バウムクーヘンと言えば、誰もが知っているお菓子です。そしてバウムクーヘンと言って、真っ先に思い浮かぶのは「ユーハイム」。今回は、そのユーハイムに伺ってお話を聞いてきました。


マイスター 安藤明 氏

ユーハイムの企画開発室

ユーハイムの企画開発室は、表参道にあります。今回はお願いをして特別にバウムクーヘンの作るところを見学させて頂きました。
教えてくださったのは安藤明氏。安藤氏はドイツの厳しい国家試験に合格し、マイスターを取得された方です。新しい素材を使っての試作、商品開発などをここの厨房で行っています。

早速、卵を割るところから生地作りが始まりました。無駄な動きはなく、手早く作業が行われていきます。別立て法で作ることにより、安定した気泡ができ口どけのよいしっとりとした生地になります。今回はシンプルなものということで、レモンの皮とバニラビーンズを加えて作りましたが、スパイスを入れたり、お酒をいれたりとアレンジすることによって「〜風」というものが出来上がります。生地の状態や混ぜ方の見極めなど随所にマイスターの目を光らせながら生地が出来上がり、いよいよ焼きに入ります。

ペーパーを巻いた真ん中の芯棒に生地をかけ、回転させながら均一に焼き色をつけていきます。焼けたらまた上から生地をかけて焼く。これを繰り返し行うことにより、バウムクーヘン独特のあの年輪が出来るのです。また回転の速度によって、滑らかな層になったりごつごつとしたものになったりと変化が出来てきます。マシーンの前に座り、汗だくになりながら生地が焼かれていくのをじーっと見つめているマイスターの目は真剣そのもの。ちょっとでもタイミングが遅れると色がつきすぎてしまうのです。


中央工場

パナデリアスタッフも挑戦!

今回は試作用の小さな機械で行ったので手作業なのか、と思っていたらとんでもない。愛知県安城市にある中央工場でも手作業で行っている、と聞いて驚きました。工場では1つの機械に幅70cmの棒が6本ついていて、自転しながら観覧車のように回転して焼かれていきます。生地をつけたり、表面をならしたり筋をつけたりといった作業はすべて職人の手で行います。
ここで、パナデリアスタッフも生地をかける作業に挑戦させていただきました。マイスターが簡単そうに行っていた作業がいかに難しいことか!ごつごつしている表面全体に生地をかけるのはそう容易なことではなく、おまけにもっているお玉も熱くなり、手も熱くなってきてとうとうギブアップ。その難しさをあらためて感じました。

バウムクーヘンの原形は、紀元前400年頃に棒にパン生地を巻いて焼いたもの、と言われています。それが15世紀半ばになると小麦粉だけだったものに、油脂や卵、蜂蜜などを加えてだんだんとお菓子に変わっていき、17世紀半ばに今ある年輪模様になっていきました。そして、それを日本に広めたのはドイツ人の菓子職人カール・ユーハイム氏。1920年に広島で開かれた物産展で初めてバウムクーヘンを焼いたのが第一号です。この時すでに日本人の好みに合わせて甘さなどをアレンジして焼いたので大好評となり、翌年には日本で初めてのドイツ菓子店を横浜に開きました。ユーハイムでは当時の製法、配合をそのままにマイスターの手によって受け継がれています。不必要な添加物を使わない、卵の力〜卵黄の乳化性と卵白の気泡性〜だけで作る、自然の風味をそのまま活かす、などユーハイム夫妻の意思を職人を通して伝えていっています。だからこそ万人に好まれるお菓子になっていったのです。

ユーハイムは今年創業80周年を迎え、それを記念してドイツ各地のバウムクーヘンを3回にわけて限定発売します。第1弾(3〜4月)は「コットブス風」。バターが多めの生地にクラッシュアーモンドとアラック酒を混ぜて香ばしく焼き上げています。第2弾(5〜7月)「ザルツヴェーデル風」、第3弾(8〜10月)「ドレスデン風」と続き、それぞれ卵白が多かったり、卵黄が多くお酒がきいていたりと、従来のものと違った味わいが楽しめそうです。

安藤氏が、焼き上がったバウムクーヘンをスパッと斜めにカットしてくれました。綺麗に層になっている断面を見て感激し、頂いてさらに感激。焼きたての生地はふわっと柔かくやさしい味でした。

バウムクーヘンの作り方 バウムクーヘンの
作り方


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