2009年4月22〜24日の3日間、東京ビックサイトにて「ファベックス2009」が開催されました。
ご存知の方も多いと思いますが、「ファベックス」とは、中食・外食に携わるプロを対象にした食の展示会のこと。本来はプロ向けのイベントですが、 “へー、こんな素材があったんだ!”、“この機械どんなふうに使うんだろう・・・”と、一般の“食”好きにとっても興味津々の内容なのです。さらに、併設イベントとして開催される「デザート・スイーツ&ドリンク展」は、パナデリにとって見逃せないイベント!というのも、スイーツにまつわるブースがずらりと並ぶほか、アシェットデセールコンテストや有名シェフによるセミナーなどが連日開催されるからです。
食のトレンドも予測できるこのイベント。さて、今回はどんな発見があったでしょうか?


会場に到着し、さっそく中へ。今年は、メインとなる「ファベックス2009」のほか、「デザート・スイーツ&ドリンク展」、「ワイン&グルメ ジャパン」、「2009食肉産業展」が同時開催。出展したのは計350社、750ブースと、不景気を感じさせない賑わいを見せていました。


3日間の来場者数は、去年より約5500人多い60,867人。
食に関する関心の高まりを感じます



おいしそうなジェラートに惹かれて立ち寄ったのは、「カルピジャーニ(CARPIGIANI)」のブース。大胆に絞ったジェラートが華やかです。


何味かがすぐにわかるデコレーション。甘さと清涼感が
味わえる、“トマト&バジル”もおいしい!



「ジェラートは、このマシンで攪拌しながら作ります。カルピジャーニの特徴は、庫内を混ぜるスクレーパー部分。側面にぴったりと密着して攪拌されるので、冷えて固まった部分を固まり過ぎないうちに取り込むことができます。これで空気をたっぷり含んだ状態になるんですよ」
ジェラートに欠かせないのが、口溶けのよさ。空気をたっぷり含んだジェラートは、なめらかな食感になるのだそうです。


ジェラートのベース作りは上のマシンで。フルーツなどを加え、下の庫内で冷やしながら練りあげていきます


「ジェラートは温度に敏感なもの。扉の開閉などで温度が上がると、溶けて空気が抜けてしまうんです。そのため、カルピジャーニでは10〜15分だけショックフリーザーに入れ、1〜2mmほどまわりをコーティングすることをおすすめしています」


カフェなどで手軽に使えるこんなマシンも。スムージーのような食感です


冷たいジェラートに続いて、今回が第3回目となる「グラス(氷菓)を使った アシェットデセール・コンテスト」の会場へ。


大会2日目のこの日は、最終組のCチームがデセールを製作中


アシェットデセールとは、お皿の上にデザートを飾る、いわゆる皿盛りデザートのこと。約90名の中から、全国の地区大会を勝ち抜いた12名のパティシエたちが、会場内に設置されたキッチンで作品を作り上げていきます。


司会の平岩理緒さんと、審査員の「ピエール・エルメ」の
リシャール・ルデュ氏



温度変化に敏感なグラスデセールは、溶けてしまったら台無し!すぐ隣に設置された審査員席で、味覚やデザイン、独創性、そしてバランスなどがチェックされていきます。


見事、優勝したのは伊藤 慎二さん(ウェスティンホテル東京)の
「トルネード」(写真右)。準優勝は江森 宏之さん(ベルグの4月)の
「Franc Franc」(写真左)でした。おめでとうございます



会場内を歩いていると・・・。あれ?どこかで見かけたような・・・。
なんと、すっかりお馴染みになった、「ラ・メゾン・デュ・ビスキュイ」を発見!「世界パティスリー」と「SUITE SWEETS JAPAN」が特設コーナーとして出展しており、大会の映像が流れるほか、商品の販売もされていました。ちなみに、一番人気は「ラ・メゾン・デュ・ビスキュイ」で、初日に完売してしまったそうです。


“Sold out”になっているものも。プラリュなども販売されていました


「ご試食いかがですか?」
という声に誘われて振り向くと、そこは今年の11月に開催予定の「フードメッセin 新潟」のブース。
テーブルの上にはオレンジ色の丸いものが・・・。これはいったいなんでしょう?
「これは、柿を干したものなんです。1つの柿から、3枚分しか取れないんですよ」
そう言われてみると、確かに柿。実は新潟は柿の産地としても有名なのだそうです。

「地元の農家の方が作っているもので、人気があるんですよ」
あの干し柿を想像して口にすると、広がったのは柿そのままのフレッシュな風味。熟成された甘みはなく、さっぱりした味わいで、食感はドライマンゴーに似ています。


表参道「新潟館ネスパス」でも人気の商品。
渋柿の渋を抜き、1枚1枚丁寧に干して作っているそうです



これは、今まで捨てていた規格外の柿を利用したもの。手間はかかるそうですが、こんなに美味しいなら、ぜひこれからも続けて欲しいものです。


新潟のヨーグルトメーカー「ヤスダヨーグルト」の
発酵バターを発見。ヨーグルトを思わせる乳風味が
あり、コクがあるのに爽やか!



