フランスを旅したことがあるお菓子好きなら、きっと1度は思うはず。“ケーキもパンもあってトレトゥール(惣菜)も揃っている、フランス的なパティスリーが日本にもあればなあ”と。そんな人は、ここに向かわないわけにはいきません。かの高木康政シェフが提案するスウィーツブティック&サロン「La maison de TAKAGI」。AOYAMA M’s TOWER内に誕生したばかりの話題店です。青山という響きだけでも何やら特別感が漂いますが、とにかく、レセプションの華やかさといったらすごかった!早速、そのようすをお伝えしましょう。

大通りから1歩入れば、静かなでひっそりとした空間が。まるでパリのパサージュそのものの雰囲気


でも、ちょっとその前に。そもそもAOYAMA M’s TOWERって何?と思っている人も多いのでは?実はここ、4月11日に、外苑前駅近くにオープンしたランドマークタワー。25階建てのタワーは、滞在型ホテル、家具付き賃貸住宅、ショップ&レストランといった3つの空間で構成されています。いかにも高級そうなホテルや賃貸住宅は雲の上の存在だけれど、ショップ&レストランなら気軽に利用できそうですよね。その名も「パサージュ・アオヤマ」なる南欧風の街並みの中に「ゴディバ」や「梅の花」など13の店舗がずらり。青山通りから外苑西通りに抜ける石畳の小道を入っていくと、その一画に「La maison de TAKAGI」が現れます。

野球にゴルフにとアクティブな高木さん。最近の趣味は釣りなのだとか


「これまでは“フランス菓子”ということでやってきましたが、この店では、あえてフランス国旗を掲げていないんです。というのも、フランス、ベルギー、ルクセンブルク、スペイン、ドイツなど、僕が修業を重ねてきた国で見てきたものや食べてきたものなどを取り入れていきたいなと。いいとこどりしたいですね。これまでの集大成・・・といったら早すぎるかもしれないけれど、そういう意味も込めて“メゾン”と名づけました」
と、高木さん。店に入るとまず目に飛び込んでくるのが、「LE PATISSIER TAKAGI」の見目麗しいケーキや「LE CHOCOLATIER TAKAGI」の艶々のショコラたち。その奥のショーケースにはパンやデリが初登場。バゲットやヴィエノワズリの他、クロワッサン生地に海老・アボガド・自家製タルタルを挟んだ「シュリンプ・クロワッサン」や、ブリオッシュ生地を使ったピッツア、パイ生地に具材をのせて焼き上げたブーシェなど、パティシエならではのリッチな組合せが魅力。気軽なランチに、ちょっとしたおやつにと活躍してくれそうです。


入り口近くでは、たくさんのケーキやパン、ショコラ、トレトゥールがお出迎え。どれも魅力的だから、なかなか決められない!



ケーキやショコラ、パンのショーケースを眺めつつ奥に進むと、その先には広々としたサロンスペースが。とてもパティスリーとは思えないほど贅沢な空間で、ゆったりとした雰囲気。大人らしいシックさを保ちつつ、南仏風の温かさをプラスしたインテリアが素敵です。ここが、昼はワンランク上のカフェとして、夜は大人が寛げるバルとして使われるというから期待が高まります。とはいえ、この日は、広〜いスペースも埋め尽くされてしまうほどの人の山!しかも、錚々たる顔ぶれの方々がずらり。スリジェの原シェフと和泉シェフ、マルメゾンの大山シェフ、コルディアルの小針シェフ、キャロリーヌの中川シェフ、アニバーサリーの本橋シェフ、ラ・ヴィ・ドゥースの堀江シェフ、プラネッツの山本シェフ、アテスウェイの川村シェフ、リュー・ド・パッシーの長島シェフ、ロートンヌの神田シェフ、マンダリンオリエンタル東京の五十嵐シェフ、フランス菓子・料理研究家の大森由紀子さん・・・パナデリアがざっと見渡しただけでもこれだけの豪華メンバーが!さすがは業界をリードする高木さんの貫禄です。


そこかしこにシェフの方々が!(左上:マルメゾンの大山シェフ 右上:アニバーサリーの橋本シェフ 左下:ラ・ヴィ・ドゥースの堀江シェフ 下中:マンダリンオリエンタル東京の五十嵐シェフ 右下:リュー・ド・パッシーの長島シェフ)


「ようやく念願の青山に店を出すことができました。これまでの店と違うのは、トレトゥールを揃えたこと。実は僕、今、釣りに凝っていまして。今日は、鯵、鯛、平目のカルパッチョを用意しました。ちなみに、これは自分で釣った魚ではありません(笑)。残念ながら行く時間がなかったので、行きつけの岬の船宿にお願いして取り寄せました。でも、先ほどさばいたばかりですからおいしいですよ。是非食べてみてください」


下ろし立ての魚のカルパッチョにフルーツカクテルにブリオッシュのベニエに・・・。パーティーフーズも華やかです



トレトゥールを並べたのは、フランスの多くの店がそうであるように、本当の意味でパティスリーといえる店を作りたかったからなのだか。下ろし立てのお魚は、プリプリとした弾力があって、鮮度もバツグン!さすがにこの品はレセプション当日だけのもの?でも、実際のお店でも、トレトゥールは充実しているから大丈夫。テイクアウト用も、それから夜のバルタイムならではのピンチョスなども。ワインを片手に気の利いたおつまみを少し・・・なんて、気軽で素敵な夜を過ごせそう。

