軽井沢、一人の外国人宣教師によって、今では日本における最も有名な避暑地になった場所。そして軽井沢といえばもうひとつ、WEDDINGの聖地ともいえます。ここ「ホテル ブレストンコート」も、そんな女性たちにとって、あこがれの場所、夢見る存在といえるかもしれません。そばには「石の教会 内村鑑三記念堂」「軽井沢高原教会」という二つの由緒ある教会があり、どちらも軽井沢の自然の中、神の祝福を受けて結婚式を挙げる喜びを実感させてくれる素晴らしい教会です。そして、もちろんその後は、ホテル ブレストンコートでおいしい食事に舌鼓をうちながら、皆で新郎新婦の新しい門出を祝う。そんな幸せな人ばかりが集まる愛の聖地が、今回はスイーツの聖地へと変身。ホテル ブレストンコートを目指して集まったスイーツファンは、なんと会期中4日間で2000人とのこと。チケットも6月1日の発売開始以来、たったの3週間で完売してしまい、ある意味プラチナチケットだったようです。
昨年に引き続き、今回は第2回目となるこの軽井沢スイーツ博、
さて、肝心のその内容とは


今年のテーマは「パリが認めた若き天才たち」
この場所に集結する天才パティシエは
もちろん、「ホテル ブレストンコート」から浜田統之氏
そして、東京目白「エーグルドゥース」の寺井則彦氏
吉祥寺「アテスウェイ」の川村英樹氏
自由が丘「パリセヴェイユ」の金子美明氏



スイーツファンなら、このメンバーが同じ場所に集まり、しかもアシェット・デセールを作ってくれるということが、どんなに贅沢なことかわかるはず。このチケット、あっという間に完売するわけです。
イベント開催は8月5日から8日までの4日間。
そしてなんと一日のうちに4回も開催されるのだから、シェフたちも大変な重労働?
前半2日間は、浜田シェフ、寺井シェフ、川村シェフが。そして後半の2日間は浜田シェフ、寺井シェフ、金子シェフのデセールが楽しめます。

イベントは第1部、第2部に渡って開催されます。




ここでは、会場全体をスイーツの工房にみたて、パティシエの演出や技術を見ながら、お菓子が楽しめます。
まず、信州産の朝摘みのトウモロコシを、−196℃の液体窒素で瞬間にシャーベットに。ゲストの目の前で、シャーベットに仕上がったトウモロコシは圧巻。それをブラウニーや、パンナコッタとともにパフェにしたものが、供されます。

このトウモロコシがおいしいシャーベットに

トウモロコシの瞬間シャーベットパフェ


次は、飴を細い糸状にする実演と、チョコレートのテンパリングの作業を見ながら、クッキー生地のチュイールの中に、桃のコンポート、アイスクリーム、木苺のソースがセットされ、その上に糸状の飴とチョコレート細工が飾られます。これで、ピーチメルバの出来上がりです。



フランス伝統菓子のピーチメルバ


会場内には数々のデザートが夢のような美しさでディスプレイされています。まるで映画「マリーアントワネット」の中で、お菓子好きをうっとりさせた場面が目の前に展開されているよう。そして、まわりにはお菓子の甘ーい香りが漂います。



見目麗しいディスプレイ、思わず手が出てしまいそう


さらに、この第1会場のもうひとつの目玉が、チョコレートファウンテン。チョコレート色をしたファウンテンは、時々見かけるけど、これはストロベリーのやさしいピンクが、心まで虜にしてしまうような麗しさ。なんとこのストロベリーチョコレートを、フルーツやマシュマロなどに絡めて食べてしまおう!それも、ゲスト自らその楽しさを味わえるのだから、うれしい。

ストロベリーのチョコレートファウンテン


会場になったのは、おとぎの国のようなゲストハウス「ゲイブルハウス」。まるで自分たちがヘンゼルとグレーテルになったような錯覚に陥ります。

さて、次はいよいよ第2会場となるバンケットルームに舞台を移します。






ここでは、4人の天才パティシエたちのアシェット・デセールが楽しめます。今回のこのレポートは初日の参加だったので、金子シェフ以外3名のシェフのデセールが楽しめました。会場となった「ブルーミングコロネード」は、最大210名も着席で楽しめるというブレストンコートのメインホール。まるで披露宴のように豪華に飾り付けがされたテーブルが並びます。そして、テーブルにはきれいなレースのナプキンが置かれ、きちんと並べられたカトラリーが、これから始まる時間への期待でいっぱいにさせてくれます。