そろそろ喉が渇いたな・・・と思っていたら、お茶のブースを発見。テレビや雑誌にもよく登場する吉祥寺の「おちゃらか」です。


日本茶なのに、桃や夏みかん、チョコミント?!
さすがはフランス人



「これは焼き芋のお茶。ほら、香りがするでしょう?」
と、驚くほど流暢な日本語でお茶を紹介してくれたのは、「おちゃらか」のステファン・ダントンさん。


93年から日本で活動を続けている、ステファン・ダントンさん


「日本茶もワインのように、目・鼻・口で味わってほしいと思っています」
仏リヨン出身でソムリエの資格を持つ、ステファンさんならではの日本茶使いには、発見がいっぱい。緑茶やほうじ茶がベースながら、日本人にはなかなか思いつかない味の組合せばかりです。


目でも楽しめるようにとヤグルマギクの花びらをブレンド



パッケージメーカー「天満神器」のブース。
今年のブームだというスクエアパッケージは、
カラフルなラインナップで注目を集めていました




健康志向を反映してか糖質・カロリーオフの商品も。
「サンワローラン」の“リブレッド”は、香ばしく焙煎した
小麦皮の微粉末と小麦たんぱくを主成分の
パンdeスマート(鳥越製粉)を使用




横山香料からは、「マロン強化ペースト」が新登場。
和栗とマロンの2種類があり、ほんの少し入れるだけで
ナチュラルな栗テイストに!




キュートな焼菓子は「第1回 ワイン&グルメ ジャパン」に出展中のオーストラリアブースから



「2009食肉産業展」ではこんなマシンに遭遇。・・
ソーセージマシンでしょうか?!




さて、もうひとつパナデリアがファベックスで楽しみにしていたのが、プレゼンテーションステージで開催されるセミナー。2日目のこの日は、料理ジャーナリストの並木麻輝子さんや、オーボンヴュータンの河田勝彦シェフのセミナーが予定されていました。これは、必見です!


国内はもちろん、パリのスイーツ情報にも詳しい並木麻輝子さんが紹介してくれるのは、パリの最新スイーツ。
「今日は時間が短いので、どんどん写真を紹介していきますね!」


並木麻輝子さん。マカロンプリントのTシャツはパリで買ったお気に入りなのだそう


大きなスライドに映し出されたのは、パナデリアも注目のパティスリー「カール・マルレッティ」のルリジューズです。 「最近よく見かけるのが、ルリジューズやエクレールなど、伝統を重んじつつ、進化したケーキ。日本ではかなり前に流行りましたが、シュー生地にクッキー生地を上にかぶせたタイプが増えているんですよ。こんなふうに、進化しているけれどベーシック、というものが多いですね」 ちょっと見えにくいかもしれませんが、「ラデュレ」のエクレールの上にも、ピスタチオ風味のクッキー生地が。味の面では、ピスタチオやバラ、キャラメルサレなど、バリエーションが広がっているようです。



淡いグリーンのクッキー生地をまとった「ラデュレ」のエクレール。
左は、パッションフルーツのクッキー生地をつかった「パン・ド・シュークル」のエクレール



「パリのパティスリーでは、シュー生地やタルトなどベーシックなアイテムがとても多いです。それから、同じくシュー生地を使ったサントノーレも進化しているんですよ」



四角い台が斬新な「カール・マルレッティ」のスミレ味の
サントノーレ。淡いパープルが目を惹きます




「それから、昨年12月にオープンして、今話題の店が『ジャック・ジュナン』。パリではもちろん、フランスでも珍しいほど、広くて、かっこいいお店。ピエール・エルメ氏やジャン=ポール・エヴァン氏も来店したそうです。そして、こういう最先端の店でも、やっぱりエクレールは定番。これは、ツヤがとてもキレイで、甘さ控えめでした」


ツヤツヤのエクレア!日本人にもちょうどいい甘さで、
軽い味わいなのだとか




スライドに次々と登場する、最新スイーツは見ているだけでも本当においしそう!
一見斬新ですが、確かに、サブレやギモーブ、ヌガーなど、基本的にはベーシックなアイテムばかり。形や味をちょっとアレンジするだけで、こんなに現代風になるというのは発見でした。


