ホスメック・クリニック
三好 基晴先生


最近、『無農薬』『無添加』という言葉をよく耳にしますが、裏返せば一般の食べ物には農薬や添加物がたくさん使われていると言うことなのかもしれません。日々進化する現代科学、お菓子やパンにもそんな現代のテクノロジーが使われているのでしょうか?
そんな疑問を胸に『買ってはいけない』の著者の一人である 医学博士 三好 基晴先生にお話しを伺って来ました。
おいしいもの、甘いものが大好きで、ご自分でオーガニックのチョコレートや天然酵母のパン、味噌や醤油までも作られているという三好先生、酵母や砂糖についてどんな考えをお持ちなのでしょう?





天然(自然)酵母について

天然酵母とイーストについて教えてください。

『天然酵母』の定義はありませんが、『天然酵母』は酵母菌が一種類ではなく、酵母菌以外にも麹菌や乳酸菌など様々な菌が共存しているものと考えています。逆に『イースト』はほとんど酵母菌しか存在しないので、"膨らむ"と言う点では非常に優れていますが、純粋培養の分離酵母であるイーストは製造工程で化学物質が使われることがあります。
また『ホシノ天然酵母』は、自然界にいる酵母菌を薬剤などを一切使わずに純粋培養したもので、イーストと天然酵母の中間のようなものと言えます。


『天然酵母』に混ざっている様々な菌、食べても安全なのでしょうか?

色々な菌が混ざっているといっても、病原菌がいる訳ではありません。一般に"雑菌"と呼ばれているものも含め、菌というのは実は体に無害なものがほとんどで、有用な菌も多くいます。
こういった微生物の働きには驚くべきものがあり、その相互作用によって天然酵母パンの芳醇な香りや味わいが生まれるのです。


目的の酵母菌だけを純粋培養することについて、どうお考えですか?

自然界では、酵母や有用菌など、様々な菌が共存しているのが普通の状態です。
たとえば自然界の"働き蟻"のコミュニティを見てみると、一生懸命働いている蟻は6割。3割はあまり仕事せず、1割はほとんど仕事をしていません。労働の効率を上げようと、その1割を取り除くと、残りの1割がまた働かなくなってしまうと言うことです。
菌も同じで、強弱含め様々な菌同士がお互いにコミュニケーションを取りながら1つのコミュニティを築き、均衡を保っているとも考えられます。もし有害な菌が混入した場合は、それを淘汰していくのが実は自然な営みなのです。ですから、人為的に不必要と勝手に解釈しているものを排除すると歪が生まれてしまうのです。
人間も同じで、奈良の薬師寺金堂の再建の総指導をされた宮大工の西岡 常一氏は「木には強い木も弱い木もある。しかし、強い木だけでは良い建物は建たない。宮大工も同じである。腕の良い大工も、できない大工も必要なのだ。それをまとめていくのが棟梁の仕事だ。」と述べています。
蟻も人間も、そして菌も同じ。構成要素の1つ1つに意味があるのだと私は考えています。


砂糖について

砂糖の安全性について、教えてください。

砂糖には表示義務のない加工助剤というものが使われることがあります。
脱色には、活性炭や骨ぱいが使われており、骨ぱいの場合は牛の骨であれば、狂牛病の問題が心配です。
私が、一番お勧めするのはパラグアイのオーガニックシュガー。天然の石灰岩でアク抜きして結晶化させたもので、味もおいしいです。
国産でも無農薬で作っている黒砂糖があるようですが、値段は高めです。

お菓子によく使われるトレハロースとは、どんなものですか?

自然界にもトレハロースは存在するのですが、添加物のトレハロースは、製造工程において酵素が使われます。その酵素は細菌を使った発酵法で作られることがありますが、トレハロースを作っているメーカーに問合せても企業秘密との事で教えてもらえませんでした。発酵法には遺伝子操作菌や培養液の心配があります。

遺伝子操作菌について教えてください。

遺伝子操作菌は、突然変異誘発物質(ガンマ線など)などを使用し、目的用途の物質をつくる遺伝子を持った菌を人為的につくり、それを純粋培養させる方法です。その場合、目的の遺伝子以外に突然変異によって有害な物質をつくる遺伝子が生じる可能性があり、それについてはよくわからないまま使用されるという点が非常に怖いと思います。また培養液に化学物質を使っているものもあります。
更に、遺伝子操作では時間や費用がかかるため、遺伝子そのものを組み替えてしまおうというのが遺伝子組み換えです。遺伝子組み換えには色々な規則がありますが、遺伝子操作には規則がないのが現状です。

人体への影響はありますか?

これは農薬にしても添加物にしても、有害か否かを白黒はっきりと科学的に証明することは難しいです。ただ何を原料にどうやって作っているのがわからないものを口に入れるのは怖いですね。
菌のエサの原料となるジャガイモやトウモロコシが遺伝子組み替えかどうか、純粋培養の培養液には何が使われているか、そういう事の情報公開がないことが一番問題だと思います。ケーキ屋さんでも加工食品のように原材料表示をしたり、1、2品で良いので原料にこだわったお菓子があればうれしいですね。

農薬、添加物、遺伝子操作菌との付き合い方についてご意見をお願いします。

現代の生活で一番怖いのは、体内に入った様々な化学物質や遺伝操作菌によって作られた食物による相乗毒性です。ですが、実際問題として農薬、添加物などの有害化学物質を一切取らないで生活するのは、不可能に近いのが現状です。
ですから作り手側にはできる限り情報開示をお願いし、また消費者としては出来るだけ化学物質や身元の不明なものを摂取しないように心がけるのが良いと思います。お菓子はなるべく手作りのものを食べましょう。


菌匠会について

菌匠会について教えてください。

現在、ほとんどの製造メーカーは、種菌メーカーから買ってきた発酵醸造菌を使っています。その菌はエキス類、アミノ酸、ビタミン剤、ミネラル剤などを使って分離培養、いわゆる純粋培養されているものがほとんどです。そこで、昔ながらの伝統的な手法により、天然の麹菌や酵母菌などの発酵醸造菌の匠な技で作られた味噌や醤油や日本酒などの発酵醸造食を復活したいとの思いで、菌匠会が設立されました。今後は情報誌の発行や、自然食鑑定士のような資格も考えています。

菌匠会ホームページ http://kinshoukai.fc2web.com


● 先生のお薦めショップ

・ ナチュラル ハーモニー アンゴロ

菌匠会の事務所のある"ナチュラルハーモニー"が経営しているレストランです。農作物については、無肥料自然栽培、自家採種のもの。また、加工食品(特に発酵食品)については、蔵付きの菌による自然発酵のものを追求しています。菌匠会で扱う醤油、味噌、納豆などが食べられます。

住所 東京都渋谷区神宮前3-38-12 パズル青山1F
TEL 03-3405-8393
FAX 03-3405-8398
アクセス 地下鉄銀座線 外苑前
定休日 月曜日
営業時間 11:30〜22:00(14:30〜18:00休み)
URL http://plaza23.mbn.or.jp/~angolo/



・ インターナチュラルガーデン プランツ

生産者が見える野菜や、環境にやさしい石鹸や自然素材の建材など、オーガニックな生活スタイルを提案するモールです。アンゴロの姉妹店のレストランも併設されています。
住所 神奈川県横浜市青葉区荏田西1-3-3
TEL&FAX 045-910-1246(代表)
アクセス 田園都市線 江田駅
定休日 水曜日(祭日の場合翌日定休)
営業時間 11:00〜20:00
URL http://www.naturalharmony.co.jp/sub7htm.htm