2001年2月22日〜25日、インテック大阪で開催された『モバックショウ2001』。モバックとは『MACHINERY OF BAKERY AND CONFECTIONERY SHOW』の略である。日本及び海外からの出展もある、製パン業界をはじめとする食品業界のビッグイベントで、2年に一度開催され、今回で17回目を迎えた。

 環境に優しい素材や機械が目立ったのが今年の特徴だ。各メーカーの新技術の開発は、なおもめまぐるしい。そんな中で機能だけでなく、よりお客様を楽しませるように作られた機械(石窯風の窯など)もあり、21世紀を迎え、よりソフトな部分へ機械が近づいてきているようにも思えた。


 そして今回のショウの一角で、なんと、2002年4月にフランスで行われる『クープ・ドゥ・モンド』の日本代表を選ぶ最終予選が行われたのである。
 クープ・ドゥ・モンドへの日本の参加は1994年が最初。当時は書類と写真のみで行われていた選手の選考だが、4度目の今回は初のオープン競技として行われ、朝の7時過ぎから午後3時過ぎまで、職人達は8時間という時間をかけてパンを焼き続けたのである。

 3日間、各日3人ずつが、初めて使う窯でパンを焼く。味のみならず、見かけの美しさ、衛生面など細かい点まで、委員長の明石克彦氏をはじめとする10数名の審査員のかたにチェックをうける。作るほうも真剣であれば、仕上がったパンを試食する審査員の様子も真剣そのもの。手にしたパンの、まず匂いをかいで、気泡を見て、押してみて、口に運んで・・・。審査委員同士がぼそぼそと語り合う姿をみて、作り手たちは気が気ではなかったはずである。ちなみに審査対象は、バゲット、クロワッサン、ブリオッシュ、パンスペシオの4種類。
 そして、(既にフランス行きが決まっている飾りパン部門渡辺明生氏以外)9人の候補者から2名が選ばれる瞬間は、最終日正午からの表彰式。表彰会場は満席、立ってでもその瞬間を見ようという人も数えられないほどだ。選手紹介や祝辞に続くその発表の時を、9人の候補者をはじめ、観客みんなが、今か今かと待つ。


委員長明石氏

受賞者3名と
左:ジョゼフ・ドルフェール氏
右:クリスチャン・バブレ氏

委員長明石氏から発表のあった2名は、菊谷尚宏選手(ドンク)と山崎隆二選手(帝国ホテル)であった。
私は幸運にも、予選3日目だった山崎選手の審査の場面を間近で見たが、真ん中から真っ二つに切ったクロワッサンを見たフランス人MOFのドルフェール氏が「五重丸に花丸!」と思わず口にしていた場面があった。これまた幸運なことに、審査後、そのクロワッサンを口にすることができた。さすがの味と、試食用に細かく切ってもなお美しく重なり合った層、層が織りなすさっくりした歯ざわりと文句のつけようのない口どけの良さであった。
 フランス大会までの1年数ヶ月、彼らはプレッシャーと戦いながらも、より一層修業に励むことだろう。過去、飾りパン部門では1位獲得経験のある日本だが、今年は是非、フランスパンやクロワッサンなどパンの王道を行く部門でも、過去最高の3位を超える戦績を残してきて欲しいと思う。




☆ 今回の候補者9名の作品(実演日程順) ☆
菊谷尚宏氏
吉川崇氏
杉澤良一氏
橋本高広氏
井上克哉氏
徳沢浩明氏
倉田博和氏
山崎隆二氏
藤原雅敏氏

☆ 飾りパン部門日本代表 渡辺明生氏の作品 ☆