老舗ブーランジェリー「ポワラーヌ」からはスプーン型サブレ。
かわいいのに、洒落ています



セミナーでしっかりと勉強した後は、自分の目と舌で復習したいもの。心はもうパリへと飛んでいってしまいそうです。



続いてのセミナーには、「オーボンヴュータン」の河田シェフが登場。ケーキング編集長(柴田書店)の猪俣幸子さんとのトークショーです。


ケーキング編集長 猪俣幸子さん(左)と
オーボンヴュータン 河田勝彦シェフ(右)




「『オーボンヴュータン』は店の中に入ると楽しい!最近のパティスリーは、箱や見た目はキレイでも、品揃えに魅力がないところが多いような気がしているんです」 と、猪俣さん。

昨年、「プティ・フールとコンフィズリー―河田勝彦菓子のメモワール」を出版された河田さんですが、確かに、日本はもちろん、フランスにも、ここまでたくさんのプティ・フールとコンフィズリーが揃うお店はないでしょう。プティガトー、焼菓子、ギモーブやプラリーヌ、ヴィエノワズリーにアイスクリーム・・・が並ぶ店内は、まさにお菓子の遊園地のようです。

「プティ・フールは手間がかかるので、毎日店に並べるのは大変です」
大きさは小さくても、手間はそれ以上。種類が多い上、フォンダンやアーモンドプードル、ドライフルーツといったものまで自家製を使っているというから驚きです。 「どうしてここまで手間をかけているんですか?」
猪俣さんが質問すると・・・、
「それが菓子屋の生き方だと思ってますから」
当然のこととばかり、さらりと答える河田さん。
「私が修業した当時のフランスは、プラリネやフォンダンなどを自分の所で作っていました。もちろん作った方が美味しいし、職人の気骨を見せたいという気持もあります」


「プティ・フールとコンフィズリー ―河田勝彦菓子のメモワール」 柴田書店



クラシックなスタイルを守る一方で、常に新しいアイテムを生みだすのも河田さんならでは。
「『オーボンヴュータン』には綿アメも置いてありますよね!どうしてあれを作ろうと思ったんですか?」
「フランスの駄菓子屋さんをイメージしたんです。だったら日本の駄菓子を、うちらしく作ってみようと思い、色や味をつけたんです」
名前こそわた飴(商品名は“コットン キャンディ”)ですが、一部のザラメは自分で作り、さらに乾燥焼きしたフルーツを飾るという河田流。縁日のわた飴とは比べ物にならない、フランスのエスプリと遊び心が詰まっています。

とにかく、好奇心、探究心が旺盛な河田さん。特にコンフィズリーへの想いは強く、専用のアトリエを作ってしまったというのは今や有名な話です。
「実は、フランスで修業した店でも、コンフィズリーだけは外から買っていました。コンフィズリー作りを勉強したのはコンフィズリーの工場で。半年くらいの短い期間でしたが、10年近くいたフランスで一番印象に残っているんです。ドラジェ、ボンボンなどを作るのですが、見るものすべてが新しくて」
香りや色があって楽しめるコンフィズリーは、職人そして表現者としての感性を、強く刺激するアイテムなのかもしれません。


空気をたくさん含ませた飴はザクザクとした食感。
中には、ジャムやパート・ド・フリュイが入っている



「とにかく自分が楽しめないとだめ。私の場合は、全部、“自分が作りたいものは何だろう”、というところから来ているんです。大変申し訳ないけど、お客さんが何を食べたいかなんて関係ないんです(笑)」
と、少年のようないたずらっぽい笑みを浮かべる河田さん。



「表現者として、自分の味を守りつづけたい」



「イキイキと楽しく作っているのが、きっとお菓子に伝わるんでしょうね。惹きつけられるようにその店に来て、毎日通いつづけてしまう・・。それが、本来の店の魅力だと思います」
実際、猪俣さんもその一人だったようです。

「やりたいことは、まだまだたくさんあります!」
65歳になった今も、子供のように純粋な好奇心を忘れない河田さん。最近は、200年前のお菓子を復活させることにも挑戦しているのだとか。
「オーボンヴュータン」の魅力・・・。その秘密が伝わってくるようなセミナーでした。



企業ブースにコンテスト、そしてセミナー・・・。 今回のイベントを通じ、今まで知らなかった、商品や情報、そして知識にふれることができました。
これからも、ますます注目される「食」。来年はどんなものが登場するか、今から楽しみです!








※このページの情報は掲載当時のものです。現時点の情報とは異なる可能性がございますのでご了承ください。