レストランでよく目にするカトラリー、「クリストフル」。お菓子とパンにはそれほど縁が無かったものだが、昨年行われた「ピエールエルメ」の秋冬レセプションの際に紹介された、ケーキを食べるためだけに作られたエルメバージョンのフォーク。これは菓子愛好家にとっては、とても印象的な展開であり、羨望の的となるものであった。その後、フランスの伝統菓子や料理を広く紹介されている大森由紀子先生にレセプションなどでお会いする機会を得て、実は昨年からクリストフル親善大使なるお役目を担っていると伺い、にわかにパナデリアでも「クリストフル」の名前がぐっと身近に感じられるようになった。また、以前から菓子やパンの楽しみ方の一環として、コンサートやちょっと優雅な講習会などをめざしてきたパナデリアとしては、カトラリーやテーブルセッティングまでこだわるという姿に、理想的なものを感じることもあり、これは一度、あらためて「クリストフル」とはどのような会社で、どのような歴史があるのか、そしてそこで作られる銀製品とはどんなものなのかを、取材させていただくことにした。


「クリストフル」とは?

1830年、宝石商であったシャルル・クリストフルが義兄のジョゼフ・アルベール・ブイエと共に創業し、その後170年以上もの間、常に高品質のシルバーウェアを世界に紹介し続けている。その歴史ある顧客リストは類をみないほどの豪華な顔ぶれといえるだろう。クリストフルが誕生した背景には、フランスの衣食住に対する文化がある。見事にセッティングされたテーブルには、美しく盛り付けられた美味しい料理、楽しい会話、きれいに並んだカトラリー、まさにこれがフランス文化といっても過言ではない。フランス国内の主たる機関はもちろんのこと、パリのジョルジュサンク等に代表される有名なホテル、一流レストランでもクリストフル製品は愛用されている。
クリストフルが日本に紹介されたのは約30年前。高級レストランやホテルなどで少しづつ浸透していったようだ。現在では、一部のレストランで使われ始め、活躍されている若いシェフの中には、いつかは「クリストフル」で揃えたいという人も多いという。
◇公式ウェブサイトはこちら



「クリストフル」は、我がパナデリアの事務所より徒歩一分という近さ。1階にはギャラリーがあり、銀製品やガラス製品がとてもエレガントに陳列されている。そしてその2階にあるパビリオンにて「クリストフル ジャポン」のCEOであるイブ アルマニー氏にお話を伺った。






◇クリストフルとの出会いは

フランスでは日常的に食卓で、スプーン、フォーク、ナイフは使いますが、クリストフル社のカトラリーは、レストランやホテルなどでよく見ていました。今のクリストフル社の社長である、フランソワ ボーフメ氏とは旧知であり、私が古くから日本のフランス大使館の仕事で、チーズやワインなどフランスの農業製品の普及活動をしていたことや、「KENZO」の仕事をしていた関係もあって、日本での「クリストフル」普及を頼まれました。


◇日本の市場について

フランス、日本とも同じように、慎重にこのブランドを確立していきたいと考えています。両国の接点を見つけ、お互いの食文化の中でどのようにクリストフルが使われていくか探りたいと思っています。私が初めて日本に来たのは1975年、そのころから、日本の伝統的な食文化や伝統に触れる機会に恵まれ、異なる文化でありながら、共通するところを肌で感じてきました。箸の文化は特徴的で、クリストフルはこれにも積極的にとり組みを始めており、現在何種類かの箸のシリーズがあります。個人的には、アジアの国の料理を食べる時は箸を使ったほうが美味しいと感じます。




◇プロモーションについて

日本のお祝い事や季節に応じたイベント、記念日にぶつけて様々なプロモーションを展開していきたいと考えています。フランスのものをそのまま強要するのではなく、両国のカルチャーの融合点を見出していくスタイルをとりたいと思います。前回、ピエールエルメ氏とのコラボレーションでは、フォークを出しました。あのフォークをご覧いただければわかりますが、フォークの歯が4本あり、両側はケーキをカットするのに都合のよい形状になっています。また、曲がり具合がのっぺりしていて、お菓子をすくって食べるのに適しています。もちろんエレガントなデザインも兼ね備えております。



今回は「みどりの日」にちなんで、地球環境をテーマに割り箸の使用を控え、「クリストフル」の箸をマイ箸として使うことを提案しています。



◇今後の展開

日本の文化の発展という意味でも、「アート ドゥ ラ ターブル」テーブルの芸術ということを紹介していきたいと思います。常にセンスを磨き、普段からの家庭の食を含めて、生活の中に存在する芸術、アートな部分を全体的に捉えられるよう様々な角度から、アプローチしていきたいと考えています。すぐにナイフ、フォークを使う場面が広がるとは思えませんが、私が初めて日本に来た時、フランスのチーズを紹介することがミッションでした。これには、まさに10年かかりました。当時はカマンベールなどフレッシュチーズが日本で食べられるとは思ってもみませんでしたが、ゆっくりと時間をかけて教育していくことから始めました。そして今、私は「クリストフル」に関しても、同様の想いを抱いております。一歩一歩普及に努めていきたいと思います。




アルマニー氏は常にダンディないでたちで、KENZOのスーツに蝶ネクタイというスタイルはどこにいても目をひく。生活そのものに、フランスが香る「カッコイイ」紳士という感じだ。

クリストフル社をはじめフランスの食に関連する様々な文化は、宮廷から始まりしっかりと一般庶民の生活に根付いている。日本にもある茶の湯に代表される文化と比較しながら、もう一度、自分の周りを見直してみたいと思う。皆さんも、簡単だから便利だからと、お手軽な道に逃げていませんか。いつもケーキやパンを食べる時、紙皿とプラスチックのフォークは禁物。たまには優雅に、素敵なカトラリーに囲まれてゆっくりとティータイムを過ごしてみませんか。




アルマニー氏と大森由紀子先生


大森由紀子先生が、みどりの日にちなんで、お箸でフレンチを食べる会というのを企画しました。その名も「アルザスをお箸で食べよう」。大森先生のアルザスのお話を伺いながら、その地方の料理やお菓子を楽しむ会で、お箸はもちろんクリストフルのもの。

日時は4月29日(金)祝日の11:30から、もしくは16:00から。 ご興味のある方は以下までお問い合わせください。

≪お申込み・お問い合わせ先≫
 市川 万里  :090-6944-8737 / e-mail:mari0823@aol.com