“Bon pain(よいパン)、Bon vin(よいワイン)、Bon fromage(よいチーズ)”


昔からフランスでは、この3つが揃っていれば人生は素晴らしいと、言われてきたそうです。
その“素晴らしい人生”へとナビゲートしてくれるイベントが、1月25日に「ドンク東京丸の内店」で開催されました。
会場となった「ドンク東京丸の内店(カフェ&バールDQ)」は、お馴染みのベーカリー「ドンク」とは一味違う都会的な店舗。丸の内という場所を意識してか、バーカウンターがしっくり馴染むシックな雰囲気になっており、ベーカリーに加え、ゆっくりと座ってパンを楽しめるカフェと、軽い食事とアルコールが楽しめるバールが併設されています。


(大人の雰囲気が漂います)


「ドンク」といえば長い歴史を持つベーカリーとして有名ですが、なんと昨年で100歳の誕生日を迎えたことをご存知でしょうか?
かのレイモン・カルベル氏が1954年に来日し、バゲットやクロワッサンといった本格的なフランスのパンを日本に初めて紹介して以来、ずっと手法を変えずにパン作りに取り組んできたベーカリーのひとつ。その手法とは、スクラッチ法のこと。冷凍の技術が発達した現代、大手ベーカリーでは冷凍したパン生地を使うことも少なくありませんが、「ドンク」では毎日ちゃんと小麦粉を計量し発酵をさせるという作業をきっちりこなし、カルベル氏の教えを守って作り続けているのだそうです。
その一方で、パンの世界大会“クープ・ドゥ・モンド”への出場などへも積極的に参加。
このイベントもそんなパンに対する意欲的な取り組みの一環といえます。

さて、ナビゲート役を務めるのは、チーズ専門店「フェルミエ」代表の本間るみ子さんと、ドンク技術指導の岡田重雄さんと菊谷尚宏さん。


(左から、岡田重雄さん、本間るみ子さん、菊谷尚宏さん)


まずはチーズから。大型モニターに映し出されたスライドを見ながら、本間るみ子さんがフランスのチーズについて解説。マルシェの様子や、酪農家の風景、そしてチーズの由来などに目と耳を傾けながら、自分の前に用意された8種類のチーズをいただくというシステム。パリからその近郊へと旅するように、順々に味わっていきます。


(写真手前から↓)

〜ノルマンディ地方〜
◆ カマンベール・ド・ノルマンディ
チーズ初心者にも馴染み深く、どこでも見かける「カマンベール」ですが、本来はノルマンディ地方の白カビチーズを指すのだそう。食べやすい味わいながら、しっかりとしたコクがあります。

◆ ポン・レヴェック
表面が薄いオレンジ色をしたウォッシュタイプのチーズ。一見クセが強そうですが、意外にマイルド。熟成した風味がクセになりそう!初心者にもおすすめのです。

◆ ブルサン
日本でもとてもポピュラーな「ブルサン」。ノルマンディ地方で作られていた、香草入りのフロマージュ・ブランがその原型となっているのだそう。チーズ自体の風味は軽めで、ガーリックとハーブの香りが食欲をそそります。

◆ ブリヤ・サヴァラン
美食家として名高い「ブリヤ・サヴァラン」の名を冠したチーズ。きめ細かくやわらかで軽い食感と、コクと力強さも併せもつ繊細なおいしさ。シャンパンや甘いフルーツのソースとも相性が良い。

〜イル・ド・フランス地方〜
◆ ブリ・ド・モー
1個の大きさは2.5kg。最近では、白カビのスプレーをかける所も多く、唯一変わらないのは殺菌しない牛乳を使うことなのだとか。トロッとなめらかな食感と、クセのない深いコクは誰からも愛されるおいしさ。

◆ ブリ・ド・ムラン
見た目はブリ・ド・モーと似ていますが、かなり塩気があり力強い味わい。このチーズがノルマンディに伝わり、小さな型で作るようになったのが「カマンベール」だと言われています。

〜フランドル地方〜
◆ マロワル
1000年以上もの長い歴史を持つチーズ。表皮を洗って熟成させたウォッシュタイプですが、「ポン・レヴェック」よりも数倍クセが強く、食感もねっとりと厚みがあります。

〜ブルゴーニュ地方〜
◆ エポワス
ウォッシュタイプで、熟成によって生まれる強烈な風味が特徴。熟成が進んだものはトロトロッとなめらかでクリーミー。「マロワル」と同様に長い歴史を持ち、かつては修道院で作られていたチーズ。



パリのマルシェでは、丸のままの大きなチーズや、バケツのような容器に入ったクリーム類など気取りのないチーズがずらりと並び、フランス人とチーズがいかに密接な関係なのかがうかがえます。
許可さえあれば店舗がなくてもチーズを販売することができるマルシェは、酪農家にとっても魅力的な存在なのだそう。週に1,2回はパリに来て、後は他の場所に移動するというケースも多いのだとか。搾りたてのミルクから作るチーズ、おいしそう!

