パナデリアの会報21号で、「大航海時代」をテーマにしたことを、皆さん覚えていらっしゃいますか。大航海時代に東西の交流が盛んになり、スパイスやカカオなどが伝来したという話ですが、その時代、日本でも長崎にポルトガルからカステラが伝来。どうやらそのときのものは、今のカステラとは見た目も味もぜんぜん違うものだったようです。その後、長崎のカステラは、鎖国時代でも順調に(?)に進化を遂げ、今わたしたちが大好きなあの味になったというわけ。パナデリアでもスタッフKのカステラ好きは有名。そんなわけで、今回はカステラを食べに長崎までひとっ飛び。どうやら、長崎ではカステラの試食がたくさんある・・・という話が彼の原動力になったようです。長崎のカステラ屋さん、シャッターを下ろしてお店を閉めたほうがいいですよ。なんといっても彼は、いちご狩りで、農家の人に「あの人がこのビニールハウスのイチゴを全部食べつくしちゃった!」と、あきれられた人だから。カステラも根こそぎいっちゃうかも!!


というわけで、長崎に降り立った彼がまず向かったのは、どこのカステラ屋?・・・いえいえ、実は最初に向かったのは、とりあえず、長崎ちゃんぽん屋。確かに長崎といえは、ちゃんぽんですよね。カステラはデザートと考えて、その前にまず、主食を・・・ということで、長崎ちゃんぽん発祥の地といわれる「四海樓」へ。ここは港が見下ろせる絶好のロケーション。おりしもその日は長崎帆船祭りというのをやっていて、港にはたくさんの帆船が集まっていました。そんな中、食い気のことしか脳みそにないKは、ひたすらちゃんぽんと皿うどんを前に箸を動かし続けます。

長崎ちゃんぽん皿うどん


「四海樓」
住所 長崎市松が枝町4-5
TEL095-822-1296




さて、腹ごしらえが終わったK。いよいよ本来の目的に突入。まず、グラバー園近くの「長崎堂」へ。外にかかった大きな垂れ幕には「ザラメ入り五三カステラ」の文字が。カステラの底にはりついたザラメが大好きなKとしては、もう導入部分からたまらない!
「茶色のところにたくさんザラメがついていて、甘くておいしい。黄身の味が濃くて、さすが五三カステラ!」と満足そうな顔で店から出てきたKの手にはカステラがぶら下がっていない!・・・ってことは、それ試食だけの意見? おいおいおい、それってずうずうしいんじゃない?



「長崎堂」
住所 長崎市松が枝5-65
TEL095-822-2438




しかし、このずうずうしさは、まだまだ続きます。次はグラバー園に向かう坂の途中にある「清風堂」。ここの試食は半端じゃないサービスの良さ。プレーンなカステラをはじめ、チーズカステラ、抹茶カステラなどなど、とにかく試食し放題。長崎名物のザボン味のカステラなど、本当に大盤ぶるまいの「清風堂」に感激。お茶までサービスしてくれるのだから、感謝、感謝! でも、本当は試食したら買うのが普通だと思うんだけど、なんとここでも試食だけで終わったK。長崎の皆様、ごめんなさい。東京もんはせこいです。
せめて、恩返しのつもりで、味のコメントをひとつ。
「バラエティーに富んでいて素晴らしい。ジェノワーズみたいなカステラ生地は、洋菓子っぽい味で、若い人にうけそうなおいしさ。チーズカステラはチーズの風味がしっかりして、コクのあるおいしさ」
とのことでした。



「清風堂」
住所 長崎市南山手町2-6(グラバー園通り)
TEL095-825-8218




途中、他店のカステラの試食も忘れず、寄り道をしながら、グラバー園へ。そして、坂の上にある「大浦天主堂」の前では、さすがに“食欲の権化”も、しばし神妙な気分に。



大浦天主堂



グラバー園内の旧オルト住宅



グラバー園、大浦天主堂を後にして、またグラバー通りを下っていく帰り道、あたかも初めてのような顔をして、さっき入ったお店にもう一度入って試食をするのはやめて!と、後ろから後を追う私はつぶやいていたのですが、おっと、坂の途中になんと「カステラ神社」なるものが。どう見ても本物の神社とは思えないけど、一応カステラに敬意を表して立ち寄ってみることに。



これ絶対、まじめな神社じゃないですよね!



