10月18日、カナダ大使館において開催された「メープルスイーツコンテスト」の表彰式に参加させていただきました。名前からメープルシロップなどを使ったスイーツのコンテストだろうということはわかったのですが、聞き覚えのないこのコンテスト、はたしてどんなものなのか、興味津々でした。
主催は株式会社クインビーガーデン。養蜂業を始めてから70余年というこの会社は、「自然の恵みをピュアな姿で」をモットーに、現在でも国内では「転地養蜂」を行っているとのこと。花と蜂を追って北海道から鹿児島まで追いかけ、また世界に原料を求める時の姿勢も同様に、地域限定採取された蜂蜜を直接現地で買い付けているそう。そんな蜂蜜に対するこだわりのある会社が始めた「メープルスイーツコンテスト」、なんと今年が第一回目の開催となるそうです。

メープルシロップとメープルシュガー。
今回のコンテストの主役はこれ!


この「メープルスイーツコンテスト」は、カナダ・ケベック州限定で採取された自然の甘味料「ケベック・メープルシロップ」&「ケベック・メープルシュガー」を使用したお菓子とパンのコンテストで、対象はもちろんプロの方、もしくはお菓子とパンを専門に勉強している方のみ。
コンテストの流れとしては、応募総数126作品、107名の中から、まず書類審査(一次審査)で10名程度が選ばれ、その後実技審査(最終審査)で最優秀賞、優秀賞などが選ばれます。今回書類審査で残ったのは、菓子部門から4名とパン部門からは5名の合計9名。そして、この9名が10月14日の実技審査で戦ったというわけです。審査員は「ル・パティシエ・タカギ」の高木康政氏、「グランドハイアット東京」の副総料理長の後藤順一氏、同じく「グランドハイアット東京」ベーカリーシェフの本田修一氏。審査にあたっては、厳正を期するため、氏名、所属などを伏せて選考が行われたそうです。さて、第一回目の栄えある最優秀賞受賞者は? そしてその作品は?表彰式の様子とあわせてご紹介いたします。


まず、カナダ大使館の方からのご挨拶、クインビーガーデンの小田社長からのご挨拶、そして柴田書店の方のご挨拶と続きます。その後、候補者9名が菓子部門、パン部門に分かれ、それぞれ今回の作品のテーマや思い入れを話しながら、紹介されていきます。

パン部門。右から中谷幸司さん、戸澤実さん、東階啓さん、谷口直紀さん、飯住寿勝さん

菓子部門。右から尾形剛平さん、小崎弘嗣さん、伊藤彰二さん、二井悦子さん



そしていよいよ各賞の発表です。銅賞6名の発表の後、銀賞2名の発表へと続きます。まず、菓子部門から「五感を刺激するおもしろいデザートを作りたかった」という伊藤彰二さんの「sense〜小さな秋見つけた〜」という作品が選ばれ、パン部門からは「メープルシロップの持つ自然の甘さとつややかさをポイントに」という谷口直紀さんの「メイプルミルフィーユ」という作品が選ばれました。
最後にいよいよ金賞の発表です。金賞は菓子・パン部門あわせて1名だけの選出になります。その栄誉ある賞に輝いたのは、現在「ドゥーシュークル」勤務中の尾形剛平さんの「Premier d‘erable(プルミエール・デ ラブル)」。この作品のテーマは「塩とメープルシロップ」だそうです。実は尾形さん、11月に現在の「ドゥーシュークル」を退社予定後、あのフランス・ブルターニュの「アンリ・ルルー」さんのもとで研修に入るとのこと。なるほど、塩をテーマに持ってくるのも納得です。

金賞
「プルミエール・デ ラブル」
尾形剛平さん


銀賞(菓子部門)
「sense〜小さな秋見つけた〜」
伊藤彰二さん


銀賞(パン部門)
「メイプルミルフィーユ」
谷口直紀さん


各賞を手に、喜びの受賞者の皆さん



受賞者の挨拶の後、審査員の本田シェフからの激励を込めたご挨拶、高木シェフからの今回の選考内容などについての説明を含めたご挨拶をいただき、無事表彰式は閉会となりました。

審査員の本田シェフ、高木シェフからのご挨拶で表彰式も幕を閉じます



その後場所を移し、受賞パーティが開かれました。パーティ会場で高木シェフに今回のコンテストについてのインタビューをしてみました。

「今回の金賞は全員一致で尾形さんの作品に決まりました。味といい技術といいすべてが良かったし、メープルの香りが一番良く出ていたと思います。銀賞の伊藤さんは秋の素材として柿を使ったのですが、メープルとの相性を考えると難しい素材に挑戦したな・・・という感じでしたね。また同じく銀賞の谷口さんの作品はおもしろかったですね。大きなミルフィーユはとても印象的でした。ただ、メープルよりフィグが前面に出てしまって、肝心のメープルの香りが薄くなってしまったのは残念でした」

実はパナデリアは密かに二井悦子さんの「メイプルケイク」という作品が気になっていたので、そのことについて伺うと

「二井さんの作品は、発想がとても良かったのですが、クルミとアーモンドの香りが口の中に広がってしまい、メープルが後ろに隠れてしまっていました。今回は全体のおいしさももちろんですが、メープルを使うことがポイント。その香りを活かすことが大事だと思っています。そして実はこのメープルの香りを活かすということが一番難しいんですよね」

と、今回の審査で一番のポイントとなったところを話してくれました。

パナデリアが「おいしそう」と思った
二井悦子さんの「メイプルケイク」


パーティ会場ではメープルを使った料理などが並びます。
中にはメープルシュガーを使った酢飯も




ところで、高木さんのメープルプリンは名作ですねと伝えると

「あれは、卵も強調してはいけないし、甘さも濃くしないようにして、メープルが香るようにしました。トップのクリームもけっこう大切です」

そういえば、以前高木シェフから、「このプリンは食べる前に電子レンジで20秒ほど温めてください」と教えていただいたことを思い出した。それはメープルの香りを楽しむために重要なことだったと、今改めて気がつきました。



そして、最後に

「今回は初めてだったのですが、やはり作品を試食できるようにした方がいいですね」

と高木シェフ。

そうそう、そうなんです。やはり受賞作がどんな味かはとても気になるところ。どんなところを審査したのか、またメープルの香りなどの話を伺うと、さらにその「香り」の持つ大事さを、実際に自分でも実感したいところ。 次回からはぜひ、作品の試食もできるよう、そして皆でそのおいしさを伝えていけるような企画にしていただけたらいいなと思いました。

会場には作品が並べられています。味の方も気になるところ



今回初の「メープルスイーツコンテスト」、メープルスイーツの魅力の更なる発見と、日本の食文化の発展に貢献するために開催されたというこのコンテスト。これから2回目、3回目と続き、メープルスイーツの可能性がますます広がっていくことを期待しています。