会場では、シェフたちのプロフィールや、今回の素材選びに奔走するシェフたちの様子が、スライドで紹介されました

会場内に飾られたウェディングケーキ。一般に募集したデザイン画のグランプリ、準グランプリの作品が、ブレストンコートのパティシエの手で実現しました

こんなきれいなナプキンが、なんと帰りにはお持ち帰り可だそう。なんて素敵なサービス!

シェフたちからのご挨拶に会場も沸きます


一皿の上に展開される美しいデザイン、時間と共に消えてしまう繊細ではかない味と姿。信州の素材をシェフ自ら探し出し、その素材の旬の美味しさを一瞬でも逃さない、そんな一皿が次々にサービスされます。
ホテルのサービススタッフの「温かいものは温かいうちに。冷たいものは冷たいうちに」「同じテーブルのゲストには、同時にサービスできるように」という努力がひしひしと伝わってくるような、完璧なサービスも美味しさに華を添えています。もちろん、これは厨房内でも同じこと。目には見えないキッチンで、パティシエの皆さんが、同じように配慮しながら、あの一皿、一皿を用意してくれているのかと思うと、感謝の気持ちでいっぱいになります。


一皿目

ホテル ブレストンコート 浜田統之シェフ
「Sensation(サンサスィオン)」
〜こだわり〜
浜田シェフが選んだ信州の素材は、清水牧場の幻のチーズ。ホテル ブレストンコートのレストラン「ノーワンズレシピ」の総料理長という、パティシエとは違った立場から考えられたことが伝わってくるようなこの一皿は、料理のコースから見たオードブルのような感じ。ルバーブのコンフィチュールとブルーベリーのソースの上に乗った、ふんわりとしたクワルクは、エスプーマを使って軽いクレームダンジュに仕上がっています。ピリッと効いた黒胡椒がいいアクセントに。そして透明なトマトのジュレが涼しげにお皿を飾ります。クリームチーズにかぶせられたカダイフ(糸状の細い生地をまとめたもので、揚げるとサクサクに)が、珍しい素材選びでした。そして隣にグラスで添えられたトマトのコンポートが、どこかイタリアンのような味わいを。いろいろな組み合わせで味の変化を楽しむのが、この一皿の楽しみ方だそう。



二皿目

エーグルドゥース 寺井則彦シェフ
「Savoureux d'ete(サブルール デテ)」
〜味わいのある夏〜
寺井シェフが選んだのは桃。全国を代表する長野県川中島の桃を、加熱せず、なんと真空状態で浸透圧をして、小布施ワイナリーの上品な甘さの活きたナイアガラとシロップを吸い込ませたという、見事な桃のコンポート。そして、桃のリキュールが香るアイスクリームと、ほわほわっとしたサバイヨンソース。思わずうなってしまう美味しさです。レストランデザート出身のシェフだけあり、その一皿の美しさは、目をみはるほど。ゴールドで十字に切られたデコレーションは、食べる者を神聖な気持ちにさせてくれます。



三皿目

アテスウェイ 川村英樹シェフ
「Doucer d'abricot(ドゥスール ダブリコ)」
〜アプリコットの酸味と甘さの一品〜
川村シェフが選んだ素材は、日本一の杏の里と言われる千曲市更埴の「シンゲツ」という品種の杏。普通の杏より大きくて、実がしっかりとしている杏は、コンポートにしてもふっくらとしながらも、実が崩れる感じもなく、自然をまるごといただいている幸福感が味わえます。サクサクッとしたクリスティアンショコラの上に、コクのあるピスタチオのクレームブリュレがのり、その上には杏のシャーベットが。そして圧巻は、杏のシャーベットに香るラベンダー。ラベンダーと杏がこんなに相性がいいとは!コンポートの熱々感、シャーベットの冷たさ。そして、サクサク感やなめらか感。いろいろな感じ方の違いを一皿の中で楽しめる川村シェフの見事なデセールでした。