カステラ神社でおまいりをした(?)後は、また心がすがすがしくなったのか、新たな獲物を求めて街へ・・・。
なんといっても、行ってみたかったのは「松翁軒」。
ここは以前、知人からいただいた「桃カステラ」があるところ。しかも、過去にこの店に来たことのある別の知人からも、「試食がいっぱい出るよ」と聞かされていたので、絶対に行きたかった店。さすがに試食だけでは申し訳ないので、ポルトガルから伝来した由緒あるお菓子というイメージが漂うパッケージのものを選んでみました。
そのほか、ちょうど子供の日の前ということで、店頭に並んでいた「鯉カステラ」を購入。もちろん、試食もさせていただき、満足して店を後にしました。



「松翁軒」
住所 長崎市魚の町3-19
TEL0120-150-750





実はここにチョコレートカステラの試食も乗っていたのですが、
食い意地が先行しているため、
写真を撮る前に、すでにチョコカステラは
胃の中へ消え去っていました





卵もお砂糖もさらっとした、
どこか清楚な感じのするカステラ。
ふんわりしっとりとした上品な味わいです





これが子供の日用、鯉カステラ。
かわいらしいデザインのパッケージに、
中はふんわりクレープのようなカステラのような、
どらやきのような(しつこい!)
皮にあんこと求肥が入ったやさしい味のもの。
この赤いパッケージの他、ブルーのものも。





(おまけ)
これが「松翁軒」の桃カステラ。
なんとなくこの姿がおめでたい感じですよね。
ちなみに私はこれを誕生日プレゼントにいただきました。
予約販売なので、何かお祝い事に使いたい方、
もしくはお土産にちょっとしたサプライズを加えたい方は、
事前の予約をどうぞ!




まだ紹介したいカステラ屋は、数々あるものの、さすがに読んでいる皆さんのおなかもいっぱいになってきたと思うので、ここらへんで〆の一軒を。
カステラといえば「文明堂」と思っている方も多いと思うので、最後は長崎の「文明堂総本店」へ。
さすが、長崎の文明堂! 堂々としたいかにも由緒ある店っていう感じ。でもさすが文明堂というだけあって、お店自体もプライドが高いのか(失礼!)、試食などは一切なし!素直にカステラを買ってお店を出ました。しかし、ここでも鯉カステラを発見。ショーウィンドーに並んでいる姿もかわいらしかったけど、実際に目の前にある姿は、ピンクとグレーの色鮮やかな食べるのが惜しくなるほど、顔のかわいらしいもの。しかし、そこは残酷なK。ばっさりナイフで切れ目を入れ、頭からまるごとパクッ!
口から血を流しながら食べている(そんなわけ、ないか!)Kに味について聞いてみると、 「とにかくフォンダンが甘い! でも下のカステラが上品な甘さで、どちらかというとカステラというより、ジェノワーズみたい。だから上のフォンダンの甘さとのバランスはいいと思うよ」とのことでした。



「文明堂総本店」
住所 長崎市江戸町1-1
TEL095-824-0002




鯉カステラ、これは、2415円の小さいサイズ。
この他に3990円の大きいサイズもありました。
といっても、たぶん季節限定品なので、
詳細はお店にお問い合わせください。




長崎のカステラといえば、この他にも「福砂屋」が有名。「福砂屋」を食べないなんて、片手落ちだぞ!という非難の声がたくさん聞こえてきそう。そうです、今回、片手落ちの旅をしてきました。というのは、途中で買ったばかりのデジカメが壊れたからです(涙)。そんなわけで、「福砂屋」さん、次回は必ず行きますので、試食を用意して待っていてくださいね!(てなわけには、いかないか!)



おまけの話題 〜 長崎で見つけた「鯉」関係のお菓子





「岩永梅壽軒」の鯉菓子 \900
金魚の練りきり。お餅の中には白あんがたっぷり。
まわりが本当のお餅なので、かなりおなかにたまる感じ。
お菓子というより、おめでたいときにいただくお料理の
ような感じでしょうか。




「岩永梅壽軒」
住所 長崎市諏訪町7-1
TEL095-822-0977


ここ「岩永梅壽軒」に行ったのは、本当は一ヶ月に一度しか作らないという「梅壽軒寒菊」というお菓子に興味があったから。一ヶ月に一度だから、買えるはずもないのに、突撃隊!は行ってしまったのですが、案の定、この時期は作っていませんでした。もちろんそういうお菓子なので予約も必須。そのほか、ここのカステラは、なんと私たちが聞いた時点でも、予約3ヶ月待ちとのこと。すごい、すごすぎる!!



もうひとつおまけ。

長崎まで来たら、ぜひ平戸にも出かけてみて。そこには、「カスドース」という平戸に伝わった南蛮菓子があります。これは、カステラを卵黄にくぐらせ、まわりにグラニュー糖をまぶし、さらに熱い糖蜜にくぐらせたというもの。ご想像のとおり、とっても甘いのですが、卵の黄身の味がしっかりして、じゃりじゃりっというグラニュー糖の食感もよく、カステラもしっとりして、とてもおいしいもの。
ちなみに、今回食べたのは「湖月堂」のカスドースでした。ここでは、カステラの端っこの切り落としを袋詰めにしているものを、同時に購入。なんと100円で袋いっぱいに幸せが詰まっているので、これもお薦めです。



「湖月堂」
住所 平戸市浦之町668
TEL0950-22-2274




これが、カスドース。
ポルトガルから伝来当初は、
松浦藩の門外不出の貴重なお菓子だったそう。