11月3日・文化の日、世田谷区上野毛にある日本菓子専門学校で、今年で14回目を迎える菓子祭が行われました。今年のテーマは "一口食べたら癖になる"。
お菓子好きにとっては、やはりお菓子と言えば、一口食べだしたら止まらないもの…。そこで、テーマにひかれて行ってみることにしました。

午前10時から午後3時までのこのイベント。もちろん、朝早くから大勢の人!人!!人!!! 
まずは洋菓子の実演コーナーへ行ってみることにしました。たくさんの器具が揃った大きなキッチンの中で、お菓子の製作風景を真近で見ることができます。しかも、いろいろな種類のお菓子。ロールケーキにモカクリームをぬって、薪の形に仕上げたクリスマスケーキ、「ブッシュドノエル」。バターケーキの生地をぬっては焼き、ぬっては焼きを繰り返すことで木の年輪のような模様が生まれる「バームクーヘン」。小さなシューに飴をくっつけて山型の土台に貼り付けていた「クロカンブッシュ」。色取りどりのシュガーなどできれいに飾られた「ウェディングケーキ」。

基本的には、同じような材料の小麦、卵、バターなどを使ったものが、作る過程を変えるだけで、全く違うものが生まれていく…
その工程を追いながら目に入る光景にお菓子が出来上がっていく姿に、感心したり、感動したり。最後に出来上がったケーキを見た時には、それぞれのケーキの数だけ感動があったな…なんて、なんだかほんわかした気分になってしまいました。


さて実演コーナーの見学の後は、今度は自ら菓子作りを体験できる体験コーナーへ。事前に整理券が配布されたのですが、すぐに定員オーバーになってしまう程の人気。
理由はわかるような気がします。器具の充実したきれいなキッチン、いかにもプロの厨房のようなキッチンには、足を踏み入れただけで、ワクワクしてきます。さらに、二人の生徒に一人の先生がついてくれるのです。なんと贅沢な話ではないですか。さて、メニューは・・というと、秋の味覚として、はずすことのできない栗を使った、とっても美味しい(すでに食べてしまった今では…)「モンブラン」。開始前に、エプロンと紙でできたクッキング帽(?)が渡され、なんだか、"すっかり私もパティシエ!"気分で、盛り上がってしまいました。

さて、モンブランですが、手順としては、栗のペーストを練ってから、次にブランデーを入れた生クリームを泡立てます。そしてタルトの上に渋皮付きの栗をのせて泡立てた生クリームを絞ります。そしていよいよ最後の仕上げとなるマロンクリーム! モンブランの顔が決まる、大事な命を与える瞬間です。子供の頃、何故かこれを絞ることに憧れ、大人になった今でも、なんとなくそんな気持ちが残っているようで、きれいに渦を巻いたマロンクリームにフォークを入れる瞬間はドキドキしてしまいます。しかも今日は自分が食べるモンブランを作っている訳ですから、尚更ドキドキです。作ることの喜びって、食べることの喜びと同じくらいうれしいものだということを実感してしまいました。
約40分にも渡る実習を終えキッチンを出る時、モンブラン6個入りのケーキボックスと使用したクッキング帽をいただきました。モンブランにフォークを入れる楽しみは帰宅してからです。

会場には、生徒さん達による作品のコンテストもありました。テーマは2つ。「5つ盛り、5種類の上生菓子で日本の四季を演出する和菓子」ということ。そして、「マジパンデコレーションの洋菓子」でした。
季節の移ろいを感じさせる上生菓子には、改めて良き日本の菓子文化を感じました。作品の和菓子の淡い色合い、さわるとはらりと落ちてしまうのではないかというくらいに繊細な作りこみに心が打たれ、これからも、日本の伝統的な和菓子の技術や文化を、絶やす事なく大事に守って欲しいなぁと、生徒さん達への期待が高まるのでした。

また、洋菓子のマジパンデコレーションの作品はどれも夢のような世界。ケーキを飾る人形や花の表情の1つ1つにこだわりが感じられ、出来上がったモノはどれも、個性的で夢のある可愛いい作品ばかり。
そして、和菓子・洋菓子どちらをとっても、生徒の皆さんの手先の器用さには唯々感心するばかり。卒業された後の製菓界での活躍が楽しみです。
会場には他にも、生徒さん達の手作りによる喫茶あったり、販売コーナーがあったり、どちらも朝早くからの大行列。そして、餅つきやクッキーのつかみ取り大会などの企画が盛りだくさんのイベントとなっていました。

普段は、お菓子といえばもっぱら「食べる」だけの私でしたが、今回の日菓祭で、食べるだけでなく自ら作る経験を通して思った事は、食べてもらう人の気持ちになって作る事が大事だということ。もちろん素材選びや技術も大切ですが、食べる人の気持ちになって作ることによって、その素材以上の美味しさまでも、生み出してくれるような気がしました。日菓祭の今年のテーマ"1口食べたら癖になる"まさに、その通り。そして"作った喜びも癖になる"ということを実感できた文化祭。
秋の美味しい味覚をいっぱい味わって、そしてこの文化祭を通してお菓子に対する楽しみがまた、一つ見つけられたような気がしたのでした。

(取材・文 古賀 瑞穂)