カプリスプランタン。フロマージュブランを使ったイチゴのクリームとショコラに添えたのは、バニラ、ショコラのアイスとわさびのソルベ


パナデリア読者に是非お薦めしたいのは、アシェット(皿盛り)デセール。有機イチゴとリュバーブにショコラを組合わせた「カプリスプランタン」や、数種のベリーを使ったミルフィーユ「プランタニエ」なんて、聞いているだけでもため息が出てきませんか?まるで絵画のように芸術的な盛り付けは、高木さんの真骨頂といえるでしょう。そんな高木さんの片腕となるべく、「La maison de TAKAGI」のシェフとして活躍するのは阿部 守さん。

プランタニエ。出来立てミルフィーユのサクサク感を楽しみたいひと皿


「温かいものや冷たいものなど、デセールならではのできたて感をアピールできたらなと思っています。そして何より、お客さまとの会話を楽しみながらやっていきたいですね」と挨拶しながらも、どこか照れくさそうなようす。そんな阿部シェフに、
「阿部くん、照れ屋なもので。これからどんどん人前に出て、話してもらわないと(笑)」
とすかさず突っ込みを入れる高木さん。もちろん、それは阿部シェフへの信頼があってのこと。レ・サヴールのオープンニングスタッフでもあった阿部シェフは、高木さんいわく、“とにかく忙しくて一緒に地獄を味わった人間(笑)”という深い仲。しかも、1999年の「ガストロノミック・アルパジョン」コンクールの飴細工部門で優勝経験もあるというから、実力もお墨付き。
「今までの集大成ということなので、頑張らないと。レ・サヴール時代に高木シェフから学んだことを、ここで形にしていきたいですね」
と意欲的です。


春らしい色合いが目を惹くシシリアン。阿部シェフが仕上げます


その阿部シェフ、デモンストレーションでは、アシェットデセール「シシリアン」の仕上げを披露してくれました。キルシュ風味のピスタチオのムースが主役のひと皿は、まるで花が咲き誇っているかのような華やかさ。周囲には小さくカットされた苺やバラ、フランボワーズなどが散りばめられています。更に、飾り用の飴細工にはダマスクローズを散らしてエレガントに。本当に食べてしまうのがもったいないほど綺麗!このダマスクローズは、以前、高木さんがブルガリアを旅した時に出会った素材。香りの良さに魅力を感じて、スイーツに合わせたいと考えたとのこと。「ダマスクローズ」といったケーキやハーブティーにも使われていますので試してみては?

ダマスクローズ。世界最高級と言われるダマスクローズをたっぷり使用した、エレガントな一品


他にも、素材に対する高木さんの探究心はかなりのもの。行く先々で気になるものを見つけてきては、素材からコーディネートしています。例えば、メープルシロップをかけていただく「メープルプリン」や、メープルシュガーを使った「メープルマドレーヌ」は有名ですが、最近気になる素材といえば、
「ベイリーズですね。以前、このリキュールを使ったレセプションをやったことがありまして。ベイリーズを使ったデセールやショコラ、焼き菓子を提案しました。クリームが入っているからとても飲みやすいし、菓子とも合わせやすくて面白い素材だなと思っています」

大きなレリーフは、なんとマドレーヌ150個分!


ここ「La maison de TAKAGI」では、「ショコラ ドゥ ベイリーズ」というケーキで楽しむことが可能。プラリネとショコラの2種類のムースをグラサージュショコラでコーティングした艶やかな一品。そこに香り付けとして、ベイリーズを少し。
「昔はお酒を大量に使えばおいしくできるからという感じでしたが、今は違いますね。素材の香りを活かすために、お酒を使う。そんなお酒の使い方がこれからはポイントになってくるのかなと」
積極的に使いつつも量は控えめに。さりげなく効果的にお酒を使っています。これらのスイーツ類を、昼は珈琲や紅茶と共に、夜はワインなどと合わせてみるのも良さそうです。

壁かけランプまでマドレーヌ!


さて、あれこれ紹介してきましたが、なんといっても高木さんに欠かせないお菓子といえば・・・?そう、マドレーヌ!幼少時代に初めて作ったお菓子、そして人を幸せにする喜びを教えてくれたのもこのお菓子なのです。そんなマドレーヌに敬意を表した高木さんはインテリアにもひと工夫。修道院をイメージした店内で、アーチ状の通路を進んでいったその先には・・・?なんと、祭壇となる壁際に、大きな大きなマドレーヌ型のレリーフが!スポットライトに照らされた堂々たる姿は圧巻です。更に、小さなランプやアイアンの装飾部分にもマドレーヌのモチーフを発見。そこには、“お菓子が人を幸せにする”という原点を忘れずにとの想いが込められているに違いありません。

天井部分にもマドレーヌ!


今後充実させていきたいのは、ケータリング。ヨーロッパではホームパーティーが盛んで、トレトゥールを配達するのは菓子屋の仕事なんです。そんなスタイルを、徐々に広めていけたら嬉しいですね」
パティスリーから始まって、ショコラティエにグラシエにサロンに・・・次々と展開して行く“タカギスタイル”に、ますます目が離せなくなりそうです。(2008.04)




La maison de TAKAGI
住所 東京都港区南青山2-27-18
TEL03-6273-1802
営業時間11:00〜23:00
アクセス東京メトロ銀座線外苑前駅より徒歩2分
東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅より徒歩8分




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