブームを起こすかもしれないと思うと、楽しみでなりません。そして同時に、世界のあらゆる生産者、メーカーの方々と出会えるというのも貴重な経験でした。作り手の想いをひとりでも多くの人に届けられるよう、パナデリアも“おいしいもの探し”を、これからも続けていきたいと思います。

(クラウディア・コラーロ氏セミナーより)
「本当においしいものは、少ししかとれない。素晴らしい味わいには日々の汗と涙全てが詰まっている。」