10月15日・16日・17日の3日間、東京ビックサイトで開催された「食品開発展」へ行ってきました。様々な食品分野の中でも、健康・機能性食品の素材に特化した当展示会。テーマである“健康と安全”は、まさに現代人の食糧事情を反映しています。
様々な食品事故で企業の責任が問われる一方、個人レベルでもアレルギーや成人病などは深刻な問題になっています。あらゆる食品が簡単に手に入る今だからこそ、真の意味の“豊かさ”を問い直す時期に来たのかもしれません。自分の身を守るためにも、現状を把握しつつ食に対する正しい知識を得たいものです。
会場では6つのパビリオンが登場。「美容アンチエイジング素材パビリオン」に、「メタボ対策素材パビリオン」、「オーガニック素材パビリオン」など・・・このテーマだけを見ていても、現代の食や健康問題が浮き彫りになっているようです。私たちの食の未来を担う新素材や注目素材・・・一体、どんなものがあるのでしょう?数多くの企業が提供するブースの中から一部を紹介します!








自社で栽培から加工までを担う、原料商社の株式会社ヴォークストレーディングは、様々なハーブやスパイスを展示。中でも、ウガンダ産のオーガニック素材に注目。ウガンダは、アフリカ大陸を潤すビクトリア湖に面した赤道直下の国。肥沃な土壌と湿潤な気候に恵まれ、有機栽培でカカオやバニラビーンズを栽培しています。徹底管理のもと栽培、収穫、発酵、選別という過程を経て出来上がったウガンダ産バニラは、しっとりとしていて濃密な甘い香りが。バニラの香気成分であるバニリン含有料2.2%と、マダガスカル産と比較してもかなり多く含まれている特徴があるのだそうです。






サクラ印のハチミツで有名な株式会社加藤美蜂園本舗では、耐熱性固形ハチミツ「フィールハニー」を紹介。こちらは、クローバーハチミツのゼリーを耐熱加工し、細かくしてオブラートをかけたもの。今まで、ハチミツを焼き物に入れると、溶け出して炉床にくっついてしまったり、風味が飛んでしまったり・・・とハチミツの食感や風味をダイレクトに感じるのは難しかったのですが、これなら練りこんで焼成しても、食感やハチミツ本来のまろやかな甘さを直に味わうことができ、菓子だけではなく、パンやヨーグルト、シリアルのトッピング用途も広がりそう!昼過ぎにはサンプルは既に品切れ状態で、注目の様子が伺えました。フィールハニー入りのお菓子やパンの商品化・・・メーカー同士で競争になる予感!?






熊本製粉株式会社では、石臼挽き粉など製粉事業の他、食品事業として米粉、胚芽やふすまなどの健康食材も手がけています。機能性素材として紹介されていた「アヤムラサキパウダー」に注目。アヤムラサキは紫イモの一種で、ブルーベリーに含まれるアントシアニンが豊富。眼精疲労改善や抗酸化作用など健康効果がある他、色素や成分は光や熱にも安定性に優れて製菓製パンの原料にもぴったりなのだそう。パウダー状になっているので、麺や飲料など用途はいろいろ。紫色のうどんに紫色のスープにパンにデザート・・・なんて、まさに“目の覚める”ようなミステリアスなメニューができるかも!?






アメリカのブースでは、グレースランド・フルーツ社にてドライのチェリー、クランベリーやブルーベリーなど様々なドライフルーツや、セロリ、人参などのドライベジタブルを紹介。ドライフルーツは日本でも栄養補助食品やお菓子などの材料として数多く使用されており、あっ、これ食べたことある!なんて商品も。ソフトフローズンという特殊技術で生産量をアップさせ、冷凍乳製品や冷凍ベーカリー生地の業者にも多数参入しているそう。試食では、「シニフィアン・シニフィエ」のドライフルーツ入りのパンや「ふじもと」のブルーベリーベーグルなどが出されており、親近感がぐっと増しました。






一際大きなブースで、ずらりと並ぶ“青汁バー”(?)を構えて目立っていたのが、株式会社東洋新薬。なんと、特定保険用食品(トクホ)許可取得件数がダントツの日本一!とあって、トクホの製品ラインナップはかなり豊富。青汁も効果と主成分で細分化され、種類の豊富さにはびっくり。それぞれの症状や目的にあわせてチョイスできるようになっています。






アセロラで有名な「ニチレイ」のブースでは、バイオ事業を担う株式会社ニチレイバイオサイエンスより、アセロラ果汁の新機能を紹介。果汁を使った飲料やデザートを作る際、問題なのは光や加熱によって色や香りが劣化してしまうこと。ここにアセロラ果汁を添加することで、香りの劣化抑制や渇変抑制が期待できるのだそう。たとえばリンゴジュースや緑茶。以前は酸化防止剤としてビタミンCで渇変を抑制していましたが、アセロラでも同じ効果がえられるそう。まだ研究段階だそうですが、アセロラのフィールドが広がりそうです。






