Audace 凛

Audaces fortuna juvat 運命は勇者に味方する

「ピエール・エルメ パリ」の秋冬テーマは「Audace -凛-」。
フランス語で、大胆、勇気凛々、挑戦的な、といった意味をもつ「Audace」は
失敗を恐れず、常に挑戦するピエール・エルメ氏の魅力そのもの・・・。
彼が抱く今コレクションへの想い、そして
一足先に開催された新作発表会の様子をご紹介します!





新作発表会の会場はホテルニューオータニ。
エントランスに至る通路を、これまでの作品が彩る




常に時代の先を行き、誰も想像しえない味覚を、鮮やかにつむぎ出すエルメ氏。今回はいったいどんな魔法を使って私たちを楽しませてくれるのだろう?



ゲストに挨拶をする、ピエール・エルメ氏。ホテルニューオータニのショップでは、日本の第1号店として今もパリのエスプリを発信し続けている



「今年のテーマは “Audace-凛-”。勇気凛々、大胆といった意味の“Audace”は、今日において、もっとも必要とされる美徳のひとつではないでしょうか?そしてまた、『ピエール・エルメ パリ』での私の精神に通じるものでもあります。例えば、失敗を恐れずにあえてリスクをとる、ユーモアと創造性をうまく調和させる、発見をピュアに喜ぶ・・・。私は常に、こういった“Audace”の精神を取り入れながら、風味の組合せやデザイン、そして、ラッピングなどを手がけるようにしているつもりです」


会場には新作アントルメがずらり。
華やかさもエルメスイーツの魅力



過去の作品を思い出してみても、確かに「ピエール・エルメ パリ」の世界は“Audace”の気概に満ちている。



新作発表会場に登場した、ユーモアたっぷりのオブジェ。
日仏のコラボレーションをテーマに、エルメ氏のアイデアで完成したものだそう




さすがのモナリザも、エルメのスイーツだけは我慢できない?!
(手に隠し持っているのは新作のビュッシュ)




「例えば、“ドゥ・ミルフィーユ”もそう。これは、伝統的な“ミルフィーユ”に新たな発想を取り入れ、モダンな味と食感に仕立てたものです」
ご存知の通り、“ドゥ・ミルフィーユ”はキャラメリゼしたフィユタージュ生地にプラリネフィユテを重ねることで、サクサクとした食感を2倍にしたエルメ氏の代表作。

「今回のクリスマスに向けて、この“ドゥ・ミルフィーユ”を特別デザインのビュッシュに仕立て、“Audace”のコレクションに加えることにしました」
ビュッシュ(丸太、薪)とはほど遠い“ドゥ・ミルフィーユ”の姿も、エルメ氏の手にかかればこの通り。そう、薪模様のパートダマンドが周りを囲い、確かにビュッシュ・ドゥ・ノエルになっている。そして、上には、なんとサンタに扮した大きなエルメサンタの姿まで!実はこれ、小さなサンタクロースなどのフィギュアを飾るのを好まないエルメ氏のユーモアなのだとか。そのため、大胆な大きさのサンタとノコギリがユーモアたっぷりに配されているのが面白い。



ビュッシュ・ドゥ・ミルフィーユ 「ピエール・ノエル」 \7,350
(※2009年12月19日〜25日 販売予定)。
サブタイトルは“サンタになったピエール・エルメ!”。
きっと甘〜いプレゼントを運んできてくれるはず!




