シュシュシュー ザザッ、ザザッ、ザザッ・・・
「後ろを支えてて!」「もう少し色を重ねないと」「ここはちょっと削ったほうがいいね!」

色づけは慎重に。シェフたちが相談しながら作業を進めます

ドミニク・グロ シェフ

パトリック・ルメル シェフ


3月2日の取材当日、代官山にあるフランス料理学校「ル・コルドン・ブルー」に伺うと、3人のシェフが作業の真っ只中。白い大きな塊を動かしては、何かを貼ったり塗ったり、そして話しあったり。何やら随分大がかりな作業をしているようですが・・・?
「今日から色づけが始まったんですよ」
とパトリック・ルメル シェフ、ドミニク・グロ シェフ、本田浩通シェフ。東京校で菓子講座を担当するシェフたちが勢揃いしていました。

デザイン画をもとに作成したミニチュアの模型


実は、これ、「スイート・スイーツ ジャパン」に展示されるモニュメントを製作しているところなんです。ちなみに「スイート・スイーツ ジャパン」とは、日本初&日本発の世界大会「世界パティスリー2009」に併設して開催される“お菓子の祭典”。日本や海外で評判のパティスリーや製菓・材料・機械メーカーなどが出展する他、シェフのトークショーやスイーツのデモンストレーションなど、様々なイベントが用意されています。そんな世界規模で繰り広げられるイベント会場のステージに展示されるのが、このモニュメントというから、シェフたちも気合満々。

アジア・オセアニア

ヨーロッパ

アメリカ

3体のミューズのデザイン画。世界パティスリーに参加する世界8ヶ国のチームの地域を示しています


それにしても、いったいどんなモニュメントが飾られるのでしょうか。
「これこれ、3つのミューズ(女神)ですよ」
ル・コルドン・ブルーのシェフ陣と、デザインスタジオ エクスプリム(マニグリエ真矢さんと岡達也さん)のコラボレーションにより考え出されたのが、これら3作品。皆で自由にアイデアを出し合った結果、共通のシンボルとして、愛と平和を象徴するミューズを製作することに決まりました。「アジア・オセアニア」「ヨーロッパ」「アメリカ」を表現したという3体のミューズは、世界中の全ての人々を結び付けてくれる、超越的な力を感じさせます。まずデザインスタジオ エクスプリムがデザイン画をおこし、続けてシェフたちによる作業が始まりました。


ミニチュア模型を参考に、発泡スチロールにデッサンし、
カッターやのこぎりで削ります。
発泡スチロールはボロボロ崩れないような硬めのものを使用



「初めは大きな発泡スチロールの塊がいくつか届いたんですよ。縦2m×横1m×幅50p弱くらいのね」
その四角い塊にデッサンを施してから、切ったり彫ったりして、3種の女神の形に整えたのは、クラフトレーターの方。完成までに数日間を要しました。その後は、いよいよシェフたちの出番。砂糖と卵白を合わせた真っ白なグラスロワイヤルを用意し、ヘラで発泡スチロールの表面に塗ってコーティングしていきます。一見何気ないことに見えますが、実は、これが大変手間のかかる作業。何故なら、
「何度も何度も塗り重ねなければならないんです」
グラスロワイヤルの目的は、表面をつるんと滑らかにすること。そのためには、グラスを塗って、乾かして、それから紙やすりで削って・・・という作業を何度も何度も繰り返さなければいけません。結局、5〜6回塗り重ねて、ようやく綺麗な状態に。なんと、この下地作りのために、25kgもの粉糖が使われたというから驚きです!そして、気がつけばアトリエ内は粉塵だらけ。発泡スチロールやグラスロワイヤルの細かいカスが舞い散る中での作業は想像以上に根気のいる仕事のようです。

カットした後は、紙やすりで滑らかになるまで研磨。色のノリが違います

神戸校に在籍するブルーノ・ルデルフ シェフも、合い間を縫ってかけつけます

本田浩通 シェフ


さて、下地作りが終わったら、今度は色づけ。いよいよ!・・・と思ったら、シェフの手にはセロテープとサランラップとポリ袋が。何が始まるのでしょう?
「まず、マスキングしないとね」
例えば赤色をつける箇所があるとしたら、その縁にセロテープをぴったりと貼りつけ、更に赤色以外の場所をサランラップとポリ袋を使って完全に覆います。これで準備完了。色づけは、エアーブラシを使って好みの色合いに。絵の具を霧状に吹き付けていきますが、ムラなく均一に吹き付けるのは意外と難しいもの。吹き付け面から適度に距離を保ちつつ、一定の間隔で手を動かしていきます。無事にひとつの色付けが終われば、セロテープ、サランラップ、ポリ袋を剥がして、また同様の作業を繰り返す、といった具合。ここでも根気と時間が欠かせません。暫くすると、オレンジ、紫、赤といった鮮やかな色が目に飛び込んできました。どうやら、アジア・オセアニアのミューズのドレスの部分が仕上がってきているようす。それにしても、こんなにも地道で時間のかかる作業だったとは!


色づけ作業では、エアーブラシやコンプレッサーなどの画材が大活躍


「全ての着色が終わったら、最後はマカロンなどでデコレーションしたいですね」
と楽しげに語るシェフ。繊細なラインのミューズに華やかな色が施され、お菓子で飾りつけされたら・・・確かに、想像するだけでも期待が膨らみます。完成した姿を生で見たい人は、是非、スイート・スイーツ ジャパンの会場まで!もちろん、ル・コルドン・ブルーのブースも出展します。シェフによる飴細工の実演も予定されていますのでお楽しみに!

デザイナーのマニグリエ真矢さんも加わり、出来上がりをチェック。
色づけは着々と進んでいるようです




スイート・スイーツ ジャパン
日程 2009年3月13日(金)〜15日(日)/3日間
3月13日(金)10:00-20:00
3月14日(土)10:00-20:00
3月15日(日)10:00-17:30
※最終入場は各日クローズ2時間前となります
会場東京ドームシティプリズムホール
URL www.suitesweets.jp







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