日本製粉株式会社で、イチオシの健康素材は「アマニ」。“ニップンアマニシリーズ”としてローストアマニの粒や粉末、アマニ油など用途に合わせて選べる製品を展開。アマニには、食物繊維やポリフェノールの一種であるリグナンが豊富に含まれ、α-リノレン酸に関してはなんとゴマの約100倍。この必須脂肪酸は体内では作ることのできない成分なので、ぜひおいしく摂取したいもの。最近はいくつかのパン屋でも、生地の練りこみやトッピングに使われたり、オリーブオイルのようにアマニ油を生で食べることが薦められています。栄養価だけでなく、香ばしい風味や味わいの良さがあるのは嬉しいところ。やっぱりカラダにいいだけでなく、おいしくなくちゃ!!






フジッコ株式会社・・・といえば「おまめさん」。健康素材として新登場の「蒸し豆パウダー」に注目。蒸し上げた豆を微粉末パウダーに加工することで、食物繊維やイソフラボンなどのまるごとの栄養成分を残しつつ、非加熱でそのまま料理や製菓製パンに利用可能。きんとき、えんどう、白いんげん、黒豆の4種で、たとえば蒸し豆パウダー入りのパウンドに、煮豆を練りこめば、生地と具のダブルで豆の味わいを楽しめると用途はいろいろ。焼き物だけでなく、ゼリーなどにも使えるのでヘルシーなデザート作りにも。おいしいデザートが食べたいけど健康もダイエットも気になる!という女性にも喜ばれそうですね。






カタカナ文字の羅列で無機質な印象が多いブースの中で、異彩を放っていたのが株式会社南山園。お茶屋さんらしく、野点の下で、抹茶とお菓子を戴きながら、石臼挽き茶の実演や製茶について伺いました。愛知県安城市で三河西尾抹茶の生産に取り組み、茶道用抹茶のみならず様々な製品を開発。製菓用の製品としては、特殊システムにて殺菌処理を施し、非加熱の生菓子やデザート用に使える「殺菌・低菌抹茶」や、抹茶と国産クロレラを併用し石臼挽きすることで、焼いても鮮明なグリーンを保つ「抹茶グリーン」など製菓製パンにぴったり。大手企業でもチョコレートやデザートなど「南山園」ブランドで多数商品展開しており、パティスリー・サダハル・アオキでも、エクレールなどの抹茶スイーツに使用されているそうです。






株式会社ユニカフェではコーヒー焙煎会社ならではの商品を紹介。コーヒーの原産地ブラジルや南米、と強い関わりがあることから、エナジーフルーツと呼ばれる「アサイー」やビタミンCが豊富なペルー原産の「カムカム」、ブラジルで採れる天然カフェイン「ガラナレイン」などを紹介。炭酸で割ったガラナレインを試飲すると、コーラやジンジャーエールを思わせるスパイシー且つキャラメルのような甘みが特徴。“気分一新”や“ストレス対処”など若干の覚醒作用があるそうで、なんだかクセになりそう・・・。ブラジルではコーラと並ぶ、国民的なソフトドリンクで、日本でも第二次世界大戦後に一挙に普及したコーラに対抗して生産された歴史が。いまでも北海道で根強い人気があるのだとか・・・ガラナ再ブームなるか?!






大きなリンゴのバルーンが目印のユニテックフーズ株式会社では素材研究と技術力で脂質・糖質などを極力減らしつつ味覚や食感を追及する“おいしいゼロ”に挑戦。中でも興味深かったのが、超低脂肪ココアパウダー「DEFATTED SR」。二酸化炭素の力でココアを脱脂し、風味を損なわずにカロリーも半分近くカット。しかも耐熱性菌数が低くなり、安全性の高さも魅力です。チョコ好きのダイエッターには朗報ですね!!





機能性食品や健康食品・・・というと何となくおいしくなさそうだったり、食べ物よりも薬のようなイメージだったり、カタカナ表記のオンパレードに敷居が高く感じてしまっていたのが正直なところ。しかし、実際に探してみると、意外にも自然の素材を活かしたものや、お菓子やパンにも派生できそうな身近なものがたくさんありました。健康への悩みや願いは、誰もが多かれ少なかれ抱えているもの。“メタボリック”や“抗アレルギー”など、未病段階でも対策しておきたいもの・・・と、どれもこれも気になってしまいます。
 でも、これを食べれば不老長寿!なんて都合のいい食べ物は、残念ながらありません。こういった機能性食品も、あくまでも“補助”的なものだと認識しつつ、普段の食事や生活をまずは見直したいものです。たくさんの企業の取り組みを通して、さまざまな思いがかけめぐった食品開発展でした。



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