この日は味わうことができませんでしたが、後半2日間は、「パリセヴェイユ」の金子シェフが登場。


パリセヴェイユ 金子美明シェフ
「L'harmonie celeste(ラルモニー セレスト)」
〜天空の音楽〜


金子シェフが選んだ素材も更埴の杏。やはりラベンダーを使ったアイスが登場するそうです。川村シェフとは違う、金子シェフならではの杏とラベンダーのハーモニー。どんな見事な演奏が奏でられたのか、気になるところです。




アシェット・デセールの会、終了後、ほっと一息のシェフに今回のイベントで気を使ったことなどを、伺ってみました。

浜田シェフ:
「一番最初の一皿ということで、オードブルという感覚で作ってみました。今回の素材選びで行った清水牧場は、同じ長野県とはいえ本当に遠いところでした(笑)。清水さんのこだわりを活かしたいと思い、クワルクは出来るだけ熱を加えずフレッシュな状態で使いました。前菜という感覚で気を使ったことは、トマトのジュレを作るとき、出来るだけ野菜の香りを活かしたかったこと。それと、クワルクのクレームダンジュは軽さを出し、甘さを控えめにしました。上に黒胡椒を振り、爽やかさを出したことも、コースの始まりの前菜という感覚からです」



寺井シェフ:
「なんといってもオペレーションに気を使いました。以前レストランデザートをやっていたので慣れてはいるのですが、やはり今回130人いっぺんにサービスすることが、本当に大変でした。厨房、サービススタッフみんなが一丸となってやらないとできないことです。それを一日4回というのが、また大変なことで、今ももう明日の桃の皮を剥いているところです。今回は、エーグルドゥースとして初めての催事なんですよ」



川村シェフ:
「杏とラベンダーの組み合わせを大事にしました。酸味と香りを活かしたかった。ただ、ラベンダーが日本人に合うかどうかが少し心配でした。ラベンダーは花をシロップで煮て取り出したものです。最初ピスターシュと杏のコンポートを一緒にしたかったのですが、ピスターシュの香りが勝ってしまい、杏の香りが弱くなってしまうので、杏のコンポートは別添えにしてみました。ソルベが繊細で溶けやすいためサービスが大変でしたね」




やはり皆さん、一番気を使ったのが温かいものは温かいうちに、またソルベなど冷たいものは溶けないうちに、130人もの大人数にサービスするということだったようです。そして、寺井さん、川村さんがお二人とも、第一部の会場で皆さんがたくさんのお菓子を召し上がった後だったことが、少し心配材料だったようです。

最後に、仕込みの真っ最中で大変そうな金子シェフのお写真を一枚! エッ?金子シェフ?まだ明日は開催2日目なのに? なんとすでに3日目から登場の金子シェフも仕込みに追われているという事実にびっくり。そういえば、寺井シェフもすでに明日の仕込みに入っているとおっしゃっていたし。今日一日が終わってホッと一息のシェフにお話を・・・なんて、ぜんぜんそれどころじゃなかったんですね。お忙しい中、本当に申し訳ありません。

3日目から登場の金子シェフ。どんなデセールだったのか気になるところ


しかも、別の会場では、「パリセヴェイユ」「エーグルドゥース」「アテスウェイ」「ル・ポミエ」のケーキがまるで東京のお店のショーケースをそのまま持ってきたような充実したテイクアウトコーナーもあるのだから。これは、もうシェフたちもすごいし、ホテル ブレストンコートもすごすぎる!スイーツファン垂涎の的のイベントでした。

エーグルドゥース

アテスウェイ

パリセヴェイユ

テイクアウトコーナーには「ル・ポミエ」も登場。もちろん、マドレーヌ氏の姿も




今回のイベントでは、改めてシェフたちの技術のすごさに感動するとともに、シェフたちがお客様に喜こんでもらうということをどんなに大事に考えているかを目の当たりにし、またホテル ブレストンコートの食に対するこだわりとお客様に対する愛情をひしひしと感じることもでき、とても暖かい気持ちで取材を終わらせることができました。
シェフの皆さん、そしてホテル ブレストンコートの皆さん、この企画にかかわったすべての方たちに、スイーツ好きの一人として心から感謝したいと思います。
そしてもちろん、このイベントが第3回、第4回と続いていくことを願っていることを最後に付け加えたいと思います。