“伝統×Audace”といえば、もうひとつ楽しみなのが、ガレット・デ・ロワ。ご存知の通り、フィユタージュ生地にアーモンドクリームを入れて焼き上げた、新年を祝うお菓子だ。この、“ガレット・デ・ロワのアパレイユ = アーモンドクリーム”、という関係にもエルメ氏は“Auduce”のメスを入れる。「ガレット・イスパハン」「ガレット・モザイク」「ガレット・キャレマン・ショコラ」など、なんと8種類ものテイストが登場するというのだ。
「日本では、ガレット・デ・ロワを食べる習慣が少ないと聞いています。そこで、日本限定で、月ごとに1種類ずつ違う味を出すことにしました。毎月違う味が登場するので、皆さんで楽しんで食べていただければと思っています」



会場には一足先にガレット・デ・ロワもお目見え。サクサクのフィユタージュに濃厚なプラリネのコクが心地よい“ガレット・アンフィニマン・プラリネ”にうっとり



ところで、ガレット・デ・ロワといえば、楽しみなのがフェーブ。
「『ピエール・エルメ パリ』では、毎年違うデザインのフェーブを作っています。詳しくはまだお話できませんが、今年は真っ黒のフェーブにする予定。ケーキのシルエットにしてね。でも、今年のお楽しみはなんといっても王冠。すごいものになりますよ!」
と、なにやら企み顔のエルメ氏。王冠といえば、金色の厚紙をクルッと巻いたものが定番だが・・・。
「20年前、私がまだフォションにいたときのことですが、マリアンヌ・ゲリーというデザイナーと一緒に王冠のデザインをしたことがあるんです。当時フランスでは、どの店も同じ王冠を使っていて、オリジナルデザインの王冠というのは初めての試みでした。今年は、そのモダン版を作ろうと思っているんですよ」
詳細は秘密ということだが、エルメ氏の表情から察するにかなりの自信作ということは、間違いないようだ。



エモーション マニフィック \840
素材研究のため、昨年は静岡のわさび農家を訪れたというエルメ氏。今回は、わさびの辛さ、ほろ苦さだけでなく、「甘さ」に着目し、イチゴとの組合せに挑戦  ※2009年12月〜販売予定




そして、今季もうひとつの自信作というのが、ボンボン・ド・ショコラ。
「ボンボンには楽しみが詰まって、私も大好きです。そこで今年は25種類の新作を考えました。その一部を来年の2月から発売する予定です。さっそく、召し上がってみませんか?」
ケーキ同様、エルメ氏のボンボンには“楽しさ”と“驚き”が詰まっている。ショコラティエの常識とはまったく異なる、未知なる味覚との出会いがそこにはあるからだ。そんな中でも、エルメ氏入魂の作品が"チュアオ"。これには特別な理由があるという。



2010年2月から販売予定の「ボンボン・ド・ショコラ・ピエトラ」。
アソート3コ入り\1,050〜




「ラジオを聞いていたら、あるパティシエがこう話していたんです。『ショコラには何でも合うけれど、唯一、うまくいかないのがカシスだ』。それを聞いて、ぜひ挑戦してみたいと思ったんです」

カシスには、特有の酸味と渋みがある。だが、カシスに合わせる、ということだけなら、エルメ氏にとっては簡単なことだったのかもしれない。だが、彼が目指したのは、当然、最高の組合せだ。
「カシスに合わせたのは、ベネズエラ・チュアオ島産カカオ豆100%のクーベルチュール「チュアオ」です。これは、私のイメージに合わせるため、ヴァローナ社に特別に作ってもらったもの。このカカオ豆の素晴らしい香りをいかすため、苦みは少し抑え、カカオ分は68%に仕上げています」
さて、カシスとカカオとの相性は・・・?
最初にパッと広がるのは、清涼感のある力強い酸味。中にはカシスの実が忍ばされ、なめらかな口どけと共に、フルーティな香りが華やかに立ちのぼる。カカオとカシスの酸味が見事にシンクロした、優雅ながらインパクトのある味わいは、カシスが相性の悪いフルーツだということを完全に忘れさせてくれる。

