国産バター・生クリームを使った
プロ向け洋菓子・パン講習会

神奈川会場: 潟激sドール 寒川 正史氏

国産バター・生クリームを使用したプロ向けの洋菓子の講習会が、10月18日に横浜の国際フード製菓専門学校で、潟激sドールの寒川正史氏を迎えて行われました。朝8:30受付開始にもかかわらず、受付時間直後にはすでに最前列の席に空きは見られませんでした。あわてて受付を済ませ、どうにか前から3列目の空席をゲットしたパナデリア。今回の講習会は抽選だったのですが、2倍の競争率、参加者も製菓関連の方が多かったようで、講習会が始まる前からかなりの熱気がありました。

講習会の会場となった国際フード製菓専門学校は、昨年の9月に出来たばかりの新しい学校で、最新式の設備がとても充実しています。業界に役立つ人造りに力をいれ、そして着実に成果をあげている注目の学校の一つだと思います。

さて、講習会の方ですが、この講習会は9:00〜16:30まで、中40分の昼食の休憩をはさんで行われました。内容は、寒川シェフのお菓子6品の講習と、アイスクリーム協会で元役員をされていた西川氏によるバター・生クリームの講義です。

西川氏はバターや生クリームの規格や種類の話、製造工程などについて資料を元に話をしてくれました。中でも興味深かった話は、フランスのブルターニュ地方のバターについて。英仏海峡に面している牧草地帯は、潮風などの影響で牧草にやはり塩気が含まれていて、それを食べる牛やヤギなどのミルクにも塩気があり、それを使って作るバターも塩気のあるものが生まれるそうです。そんな話を交えながらの西川氏の説明は、とても勉強になりました。

そして、その後は、寒川正史シェフの実技講習です。寒川氏は、フランスで洋菓子を、スイスでチョコレート、ミラノでアイスクリームを学んだ経験を生かし、現在は東京都内に2店舗展開している「レピドール」の商品開発・製造部長をされているシェフであり、そして日本洋菓子協会連合会の公認技術指導員でもあります。

そんな寒川シェフが提案されたお菓子6品は、どれも手が込んだ品々。そして、そのお菓子の作り方の技術だけでなく、そのお菓子を作る際の泡立て方、素材の扱い方、そして総合的に技術を科学しながらの講習はとても奥深く、常に頭をフル回転させないと理解できない、さすが「プロ向け」と掲示されているだけはある…と思わせる密度の濃いものでした。

シェフの高レベルのお話と技術は、普段、製菓製造に従事していないパナデリアにとっては、高度すぎて、息つく暇もないという感じ。又、参加者たちも疑問があると、その都度、質問をするので、これまたパナデリアにとっては、ただただ感心するのみ・・という感じでした。(いやぁー、なさけない)

 「ビスキュイを作る際に軽い生地にしたいのなら卵白だけ泡だてるのではなく、別立てで両方泡立てたほうが、軽いものになるのではないでしょうか?」という質問に対し、「卵黄と卵白を別に泡立てた生地が軽いというのは、例えばショートケーキのようにビスキュイとして食べて楽しむ生地のことを言います。今回のお菓子で、卵白だけ泡立てて、それに泡立てない卵黄を合わせるのは、ムースとジェノワーズで作られているお菓子の軽さを出すためです。全体の味わいを楽しむ時にスポンジが主張しすぎず、全体になじんだ軽さを必要とする時は、私はこの泡立ての方法を選んでいます。 決して、卵白と卵黄の別立てのスポンジが軽くない、と言っているわけではないんです。それぞれのお菓子の味わいに応じたスポンジを焼かなくてはいけませんよね。」

また、ある人の、「生クリームを使用する際に、フレッシュの生と植物性を混ぜたほうが、ショーケースの中で、絞りなどがとてもきれいに見えるので、そちらの方がいいように思うのですが、シェフはどうお考えでしょうか。」との質問には、「私は、基本的にはフレッシュが美味しいと思います。ショーケースの美しさを気にするのは日本の洋菓子店くらいですね。ヨーロッパではボソッとした生クリームになってしまっても、ショーケースには並ぶし、そうなることがわかっていてもやはりフレッシュの生を使います。美味しさで言えはフレッシュの生がいいように思っています。」などと丁寧に答えてくれます。興味深いヨーロッパでの修業の話を交えながらの講習会は、技術だけでなく、向こうの文化を知ることができたりと、とても充実していました。

 寒川シェフ曰く、「日頃からお菓子作りには、常にアンテナを張って生活しています。」とのこと。材料ひとつとっても常識にこだわらないシェフの柔軟な考えが伝わってくるようです、たとえば、アンジェというお菓子の表面をキャラメリゼする際に使用したのが、ガスバーナーにつけられた「ワクサー」という、スキー板のワックスをのばす際に使用する四角い金属を少し改良したもの。「コテでキャラメリゼするとすごく煙が出るでしょ、この時にこのガスバーナー式のコテのようなものを使用すると、出た煙をバーナーの火が燃やしてくれるんです。煙は水分と砂糖が燃えた燃えカスです。その出た水分やカスをバーナーの火が燃やしてくれて、煙が出ても消えるんです。ほらね。」なんて、科学的な話を交えながら、実際に見せてくれたのですが、これがまた本当に上に強力な換気扇が付いているかのように煙は全くなし。そんな普段のアイデアを伝授してくれたりと、大変勉強になることばかり…

 他にもシェフが講習会中に特に気を使っていたのが、卵を使用した場合の菌に対する温度による処理の仕方。特にカスタードをムースに使って生菓子で食べる際に気を使っていました。

とにかくたくさんのことを教えていただき、パナデリアの少ない脳みそで噛み砕くには、もう限界だ!…というくらいでした。


アンジェ

レ・ザグリュム・ローズ

フロマージュ・レジェ・オランジュ

ムース・キャラメル・ポワール

ケイク・パンプルムース

フィナンシェ・オ・ショコラ

そうそう、忘れてならないのが今回、教えていただいた6品。先ほども少しふれた「アンジェ」、そして「レ・ザグリュム・ローズ」「フロマージュ・レジェ・オランジュ」「ムース・キャラメル・ポワール」「ケイク・パンプルムース」「フィナンシェ・オ・ショコラ」。アンジェというお菓子はシェフがフランスに旅した際に実際に現地で食べたお菓子の味にアレンジを加え、現在レピドールでは「りんごとフランボワーズの結婚」という意味のフランス語の名前で売られています。興味のある方は、是非レピドールにお出かけください。実はまだパナデリアもレピドールに伺ったことがないので、今度は是非お店の方にも伺ってみたいと思います。

 今回はとても充実した講習会に参加させていただき、大変勉強になりました。寒川シェフ、西川氏、そして日本乳業協会の皆様、どうもありがとうございました。