クリストフ・フェルデール
CHRISTOPHE FELDER

1966年 仏アルザス地方、シルメックのパン・菓子職人の家に生まれる
1980年 15歳でストラスブールの「リッツラー・ヴォジェル」に入門。
その後、ルクセンブルグ「オーバーヴァイス」、パリ「ルノートル」、「フォション」、「ギイ・サヴォワ」で修業。
1990年 24歳の若さで「オテル・ド・クリヨン」のシェフ・パティシエとして迎えられる
2004年 フランス文化省より「芸術文化勲章」の騎士章が授与される



シェフ クリストフ・フェルデール氏がつむぎ出す、美しい色、形、そしてアイデアで、いつも新鮮な驚きを与えてくれる、アンリ・シャルパンティエのパリ・コレクション。第18回目となる今回のテーマは「シックな手仕事」です。

前回の春夏コレクションでは、きゅうりやトマトといった素材を取り入れたり、真っ赤なリンゴ飴をモチーフにしたりと、斬新なイメージの強いパリ・コレクションですが、どうやら今回はぐっと落ち着いたクラシックな雰囲気に。

「今日、手仕事は数少ない贅沢となり、職人技がスピード化の名の下に消えつつあります。今回のコレクションでは、ひとつひとつのケーキを丹念に仕上げるという原点に立ち返り、より職人らしい『手縫い的』な仕事をお届けすることにより、ケーキ職人という職業が古くから存在し、社会において重んじられてきたことを思い出させてくれるはずです」

と、クリストフ・フェルデール氏。
利便性や効率が重要視され、走りつづけた今だからこそ、あえて・・・というテーマなのかもしれません。
ということで、職人技にも注目しながら今回のコレクションをご紹介します。






Poudré プードレ
\578


「プードレ」は「おしろいをはたく事、またはそのパフ」という意味。そんな名前のイメージそのままのやさしい質感と、ピンクとオレンジの中間のようなシックな色合いが目をひきます。
上にちょこんと飾られているのはココナッツのマカロン。土台も同じマカロン生地でできています。キャラメルのムースの中に、隠れているのはバナナのコンポート。バナナとキャラメルという組合せは珍しくありませんが、フェルデール氏らしいのがスパイスの使い方。セイロンティーとしょうが、生クリームを合わせたクリームの層を加わえることで、バナナがグッと洗練された味わいに。さらに、ラム酒がフワッと香る生クリームが華やかさを添えてくれます。
そして、注目したいのが、土台のココナッツのマカロンとキャラメルのムースの間に施されたパイピング。“手仕事“ならではの細かい技が光ります。



Classis クラシス
\735


職人が己の技を競い合い、美を追求した王朝時代。そんな装飾美を感じさせるデザインのクラシスは、「クラシック」と「カシス」から名付けられたケーキです。横に配置することでデザイン性を持たせた円筒形のムースはカシス。その中央下に見える白い部分はマロンペーストとピュレを合わせたクリームです。甘酸っぱいカシスと深いコクを持つマロンの組合せは日本でも時々見かけるようになりましたが、フランスではポピュラーなのだそう。台の部分は、チョコレート風味のタルト生地、ビスキュイ・サンファリーヌ、そしてフリュイルージュのガナッシュを重ねたもの。酸味とコク、そしてほろ苦さが凝縮した力強い味わいが楽しめます。



Harmonie アルモニー
\525


見た目のシンプルさからは想像できない、驚きを秘めた作品がこの「アルモニー」。アプリコットのグラサージュの下には、レモンの果汁にゼスト(皮)を加え風味豊かに仕上げたレモンムースが。その下には、深い緑をたたえた抹茶のガナッシュ、そしてデーツ(なつめやし)のコンフィが詰められています。意外な組合せですが、レモンのキリッとした酸味に、抹茶のほろ苦さが加わると、なんとも上品な印象に。さらに、デーツのコクのある甘みが全体を包み込んでくれるよう。3種の素材それぞれの特長が見事に調和した、「アルモニー=調和」という名前が相応しい一品です。
表面に施された、“手仕事”ならではの細く、繊細なチョコレートのラインも必見!



Tourbillon トゥルビヨン
\578


トップから等間隔で描かれた美しい「トゥルビヨン(うずまき)」のラインは、今コレクションの“手仕事”の中でも一番の職人泣かせ。陶器にろくろで絵付けをするように、クルクルとケーキを回しながら1本1本ラインを描いていきます。内側は、オレンジのムースと、チョコレートとキャラメルのムース、そして洋なしのジュレという構成。口に入れると、オレンジの花水がフワッと全体を包みこみます。見た目よりも、軽く爽やかに、チョコレートを楽しめるケーキです。



Camélia カメリア
\578


華やかな色のコポーに彩られた「カメリア=椿」。赤、緑、オレンジに色付けたチョコレートを、花びらのように薄く削り取る作業は、昔から続けられているパティシエの“手仕事”です。
淡いピンク色がかわいらしいいちごのクリームの下には、ココナッツのムースが重ねられ、中央にはいちごのコンポートをサンドしたマカロンが隠されています。甘酸っぱいイチゴと,コクのあるココナッツの組合せのアクセントとなっているのは、アニス風味のガナッシュ。可愛らしいだけでない、大人の味わいになっています。





地養卵のクレームキャラメル
\368


本コレクションラインではありませんが、こちらも“手仕事”な一品です。地養卵をはじめ素材を厳選し、焼き加減にもこだわったプリンは、驚くほどなめらかな口当たり。口に入れた途端に、トロッと崩れるような繊細さはまさに職人技。さらに、カラメルソースもグラニュー糖から丁寧に炊いた力作です。ひっくり返して、しっかりカラメルソースを絡めてからいただくのがお勧め!




● パリ・コレクションについて、シェフの山下誠一郎さんに伺ってみました



・ パリのラボで開発されるコレクションを日本で再現するにあたって、どのような工夫をしているのでしょうか。
→「パリ・コレクションは20名くらいでチームを組んで作っています。パリのラボで完成した作品を日本に持ち込むのですが、実際、これは日本で再現するのは難しいというのものもあります。今回の中では、『プードレ』に使うマカロン生地の水分移行が問題でした。フランスと違って日本は湿気が多いので、そういう場合はパリとコンタクトを取りながら調整していきます」

・今回の“手仕事”。一番大変だったのはどの作業ですか?
→「今回は“手仕事”ということだったので、今まで以上に細かい作業が多かったですね。特に大変だったのは『トゥルビヨン』。チョコレートで渦巻状に模様をつけるのは、かなり集中力が必要になる作業。チームの中でも、担当を決めて美しく仕上げるように心掛けています」

・ 山下さんのお気に入りは、どのケーキ?
「“アルモニー”ですね。見かけは一番地味なんですが、食べるとアレ?という驚きがあります。中のクリームは、レモンカードのようなもので、レモン果汁にゼスト(皮)も加えて、はっきりとした酸味を出すようにしています。酸味と抹茶の組合せに、デーツのどっしりとした甘みが加わり、爽快で奥行きのある味わいが生まれるんですよね。ショウケースに並んでいると目立たないと思いますが、ぜひ食べていただきたいと思っています」



職人が丹精込めて作り出す形と味。
現代の味に、古きよき職人の魂が宿った、“シックな手仕事”を味わってみてはいかがですか?



販売期間 2008年9月1日〜2009年2月28日
販売店舗 全国のアンリ・シャルパンティエにて販売