4月25日の「匠 奥村」の奥村直樹シェフを皮切りに始まった今期のフードフランス。日本人初フードフランスのシェフのランチを食べに行ったばかりのパナデリアが、懲りもせず、今度はコート・ダジュールの名店「ラ・レゼルヴ」のお料理をめざして、行ってきました「ブノワ」へ。

フードフランス2008の2回目を飾るのは、「ラ・レゼルヴ」のヨウニ・トルマネン氏。1971年生まれの若手シェフである。フィンランドで生まれたヨウニシェフ、ヘルシンキの調理学校在学中にポール・ボキューズのビデオを見て、フランス行きを決意したという。卒業後、ニースの名門ホテル「ネグレスコ」など南仏のレストランで修業。そして、パリの「59ポワンカレ」やモナコの「ルイ・キャーンズ」とアラン・デュカス氏の店で修業を重ね、2002年にニース市内に自身の店をオープンさせる。2006年には、ミシュランの一ツ星を獲得。そして2007年にニースの海岸沿いにある19世紀の歴史的建物にレストランを移転し、2008年のミシュランガイドで、一ツ星に返り咲いた。これが、若きシェフ、ヨウニ・トルマネンの、そして「ラ・レゼルヴ」の輝ける栄光の道である。

実は今年2月にコート・ダジュールを、そしてニースも訪ねたばかりのパナデリア。どうして、「ラ・レゼルヴ」に行かなかったのかと、悔やむばかり。でも、本当は予約の電話は入れたのです。でも、満席でとれなかったのが、現実。そんなシェフの料理を、東京で楽しめるとあっては、絶対に行くしかない! では、2008年5月26日、青山の「ブノワ」で展開されたラ・レゼルヴのランチをご紹介しましょう。





DÉJEUNER




アミューズ
まずは、お迎えのシャンパンがサービスされます。そして、シャンパンのおつまみ(あー、日本語って、どうしておつまみなんて、変な言い方があるんだろう)として、出されたのが、この小さなピザのようなアミューズ。トマトとバジルとチーズが、どこかイタリアのような感じ。そうそう、ニースと言えば、もうすぐそこはイタリア。地中海を思わせるこんな料理が続きそうな予感が・・・。




グリンピースのヴルーテ 旬野菜とコロナータ産ラードのトースト
涼しげなガラスの器でサーヴされたのが、このグリンピースのヴルーテ。緑のきれいな色の中に、オリーヴのピュレがそっと塩味を加えます。そしてピリッとしたオリーヴオイルが、爽やかさをプラス。その上、ガラスの器から暖かいヴルーテが出てくるのは、ちょっとうれしい。そしてガラスの器のふたの部分には、カリッとした薄くスライスしたバゲットの上に、野菜とラードが乗っている。ラード?って思うけど、これがちょうどいいコクをプラスしてくれて、楽しい仕上げとなっている。コロナータはトスカーナ州にある村の名前。これにもどこかイタリアの風が・・・。




フレッシュアンチョビのデリス ルッコラのサラダとソッカ
カリッと焼かれたバゲットの上に、トマトとマリネされた鰯がのり、その上にニースの名物料理、ソッカというひよこ豆のガレットがのっている。ソッカのカリッとした食感、中に隠れている細いネギのピリッとした辛さ、ルッコラのゴマのようなコク、オリーヴオイルの味わいなど、絶妙に計算された味わいが楽しい。




アーティチョークのリゾット 仔牛のジュ
ニースのオリーヴオイル風味
アルデンテに仕上がったリゾットの中には、細かくカットされたイタリア産のアーティチョークが。そして上にはこんがりと火が通ったアーティチョークが飾られていまる。ほろ苦さのあるアーティチョークは、ほっこりとした旨みすら感じさせます。フォンドボーで贅沢に味付けられたリゾットは、ニースのオリーヴオイルで爽やかさをプラス、意外とサラッと食べてしまいます。トップに飾られた青ネギの緑が美しい。