「ところで、このガナッシュは、特別な製法で作る“水のガナッシュ”なんです」
・・・水のガナッシュ?
「生クリームを入れない、この“水のガナッシュ” は、口どけが軽く、素材の風味が際立つのが特徴。パッションフルーツのガナッシュなど、クリームの風味が邪魔になる場合に使っている製法なんです」
なめらかでサラッとした口どけ、そして、潔いほどの酸味とキレは、きっとここから生まれるのだろう。ちなみに、バターは入っているので、乳化には特に問題ないそうだ。



12月からはプティガトーでもその味わいを楽しめる。
「チュアオ」¥840




そして、もうひとつ。エルメらしい発想を楽しめるのがウィスキーのボンボン・ド・ショコラ。
「ショコラにウィスキーを合わせると、どうしてもアルコール分が強く出てしまいます。そこで、ウィスキーを煮詰めて完全にアルコール分を飛ばしてしまいました」
使用するのは、シングルカスク10年もののウィスキー。これを、なんと一瓶が200ccになるまでに濃縮するのだそうだ。いったいどんな味なのか・・・。期待を膨らませて口に運ぶ。

まず圧倒されるのは、スモーキーな樽の香り。どこか燻製チーズを思わせる濃厚なコクがあり、そのせいか、カカオの風味もぐっと深みを増している。アルコールを取り去った、ウィスキーそのものの味なのだろうか。いわゆる“ウィスキー×ショコラ”が生み出す味とは似て非なるものだ。



ガナッシュの下にパートダマンドが忍ばせた、
マカロン×ショコラのボンボンにも新作が登場




「それから、これはヌガチンのショコラなんですよ」
そういってエルメ氏が指したのは、ごく薄いショコラ。
「“イスパハン”と“キャレマン・ショコラ”の2種類を用意しています」
“こんな薄いのにイスパハン?”と、思いながら口にすると、カリッと小気味良い音とともに、芳しいバラとライチ、フランボワーズが広がった。この薄いヌガチンのどこに隠されているのかと目を疑ってしまうほど、その風味は力強い。

「それから、コーヒーと一緒に食べるための小さなボンボン・ド・ショコラや、スナック感覚のショコラもあるんですよ」
ショウガやオリーブ、プラリネにローズ・・・。テーブルには、まだまだたくさんのショコラがのっている。



サプライズを秘めた、ヌガチンショコラ。
今回ぜひ試して欲しいショコラのひとつ




ひとつのボンボンを作るため、ショコラティエは驚くほど長い時間を費やし、その繊細な味を育んでいくと耳にしたことがある。だが、“Audace”に導かれ、次から次へと未知なるショコラを創りだしてしまうエルメ氏には、そんな常識はまったく関係ないようだ。





毎年新たなテーマのもと、クリエイティブな活動を続けるエルメ氏。
“Audace”の精神は、枠を飛び越え、さらなる境地を開く鍵・・・。
彼にはもしかしたら、限界というものがないのかもしれない。

エルメ氏いわく、「“Audace-凛-”とは“喜”に通じるもの」。
あなたもぜひ、一歩踏み出して、“喜”なひと時を過ごしてみてはいかがだろうか。





「Audace」ガレット・デ・ロワ


写真はガレット・モザイク
ガレット アンフィニマン プラリネ
ガレット・オ・ザマンド
  各 \3,990


ガレット キャレ プラン
ガレット・ユ
  各 \2,940


そのほか、ガレット・モンテベロ、ガレット・キャレマンショコラなど全9種類が登場予定

※ 2010年1月より順次販売予定



「Audace」2009クリスマス

ビュッシュ チュアオ
  \6,300


ビュッシュ アンフィニマン キャラメル
  \6,300




エモーション ア パルタジェ トリュフ ノワール
  \26,250



ビッシュ ドゥ ミルフィーユ
  \7,350



販売期間:2009年12月19日(土)〜25日(金)
※11月1日(日)予約受付開始



「Audace」2009バレンタインデー


タルト クール イスパハン
  \3,150



クール チュアオ
  \3,360

※ 2010年2月1日(月)〜15日(月)販売予定










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