去る8月22日、日本製粉株式会社東部技術センターで全日本丸十パン商工業協同組合主催のパン講習会が催された。講師を務めるのはリスドォル・ミツの廣瀬満雄氏をはじめ、同店またその出身である現役の職人の方々。 受講するのもプロやセミプロがほとんど、仕込む単位も店並みという本格的な講習会で、ただただ出来上がっていくパンを追っかけるのに必死だった。店では毎日この何倍もの種類のパンを作るわけだから、段取りや効率、職人どうしの連携というのがいかに必要かがわかる。


廣瀬満雄氏 スタッフのみなさん


今回の講習会のポイントは、
「ミツの自然酵母(ビール酵母*)」を使えば・・・

1. 国産小麦粉でもふっくらとしたパンが作れる!(タンパクの少ない国産小麦ではふっくらとしたパンが作れないとされてきた)
2. 糖分の多いパンでもおいしいパンが作れる!(自然酵母はリッチな生地には向かないとされてきた)
3. 生地冷凍・成型冷凍・ホイロ後冷凍も可能
4. ライン生産も可能 (自然酵母で以上の4点を克服しているのは世界初とのこと)

*このビール酵母は1gで20億個もの乳酸菌を持っている。ヨーグルトは1gあたり乳酸菌1万個というから、その多さがわかるだろう。


という点。4番めの「ライン生産」を除く全てを、目の前で実証していただき、またできあがったパンを食べて、この酵母の素晴らしさ・ありがたさを一層実感した。

今回は日本製粉の国産小麦「特赤星(タンパク0.42、グルテン8.5%)」と「北海(タンパク0.38、グルテン7〜8)を使用。どちらもパン用には向かない数字に見えるが、本当にふっくらと見事な焼きあがりだった。


廣瀬氏曰く、「外麦が悪いと言っているわけではありません。国産小麦は香味がよく、ポストハーベストの心配はないので外麦に比べて安心、と言っているだけです。」そして、「国産小麦を使うことで自国の生産者が喜んでくれたらいいと思いませんか。それに、難しいと思われがちな国産小麦ですが、吸水に気をつければ大丈夫。」とのこと。
また、無添加パンの扱いの注意点は、次の3点。

1. ミキシングは控えめに。油脂を入れる前に捏ね過ぎないこと。
2. 低温長時間発酵
3. 高温短時間焼成(食パンの場合スチームを入れて熱の波長を短くし、中から火を通すとよい)

ビール酵母

ビール酵母に使用するビール

生のトマトとバジルを生地に練りこむトマトパン 
フレッシュな香りが素晴らしい!

右 奥専務  左 小野チーフ


職人たちがてきぱきと作業を進めている間、レシピやコツを教えてくれる廣瀬氏だが、そのレシピや自然酵母の開発、作業のポイントなどは数え切れないほどの失敗と試行錯誤を繰り返して生み出されたもの。それを惜し気もなく披露してくれるのも、「安心・安全でおいしいパンを広めたい」という気持ちからであろう。これまでに韓国・台湾・日本と合わせて約230店ものパン屋をオープンさせたというのだから、驚いてしまう。

「1つのことを主眼にしてやっていくうちに、2つ、3つ考えがでてくるというものです。今日の会が店でのパン作りについて考えるきっかけになればと思います。」と受講した職人へのエールも送られた。
廣瀬氏の父親のような存在という
全日本丸十パン商工業協同組合の雨宮氏
農林水産省食糧部の大沢室長


午前中は次々と捏ねられていった生地が、午後には次第にそれぞれのパンのかたちになっていく。途中、リスドォル・ミツで人気のお菓子も紹介され、受講者も作業に挑戦。これらは残ったパンをパン粉にして作られたものなのだが、香ばしいクッキーやモチモチとした蒸しパンに変身すると、パン粉とは思えない商品になる。厳選した材料で一生懸命作るパンだからこそ、最後まで捨てずにきちんと食べたいという思いが伝わってくる。ましてそれが人気商品というところが、さすがリスドォル・ミツだ。
パン粉を使ったクッキー 
ザクザクとした食感がおいしい
クッキー作りに挑戦


焼き立てのパンに無添加のハムとレタスを挟んだおやつを食べたり、奥専務の華麗な飾りパン作りの手さばきを眺めている間に、次々とパンが焼きあがっていく。巨大なオーブン2台をフル回転させ、ベーグル、バゲット、食パン、ブリオッシュなど、全部で実に13種類!参加者は冷凍のビール酵母生地、紙袋いっぱいのパンを一人2つも(おまけにミッちゃんキーホルダーまで!)もらい、身体じゅう香ばしい匂いをプンプンさせて解散となった。
人形のパンを作る奥専務 これがミッちゃんキーフォルダー!!


今回のような講習会はこれが最後ということだったが、講習会自体をやめるわけではなく、形を変えていずれ行いたいとのことだったので、パン作りに興味にある方、自然酵母に興味のある方は是非参加してみていただきたい。


廣瀬満雄氏のホームページURL http://www2s.biglobe.ne.jp/~mutenkap/