3月初旬、マーブルブックスから「オーブン・ミトンのおやつなお菓子」が出版されました。オーブン・ミトンの小嶋シェフといえば、シンプルでも味わい深く、素材の持ち味を活かしたお菓子作りが評判です。また、確実においしく作れるレシピ集や、プロならではのテクニックを惜しみなく披露してくれる教室も大人気で、全国各地から熱心なファンが訪れるほど。さて、今回の本ではどんなお菓子が登場するのでしょう?パナデリアでは、11日に開催された出版記念パーティーに行ってきました!

ほの暗い灯りが点るカフェの2階に上がると・・・?外からは想像がつかないほどの人と熱気!


会場は高円寺にある「HERE WE ARE marble」のサロン。1階は落ち着いた雰囲気が魅力のカフェで、2階がサロン。本好きはもちろん、音楽好きやデザイン好きの人たちなど、ジャンルを超えて気軽に楽しめるスペースになっています。その時々のイベントごとに雰囲気もメンバーも自在に変わるサロンですが、この日はダークな照明の中に人、人、人の山!教室の生徒さんを中心にたくさんのファンが集まりました。普段から顔なじみという人たちがほとんどのようで、パーティーは始めからすっかりハイテンションに。アットホームな雰囲気の中で飲んだり食べたりと大盛況。中でも皆が気になるのは・・・やっぱりお菓子のメニューです!

甘さ控えめのコーンブレッドは、ソフトな口あたりとコーングリッツ(とうもろこしの粗挽き粉)のつぶつぶ感が魅力


「今日は『オーブン・ミトンのおやつなお菓子』のものを中心に6品を用意しています。特に一押しは、コーンブレッド。今年、全国的に広めたいクイックブレッドなんです。うちでも、またはカフェでもケーキ屋さんでも作って、皆で楽しみましょう。これはいろいろなレシピで作れるんですよ。今日は本のレシピのうちのコーングリッツを半量に減らし、80gのスイートコーンをプラスしました。ここに並んでいるお菓子以外でも、生クリームを加えた蒸しケーキや、フードプロセッサーでまわすだけのオールドファッションなど、お手軽にできるものばかり。是非いつものおやつ作りに役立ててもらえればと思います」

ナイフで切り落としながら揚げたひと口サイズのフレンチクルーラー。グリーンアニスをプラスして香り良く

生のベリーにクランブルを乗せて焼いたベリーのコブラー。ソース状になったフルーツを絡めて食べるのがおいしい



この日お目見えしたのは、コーンブレッドやドーナッツ、パンプディングなどの“おやつ”たち。見た目もシンプルで、誰でも知っている馴染みの味・・・のはずなのに、口にするとハッとするほどおいしい!いつものおやつだって、小嶋シェフの手にかかればとびきりの味になるから不思議です。実は、本が出来上がるまでには、こんなエピソードが隠されていました。

小嶋シェフの手にかかれば、ドーナッツも驚くほどふっくらとした食感に!生地をゆるめに作る配合がポイント


「朝日新聞にも掲載された、おやつの定番ともいえるホットケーキ。これは、浅草で人気の『天国』という喫茶店のものがヒントになっています。以前、うちの店に天国のオーナーが教わりたいといらしたことがあるのです。その後、自身で研究を重ねホットケーキを完成されました。そのホットケーキがとてもおいしかったので、レシピを教えて欲しいと訪ねたら、秘密だって言うんですよ。そこで、作っている厨房にはりついてしっかり見学。とても感動的な作り方だったので、それを真似てみました(笑)。添加物の入ったミックス粉やインスタント粉が主流の現在、一から手作りする良さをもう一度考えたいですね」
家庭でも簡単にできる身近なおやつこそ、こだわりたい。配合や混ぜ方を工夫すれば、きっと感動する味に出会えるはず。こんな風に素朴なおやつのひとつひとつにも、小嶋シェフならではの想いが隠されているのです。

