1月に第1回目が開催された「フェルミエ・本間るみ子氏と味わうチーズとパンの集い」。その第2回目が4月27日に開催されました。会場は前回同様「ドンク東京丸の内店(カフェ&バールDQ)」。今回はフランス中西部に位置するロワール地方がテーマです。全長1000kmというフランスで最も長いロワール川が流れ、その流域には中世からルネサンス期の古城が点在する、フランス王朝の優雅な世界に浸れる地。そんなロワールは、フランク王国時代に敵軍サラセン人(アラブ人)が伝えて以来の山羊乳チーズの産地だそう。


古城にチーズとワイン…想像するだけでもうっとり


今回も本間るみ子さんの説明を聞きながら、山羊乳チーズを中心に7種類のチーズを味わいました。


写真右から

まずは山羊乳チーズ5種。
◆ クロタン ド シャヴィニョル AOC
クロットと呼ばれるランプに形が似ていることから「クロタン」と名付けられたというこのチーズ、「シャヴィニョルの小さい馬糞」とも言われているとか。今回のチーズの中では一番粉っぽさがありますが、その分ハチミツとの相性は抜群。赤ワインともよく合います。

◆ セル=シュール=シェール AOC フェルミエ
古くから山羊の放牧で知られる地で、このチーズは生まれました。シェーヴルチーズの中では1番にAOCを獲得した由緒あるチーズだそう。口に広がる酸味とほのかな甘みで味わいはまろやか。さっぱりとして食べやすいチーズです。

◆ シャビシュー デュ ポワトゥ AOC
「シャビシュー」とはアラブ語で山羊を意味する「シェブリ」に由来するそうです。山羊乳チーズ特有のもろもろっとした舌触りですが、かすかに感じられる甘みが心地よく食べやすい。まったりとした口当たりなのに、クセが無く非常にさっぱりしています。

◆ プーリニィ=サン=ピエール フェルミエ AOC
すらっと背の高い姿から「エッフェル塔」というニックネームで親しまれているというロワールを代表するシェーヴル。やや酸味があり、チーズケーキのようなクリーミーな味わい。少しナッツを思わせる強い風味はハチミツともよく合います

◆ デュボワさんのフェセル シェーブル
「クロタン・ド・シャヴィニョル」を作る過程のフレッシュな状態のチーズです。爽やかな酸味はまるでヨーグルトのよう。さっぱりとした味わいですが、後に山羊乳の風味が口の中に広がります。サラダやデザートによさそう。

そして、牛の乳から作られたチーズ2種。
◆ オリヴェ サンドレ
ジャンヌ・ダルクで有名なオルレアン地方では日常的に食べられるという、ぶどうの枝を燃やした灰の中で熟成させたチーズです。少し舌に感じられるピリッとした刺激につるんと滑らかな舌触り。ハチミツと合わせるとフルーティーな味わいです。

◆ フージェル
白カビタイプのチーズにシダの葉を飾って香り付けしたものです。もともと農家が自家消費用に作っていたものだそう。ほんのり感じられるシダの香りと熟成部分のトロ〜としたミルキーな味わいは非常に食べやすく、初心者にもおすすめ。



フランス国内の伝統的な食品に対し、製造地域や製造方法を厳密に定めることによって品質を保障するというAOC(Appellation d’Origine Controlee)。そのAOC に認定されているチーズはなんと山羊乳のものが一番多いのだそうです。そしてそのほとんどがロワール地方のものとのこと。しかし、AOCチーズは少ないけれど生産量は多い牛乳から作られるチーズに比べ、山羊乳チーズの生産量は少なく、全体の3%ほどだそうです。シェーヴルはクセが強いという印象がありますが、全体的にくどくなくさっぱりとした味わい。しかもうれしいことに、脂肪球が少ないため太らないのだそうです。


