今や東京のデパ地下でも定番のブランドとなったアンリ・シャルパンティエは、神戸系ケーキを象徴するような大ぶりな形と愛らしいデザイン、シンプルでありながら女性の心をつかむようなアレンジがとても上手なブランドです。

そんなアンリ・シャルパンティエがフランスのパティシエ、クリストフ・フェルデール氏をアドバイザーに迎えてパリ・セーヌ左岸にラボラトワールを開設したのが2002年12月。「フランス菓子の本物の美味しさ」にこだわったコレクション。今回はその新作発表会に行ってきました。


   

会場は、2003年4月にオープンしたアンリ・シャルパンティエ銀座本店。銀座の裏道にある築70年以上を経た東京都選定歴史的建造物であるビルにあり、クラシカルな雰囲気のなかに鮮やかな色彩を加えたインテリア、まるでパリのアパルトマンを再現したような店内。地下にはサロン・ド・テを併設し、お菓子と一緒にその空間を楽しめるようになっています。また、書庫をイメージした一角には菓子に関するフランスの書籍が多く飾られ、手にとって見ることも可能。フランス菓子を更に身近に感じられる空間でもあります。


   

7回目のコレクションとなる今回のテーマは”Dites-le avec nos Gateaux〜お菓子で伝えて〜”。「大切な人とゆっくり過ごす時に食べてほしい」との願いを込め、5種類のケーキが発表されました。また今回はケーキをより一層美味しく食べるための試みとして、フェルデール氏と料理評論家の山本益博氏がそれぞれのケーキに合う飲み物をコーディネート。普段ケーキにはビターなコーヒーや紅茶を合わせて食べることが多いところ、今回はジュースやリキュールが登場し、それはケーキの味をより一層強く引き出すためのエッセンスのよう。そんな新鮮な驚きとともに、新作ケーキをご紹介しましょう。






紅玉を使用した甘酸っぱいタルトタタンに、香り高いサフランのムースとキルシュのババロアを合わせたケーキ。表面はりんごの断面をイメージしています。りんごジュースはデザートワインのような甘い香り、飲むと甘みが少なく紅玉特有の酸味が強いもの。「まずジュースを半分飲んでから、ケーキを食べてください」と益博氏。ジュースの香りがケーキの風味を増し、酸味は甘いケーキの引き締め役となっている。





定番のミルフィーユは、オレンジ花水入りのクレームパティシエールとプラリネクリームの層と、甘酸っぱいグリオットチェリーのジュレの2層仕立て。通常の長方形ではなく台形にカットされた形に、ちょっとした遊びゴコロを感じます。飲み物はフェルデール氏が指定したというローズティー。ローズの上品な香りが、ケーキの後味とともに口に広がります。






ピスターシュとカシスという個性の強い素材と塩味のサブレ・ブルトンヌを合わせた一品。風味豊かなピスターシュは、皮を湯剥きするところから自ら行っているそう。カシスの酸味とサブレの塩味が全体を引き締め、ここちよい味の組み合わせでした。アールグレイはイギリスウィッタード社からの取り寄せ品。国内でも展開しているブランドですがイギリスのものはより茶葉が大きく、ベルガモットの風味が穏やかでケーキの味を邪魔しません。






ラムとブランデーの風味をつけた和栗のペーストと、マスカルポーネ・コーヒー・チョコレートと秋冬に欠かせない素材を凝縮させたケーキ。とても柔らかな食感で、口溶けの良さが印象的でした。飲み物のカプチーノは苦味と共に酸味が強く、この酸味とケーキのバランスがとても良く感じました。






アーモンドとノワゼット、2種類のプラリネに合わせた素材はレモンの酸味を加えたバナナのクリーム。全体を引き締め、味のアクセントになっています。スイカのリキュールは独特のみずみずしさに、スイカの甘みがたっぷり感じられます。このリキュールを飲んだ後にケーキを食べると、不思議とアーモンドの風味がぐっと強くなります。


これら5品の他にも、まるでリップパレットのような色合いの新作マカロンも登場。軽い食感のマカロンに、しっかりと存在感のあるクリーム。パリのマカロンを彷彿させる味です。


   

和のテイストをフランス菓子に組み込む流れがあるなか、あくまでも本物のフランス菓子にこだわったフェルデール氏。しかし日本とフランスでは素材の違いや味の嗜好の違いなど数え切れない多くのハードルがあり、その度にフェルデール氏とアンリ・シャルパンティエのスタッフとで話し合いや試作を重ねてきたそうです。その成果が十分に出た今回の新作、9月1日(ポム・タタンのみ9月15日)より発売されているので是非ご賞味ください。また、コーディネートされた飲み物は今回のコレクションのみの試みだそうですが、是非サロン・ド・テで提供して欲しいですね。