「今回の本も、とても見やすくてわかりやすくて作りやすいですよ!」と並木さん



“小嶋シェフのお菓子を知ってしまったら、他のどんなに華やかなお菓子も色あせてしまう”と、ある人が言っていたように、オーブン・ミトンのお菓子を食べて魅せられた人は数知れず。お祝いのメッセージもたくさん寄せられました。

「ホットケーキもコーンブレッドも蒸しケーキもマフィンも。みーんなパクらせてもらいたいお菓子ばかり(笑)。私もこれを見て勉強させてもらっています。(ビゴの店 藤森二郎 さん)」

「ルミさんのお菓子は本当に素直に表現されていて、自分にはないものを持っているなあと感じます。シンプルなものをいかにおいしく作るか、その良さを教えてくれますね。(デフェール 安食雄二シェフ)」

「プロの味なんだけれど、どこか懐かしい。そして必ずうまく作れるというのがルミさんのお菓子なんです。“おやつ”の本というのも、とってもルミさんらしいなと思います。(料理ジャーナリスト 並木麻輝子さん)」

「他の世界を見てみたいなとオーブン・ミトンの教室に通い始めたのですが、初めにガトーショコラを食べてあまりのおいしさにびっくりしました。ルミさんのお菓子は、すっきりとして粋な味。私が理想としている俳句のようなケーキなんです。魅了されているうちに3年が経って、卒業ということらしいのですが、寂しいしどうしようかなと(笑)。(日本料理『潮(うしお)』店主 潮 幸司さん)」

盛り上げ上手な藤森シェフ。楽しいコメントを寄せてくれた間も、手にはしっかりと小嶋シェフの本が


実は、藤森シェフと安食シェフの2人はパーティーに参加することができず、ビデオレターが流れるという楽しい演出に。スクリーンにシェフの映像が映し出されると大きな歓声があがります。これについては、
「お2人ともすごく行きたいんだけれど、ホワイトデー間近なのでどうしても行けないって。その想いを延々と20分も語って下さいました。せっかくなのでビデオで撮影させてもらったんです」

安食シェフは厨房で作業の真っ最中。白熱した空気が伝わってきます


お菓子のおいしさはもちろん、気さくでお茶目で好奇心旺盛な小嶋シェフ自身もとっても魅力的。なんとパーティーの後半には、近ごろ趣味にしているというオカリナを披露するというひと幕も。
「お菓子も音楽も一緒の部分があって、いろいろ勉強させてもらっています。教室の生徒さんが“できない〜”って悲鳴をあげる気持ちもわかるようになったし(笑)」
と謙遜しながら始まった演奏ですが、清々しくて心にすっと染み渡るような音色は、オーブン・ミトンのお菓子そのもののイメージ。会場もすっかり和やかなムードに包まれます。それにしても、小嶋シェフが黒いドレスをまとってオカリナを吹く姿が見られるなんて、貴重です!

この日の演目のテーマは“スイーツ”。“チョコレートはメ・イ・ジ”のテーマソングで軽快にスタート!


最後に、企画・編集を担当した春日水奈さんからこんな言葉が寄せられました。
「小嶋シェフのお菓子は、あれこれと着飾ったものとは違って、ヌードで勝負できるもの。だから、今回はお菓子の断面に注目してみました。レシピやコツに加えて、是非ヌード(断面)の写真もよ〜く見てみてくださいね」
本当に、断面の写真を見ているだけでも、甘く優しい香りやふんわりとした感じが伝わってくるよう。

ふわふわで口溶けの良い「黒豆&黒ごまマフィン」は、泡立て方と混ぜ方に秘密があり


たかがおやつと思うなかれ!そこには、長〜い道のりを経て育まれた小嶋シェフの想いがたっぷり詰まっているのです。たくさんの人や店、料理やお菓子との出会いがあって、それから何度も試作を重ねて、ようやく完成した“オーブン・ミトンのおやつ”の味。是非皆さんの“うちのおやつ”の定番の一つに加えてみてはいかがでしょう?(2008.03)





オーブン・ミトンのおやつなお菓子

著者:小嶋ルミ
発行所:マーブルトロン
定価:¥1,500(税別)