紫色に塗られた地域がAOC認定区。およそ43あるそうです。


また、ロワールといえばワインの名産地でもあります。もちろん今回用意されていたワインは全てロワールのもの。こうやって産地を合わせてチーズとワインの両方を楽しむのもいいですね。その後出されたプレートには、春キャベツのサラダと神戸「ジャンポール」のスモークハムが。東京にあって、神戸在住のフランス人シャルキュティエ、ジャンポール・バレー氏が作るハムがいただけるとは、同じく神戸を拠点とするドンクのこだわりがこんなところにもあらわれています。



そして、今回いただいたパンも注目すべきもの。始めにチーズとともに出されたバゲットは、その日の夕方に焼きあがったばかりで一番いい食べ頃でした。その後、ドンクの岡田重雄さんと菊谷尚宏さんの説明を受けながらいただいたパンは3種類の生地から作られた全5種類。


◆ パン リュスティック




一次発酵をとったフランスパン生地を計量・成形せずに切り分けたまま二次発酵させて焼成したリュスティック。しっかりときいた塩気にかみ締めるほどに感じられる甘み、まるでごはんを食べているような感覚です。




◆ パン リュスティク ノワ


パン リュスティックの生地にクルミがぎっしり!歯触りのよいクルミの食感とほどよい油脂分が生地と相性もばっちりです。もっちりした生地とクルミの香ばしさがおいしい。シェーヴルとも合いそうなパンです。



◆ パン オ サラザン(バゲット)


そば粉を意味する「サラザン」も実はサラセン人が伝えたものだとか。「そば」というと何となく日本食のイメージですが、ブルターニュ地方の名物料理のガレット(そば粉のクレープ)を思い出せば納得。更科そば粉を15%ほど入れたというこのバゲットは、ほんのりとそばの香りが感じられる上品な味わいです。



◆ パン オ サラザン(パヴェ)


「パヴェ」とは石畳のこと。そんな名前の通り不揃いの形がかえって愛嬌たっぷりです。クラストは薄くてパリッとしていますが、クラムはもっちり。バゲットよりもそばの風味が口いっぱいに広がり、素朴な味わいです。



◆ フワス デ ラブレ






フランス=ルネサンスを代表する作家ラブレーに関わるパンだそう。ロワール出身の彼の作品にはこの地方の食べ物がよく出てきます。そのうちの一つがこれ。見た目はまるでカンパーニュですが、実はブリオッシュなのです!オレンジフラワーウォーター、ベルガモット、サフランの香り豊かで優しい甘さの味わいはクセになりそう。




一つ一つの説明を聞きながら味わうとまた味わい深く感じます



◆ トゥルトー フロマージュ




表面の真っ黒に焦げた姿にびっくり。この姿から、亀の甲羅を意味する「トゥルトー」と名づけられたのだそう。山羊乳のフレッシュチーズを使って作られるポワトゥ・シャラント圏の名菓です。ふわっと軽く口どけのよい生地はほどよい山羊乳の風味でカステラのようです。


牛乳に比べ日本人には馴染みのない山羊乳ですが、その魅力を十分堪能できた今回。わずか2時間の“ロワールへの旅”でしたが、今回もチーズ、ワイン、パンとともに楽しめたショートトリップとなりました。次回はどんな旅になるのか、今から待ち遠しいですね。


パンで出来たエッフェル塔がフランスへの気分を高めてくれます



<ドンクニュース>


ドンクでは、「ママのやさしさ」をコンセプトにした新食パン「パン・ド・ママン」が発売されました。ママン=お母さんのような優しさをイメージして作られたというこの食パンは、口どけのよい柔らかさが魅力。小さなお子さんにもお年寄りにもうれしい食べ切りサイズで、こんなところにも優しさが現れています。そのままでもトーストしてもおいしくいただけるこの食パンを食べて、ママのやさしさを思い出してみてはいかがですか?






ドンク東京丸の内店
住所 東京都千代田区丸の内2-1-1 明治安田生命ビル丸の内マイプラザB2
TEL03-5219-5482
営業時間平日8:00〜23:00(バールは17:00〜)、土11:00〜17:00
定休日日曜・祝日