6時間かけた仔羊 ピッツァヨーロ仕立て
6時間煮込んでとろとろになった仔羊は、下に敷かれた米ナスの油、ちょっと重めに作られたソースと相まって、唇の周りがピタピタになるほど、ジューシーな感じ。最後に来て、ガツンとやられた感のある力強いメインディッシュだ。周りに散らされた小さな緑の豆の彩と食感が、仔羊の重厚さに華を添えます。つけあわせには、こちらもひよこ豆をつぶして揚げた、まるでフライドポテト(こんな例えで、すみません)の豆版のような感じ。じんわりとしたコクがあります。




パンナコッタヴァニラ風味 イチゴとルバーブのマリネ
アマレッティのクルスティアン
ヴァニラをしっかりと効かせたパンナコッタは、甘さ控えめ。イチゴはフレッシュなものと、酸味を残してマリネされたものの2種類。下に隠れたルバーブのマリネも、かなりきりっとした酸味が活かされ、デセール=甘いという感覚で食べると、ちょっとびっくり。アマレット風味のビスコッティが、かりかりっとしています。




コーヒー又は紅茶 ミニャルディーズ
いかにもフランスらしい鮮やかなピンク、ピスタチオのグリーン、そしてショコラ色。こんなミニャルディーズが並べられたら、おなかがいっぱいでも、つい手が出てしまいます。わりと地中海色が強かったこのコースも、最後はしっかりとパリに戻ってきたかな。




最後におまけ
パナデリア的に忘れてはいけないのが、パン。コースの間ずっと、お料理を支えてきた大事な脇役が、この全粒粉のバゲットとローズマリーのフォカッチャ。特にバゲットが美味しくて、カリッとしたクラストにサクミのあるクラム。ソースの染み渡り感が絶妙でした。





初めて来日したというヨウニシェフ。ニースのお店では、地元ニースの野菜など、すべての素材が地元産のものだという。そこで、今回、日本の素材を使ってみて、素材の違いが料理にどう影響したかを聞いてみた。だが、シェフの答えは、「特に問題はなく、ニースの自分の店と同じレシピで作れた」とのこと。素材にはこだわっているが、最後はやはり自分の作る味が、ラ・レゼルヴの味だという自信が伝わってくる返事だ。イタリアンでもありフレンチでもあるヨウニシェフの料理。それは、シェフの言うように、まさしく「ニースの味であり、ヨウニ・トルマネンの味」だった。



笑顔がまぶしいヨウニシェフ。自分の味に迷いがない力強さを感じさせる



最後に日本の素材で気になるものを伺ってみた。興味のある素材は、ワサビの葉と柚子やシソの葉、でも香りが強いので、自分の店では使わないという。日本の素材は、クオリティが高いと褒めてもらった。その素材を料理に活かすのは、やはり日本のシェフの役目かもしれない。ヨウニシェフがニースの素材を活かすように、日本のシェフに日本の素材を活かしてもらいたい。そこには大きな意味での地産地消の精神が生きているような気がする。2008年5月26日のランチタイムは、そんなことを感じさせてもらう料理との出会いだった。次はぜひ、コート・ダジュールの紺碧の海を見ながら、ニースの味を堪能しに「ラ・レゼルヴ」のドアを開けてみたいと思う。



目の前に広がる地中海が、料理をさらに極上のものにしてくれる




La Réserve-JOUNI atelier du goût 
住所 RdC du Palais de la Réserve-60. bd Franck Pilatte 06300 Nice
TEL+33(0)4 97 08 29 98
URLhttp://www.lareservedenice.com/



次回、フードフランス第3回は、7/3(木)〜7/8(火)にサヴォワの2つ星「ラ・ブイット」より、ルネ&マキシム・メイユールシェフ親子を迎えて開催されます。詳細はこちらから。

http://www.chateauxhotels.jp/event/