サントス・アントワーヌ氏 出版記念講習会

フランス菓子学校『エコールクリオロ』の校長としても知られる、サントス・アントワーヌ氏が、フランス菓子の技術についてを書いた『お菓子づくりでまよったら』の出版を記念して、東京と兵庫で講習会を実施した。

シンプルなオレンジ色の表紙が印象的なこの本は、基本的な知識や技術から、数種類のビスキュイ、手の込んだお菓子までを紹介したもので、最大の特徴は、作る手順の説明の中に"失敗例"を入れてあること。例えば、"柔らかく戻してしまったバターを使って生地を作ると、こんな風に膨らまない生地になってしまう"というのが、写真入でわかり易く説明されている。

修行時代に数々の失敗をしてきた経験から、「どうしたら失敗を減らすことができるか」という視点にたって作ったのがこの本であるなら、「成功したらこんなに美味しくできるよ」というのを目の前で見せてくれ、味わわせてくれたのが、今回の講習だ。

作ったお菓子は5種類。

『お菓子づくりでまよったら』
サントス・アントワーヌ著
柴田書店刊


レーヴココ

シャルム

ベルヴェデール

フランボラ

フラン・ア・ラ・
フルール・ドランジェ

ダクワーズ生地の上に、ココナッツのムースとジュレ・ショコラを組み合わせた「レーヴココ」、アーモンドムースとトロピカルフルーツのジュレという夏らしい組あわせの「シャルム」、コーヒーと黒砂糖のベストマッチを活かしたムース「ベルヴェデール」、フランボワーズ風味のクレムーショコラをサブレにつめ、表面をメレンゲで覆った「フランボラ」、いちじくとオレンジフラワーウォーターと白胡麻をあわせたムース「フラン・ア・ラ・フルール・ドランジェ」である。

「唇で測らず、きちんと温度計を」とアントワーヌ氏は言う。一年中同じ味の美味しいお菓子を作るにあたり、温度は大きな成功の鍵であるようだ。もう一つ、アントワーヌ氏の製法の特徴は、チョコレートの乳化。バローナで働いていたというだけあり、チョコレートには人一倍思い入れがある。"一度分離させ、さらに攪拌して乳化させる"という独特の製法がどれだけ口どけのよさを生み出しているかは、チョコレートを使ったお菓子を食べればすぐわかる。

120名にも及ぶ参加者の中には、プロもたくさんいて、みな熱心だった。「質問は?」と聞けば、積極的に手が挙がる。そしてそのどれにも、アントワーヌ氏は丁寧に答える。

今回パナデリアが参加したのは、兵庫での講習なのだが、実は兵庫は、アントワーヌ氏の妻、愛さんの出身地。愛さんは今回、フランス語で講習を進める氏の通訳という大役を見事にこなしていた。講習には愛さんの妹さん、そしてはるばるフランスからアントワーヌ氏のご両親も参加。フランス本国の味と比べたのか、私たちにはとても美味しかったアントワーヌ氏のお菓子に「味がない!」と感想を漏らしていたのが印象的だ。それを笑って聞いているアントワーヌ氏は日本に来て早8年。私たち日本人の味覚をしっかりつかんでいる。

さて、気付けば朝10時から夕方5時までの講習は終了。本にサインをしてもらったりと、アントワーヌ氏はみんなに囲まれ、なかなか教室の中から人は引かない。
これは余談だが、みんなが帰って、片づけも終了する頃、なんと愛さんのお父様が参上。アントワーヌ氏のご両親とは初対面だった様子で、みんなでケーキの前で写真を撮ったりと、楽しそうに盛り上がっていた。









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