もうすぐクリスマス! 街中にクリスマスのイルミネーションが輝き始め、肌に感じる空気もひんやりと冷たい季節になりました。 そろそろみんな真剣にクリスマスの予定を立てはじめている頃でしょう。そんな中、カリフォルニア・アーモンド協会「クラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワ」と共同で、「アーモンドを使ったクリスマスのお菓子」の講習会を開催しました。講師は、藤森二郎シェフ(ビゴの店)、西原金蔵シェフ(パティスリー オ・グルニエ・ドール)、鎧塚俊彦シェフ(Toshi Yoroizuka)、フランス菓子研究家の大森由紀子さん。この4名が一度に同じ会場に揃い、各々1品ずつお菓子を披露してくれるというのだから、なんとも魅力的な講習会ではありませんか!




到着すると、会場はすでにアーモンドとバターの香ばしい香りに包まれていました。日本ではお菓子に使うナッツというと、まだまだアーモンドが大半を占めていますが、そのうちのなんと99%がカリフォルニア産だというから驚きです。日本人にも非常になじみ深いアーモンド。どんなお菓子が出来上がるのか楽しみです。


まずは藤森シェフ。親子2代でMOFを取得した、フランスはアルザスのドルフェール氏にレシピを教えてもらったという「アルザス風シュトーレン」。2週間は日持ちするというこのパンは、クリスマスまで少しずつ食べるものです。しかし、シュトーレンと一口で言っても、パン屋さんとお菓子屋さんが作るものとでは作り方も食感も異なります。もちろん、今回はパン屋さんの作るシュトーレン。まずはリスドオルというフランスパン専用粉を使って中種を作ります。

「生地を仕込む際の室温は24〜25℃が最適。室温、粉温、水温を足して60℃になるように計算して水温を出します。だから、パン屋は頭が良くないと駄目なんです」

冗談のようだけど真面目な話。身振り、手振りで説明をするシェフはとてもパワフル!


藤森シェフが中種を発酵させている間に、鎧塚シェフの登場です。目の前でシェフがデザートを仕上げて出してくれるのが魅力的な「Toshi Yoroizuka」。いつもはお店をぬけることはないそうですが、今日は特別とのこと。シェフが作るのは「ショコラアマンド」。これはお店でも出しているチョコレートのケークです。これも非常に日持ちのするものだそう。


「このお菓子のレシピは、私が修業時代を過ごしたフランスでのものがベースになっていますが、大きくアレンジを加えてあります」

フランス、スイス、オーストリア、ベルギーと、チョコレートの本場ヨーロッパの各国でシェフをしていた鎧塚シェフですが、行った先々の国ではその国のチョコレートを使っていたそうです。現在は、フランス・ヴァローナ社のものとベルギー・カレボー社のものを使い分けているとのこと。そして今回使用したのはフランス、ヴァローナ社のもの。藤森シェフに、西原シェフ。二人の視線を感じた鎧塚シェフは、

「先輩方がじっと見ているのでやりにくいですね」

などと冗談で受講者の笑いを誘います。これで受講者の緊張もだいぶほぐれた様子。数々の楽しい話を交えながら手際良く作業が進められていきます。和やかな雰囲気の中、あっという間に仕上がった生地。それを型に入れて焼き上げます。

鎧塚シェフを優しく見守る(?)西原シェフ

そして次は、京都の名店「オ・グルニエ・ドール」の西原金蔵シェフ。数年前、初めてこのお店の「プラリーヌ」を口にした時に、「アーモンドってこんなに美味しかったんだ!」と感動を覚えた記憶があります。アーモンドと西原シェフと聞けば「おいしいに違いない」という絶対的な確信が。今回の「ガレット・デ・ロワ」にも期待が高まります。まずはフィユタージュから。優しく手で包み込むように生地を捏ねるシェフ。それぞれの作業についての解説やポイントを、その都度分かりやすく丁寧に話す姿から、シェフのお菓子に対する愛情や人柄が伝わってきます。


「普通、バターは温度を加えて柔らかくすると思われがちですが、実は温度を加えずに刺激を与えただけでも柔らかくなるんです。例えるなら、隣同士でしっかり組んでいる腕を、刺激を与えることによって外すようなイメージです」

とバターの特性についてもレクチャー。その他、理想的な作業台の高さや、生地を伸ばす際に使用するめん棒の選び方まで、自分でお菓子作りをする人には為になる話ばかり。

時間待ちの間も和やかな雰囲気の藤森シェフと鎧塚シェフ
次々と焼きあがっていくお菓子たち


ひとまず、生地が出来上がったところで、登場するのは大森由紀子さん。刻んだチョコレートを入れたパン・デピス「パン・デピス・オー・ショコラ」を作ります。もちろん、スパイスとハチミツもたっぷり。パン・デピスはフランス・ブルゴーニュ地方のディジョンの銘菓ですが、アルザス地方においても有名なお菓子。


「地方菓子だけで一冊の本が作れるのはアルザスくらいです」

と本を片手に、この夏訪れたというアルザス旅行についても語ってくれました。そんな大森さんが身につけるのは、アルザスの象徴であるコウノトリを刺繍したかわいらしいチェックのエプロン。この日のレシピも、パウンド型1台分という家庭でも作りやすい分量なので、とても身近に感じられるものでした。そして、大森さんの温かな雰囲気で、会場に華やかさがプラスされました。


幸せを運んで来てくれるというコウノトリは、
私たちにおいしい幸せを運んでくれる大森さんにぴったり!


この後、西原シェフが再び登場し、クレーム・ダマンドを作って先ほどのフィユタージュで包みます。そして、ペティーナイフの背を使ってクープを入れた後は、いよいよオーブンへ。この作業中も、大事なポイントを受講者に丁寧に語りかけるシェフ。 また、藤森シェフは一次発酵させた生地を分割し、ベンチタイムの後成形をします。このシュトーレン、棒状に整えたマジパンローマッセ(ローマジパン)が生地の真ん中に入ります。

「このシュトーレンは簡単に作れますから、家庭でもぜひ作ってみてください」

と繰り返す藤森シェフが印象的でした。 この頃には、会場は次々と焼きあがっていくお菓子の香りで満たされ、講義に集中していた受講者たちも試食が待ちきれない様子。

休憩を利用して、出来上がった4種類のお菓子がカットされ、テーブルに並べられます。その間も、受講者たちに囲まれ大忙しの講師陣。試食会では、4人の講師の技とともに、それぞれに形を変えたアーモンドを堪能することができました。

ショコラアマンド(手前)とパン・デピス・オー・ショコラ(奥)

アルザス風シュトーレン

ガレット・デ・ロワ



おいしいだけでなく、アーモンドには摂取エネルギーや血糖値のコントロール、さらにはコレステロール値を下げる効果もあるとか。豪華な講師陣に、アーモンドの魅力を再発見することができた今回の講習会。クリスマスにはシュトーレン、お正月にはガレット・デ・ロワ。みなさんも、いつもとはひと味違った年末年始を過ごしてみてはいかがですか?