また、専門的なフロマージュリーの中には、店舗の奥に専用のカーヴを備えている所もあるのだとか。そういった店では、湿度と温度が保たれた中でじっくりと熟成され、ちょうど食べごろになったチーズしか店頭には並ばないのだそうです。


(料理のほか、赤、白、発泡性のワインも)


そして、お待ち兼ねのパンが登場!
ドンク技術指導の岡田重雄さんと菊谷尚宏さんが、この日のために作ったパリやその近郊にちなんだパンが並びます。 中でも注目は、フリュート(モワザンバゲット)!
これには、ちょっとした経緯があります。
日本ではまだあまり知られていませんが、「モワザン」はパリに6店舗を構えるオーガニックベーカリー。全商品にBIOの素材を使用するという徹底したこだわりと、そのおいしさが人気を呼んでいます。
そして、その素晴らしさに共感した「ドンク」が、菊谷さんたちスタッフをパリの「モワザン」に送り込み、約2週間びっちり研修。見事製法をマスターして帰国したスタッフを迎え、昨年9月、そごう心斎橋本店に「モワザン」をオープンしたというわけなのです。ちなみに、粉はフランスから直輸入し、製法も全く同じとのこと。ドンクの新たな挑戦に、期待が高まります!


(思わず熱が入ります)


◆ フリュート(モワザンバゲット)




粉の旨みを引き出すポーリッシュ法を使用。オーガニックのフランス産小麦で作られる、こだわりの一品です。厚みのほどよいクラストがカリッと香ばしく、長時間発酵により引き出されたもっちり感と粉の甘みが楽しめます。



◆ パン・ド・メテイユ




耳慣れない“メテイユ”とは、小麦粉とライ麦粉が半々のパンのこと。軽いライ麦のコクと、しっとり感がありますが、全体的には軽い仕上がりです。ドイツと違い、この食感と風味の軽さがフランスのライ麦パンの特徴なのだそう。



◆ パン・ブリエ(リンゴ)




ノルマンディ地方のスペシャリテ。きめが細かく、少し目の詰ったクラムは、ほんのり甘くミルキーな香り。ごく小さめにカットしたリンゴのコンポートが入っています。トーストすると表面がカリッと軽く、バターやチーズのコクと良く合います。プレーンタイプもあり。



◆ ブリオッシュ ナンテール




日本でもお馴染みのブリオッシュは、17世紀初めにノルマンディ地方から、パリを始めとしてフランス各地に伝わったと言われています。フカフカした柔らかい食感と、バターのリッチな味わいが魅力!



◆ パン・オ・リブラン




ドンク技術指導の菊谷尚宏さんのスペシャリテ。クープ・デュ・モンドで優勝した際、“自国のものを使ったパン”というテーマの元、作り上げたという思い出の作品。玄米のような独特の風味が特徴的で、軽さがあるのにもっちり。旨みの濃い、日本人に馴染む味わいです。



◆ タルト・マロワル




サクッと軽いミルクパン生地に、前述のチーズ“マロワル”を乗せて焼き上げたタルト。チーズのコクと重ならないよう、あえてブリオッシュなどバターの多い生地を避けたのだとか。フレッシュとはひと味違う、力強い“マロワル”の風味を楽しめます。



チーズやパンと共に、ワインや料理を楽しむうちにあっという間に2時間が終了。 駆け足でしたが、パリ周辺に残る地方色を楽しみながら、フランスを旅するのは楽しそう!

子供の頃から親しみのある「ドンク」ですが、「カフェとバールの複合店」や「モワザン」に見る新たな意気込みや、100年の伝統に基づく底力を感じることができました。

次回は、4月にロワール方面、7月にリヨン・ブルゴーニュ方面、10月に山のチーズを予定しているとのこと。興味のある方は、ぜひ参加してみてください。




ドンク東京丸の内店
住所 東京都千代田区丸の内2-1-1 明治安田生命ビル丸の内マイプラザB2
TEL03-5219-5482
営業時間平日8:00〜23:00(バールは17:00〜)、土11:00〜17:00
定休日日曜・祝日