新得農場は6ヶ所にある共働学舎のうちの1つで、北海道・十勝平野の西、牛乳山と呼ばれる山のふもとにあります。ここの特徴はなんといってもフレッシュタイプからハードタイプまで揃ったおいしいチーズ!独自の環境で生産されるその本格的な味には、全国のファンからの注文が後を絶ちません。共働学舎の創設者宮嶋真一郎氏の子息であり、この新得農場の代表を務める宮嶋望さんに、設立当初からのお話しを伺いました。
新得農場代表の宮嶋望さん



「もともと放射線物理学やコンピューターを使った植物生態学の勉強をしていましたが、父親が共働学舎を設立した頃は岩手の牧場で働いていました。大動物についてもっと勉強したい気持ちがあったので、手伝わないかと言う父親に4年間だけ待ってもらうことにして、アメリカで畜産の勉強をしてきました。

4年後に帰国し、新しくつくる新得農場の代表を務めることになったのですが、まず思ったのは、アメリカと同じことを10年遅れでやっても勝ち目はないということ。この土地ならではのことをしなければという思いで、まずは有機農業を始めました。全ての土台となる土づくりから着手したというわけです。」


「農場・牧場が段々と整うにつれ、舎外に牛乳を売るようにもなっていったのですが、牛よりも舎の人間がどんどん増えてしまったのです。そこで、牛乳を売るだけではやっていけない、収入を得るために何か付加価値のある商品を開発しなければならないということになりました。でもここで生活するのは障害のある人たち。何かを習得するのも作業をするのもどうしても遅くなってしまうので、一般の市場のスピードには追いつけません。だから、10年先に売れるであろうもの、かつ私たちが得意とする「じっくり手間ひまかけて作れるもの」はないかと考え、思い浮かんだのがチーズでした。ハードタイプのナチュラルチーズというのは日本ではまだマーケットが確立されていないジャンルでしたから、本物を作れば10年後に必ず需要があると思いました。」


「そうやってチーズ作りを始めることにしたのですが、ハードタイプは出来上がるまでに時間がかかります。そこで、はじめはすぐに作れて今後マーケットが伸びるものに取り組もうと思い、熟成させないナチュラルタイプのモッツァレッラ作りを始めました。国内で商業ベースでモッツァレッラを作ったのは、うちが最初なんですよ。今から15年ほど前のことですが、イタリア料理が増えるという読みがあたって、本格的にハードタイプチーズを作る基盤ができました。」

チーズ作りに関しては、こちらへ(来週更新します。お楽しみに!)

「おいしいチーズを作るにはおいしい牛乳が必要です。おいしい牛乳を出してくれるのは健康な牛です。そう考えていくと、やはり全ての環境を整えていないといいものは作れません。そこで新得農場で取り入れているのが、微生物や活性炭を使った環境作りです。土から植物が育ち、それを食べた牛が乳と肉をつくり、植物や肉・牛乳を人間が食べる、牛の堆肥は土に戻され、植物の栄養となる。このサイクル全ての工程に農薬や薬品を投与しているのが現代の一般的なやり方ですが、これではお金も手間もかかって仕方ありません。新得農場では、牛の餌にだけ土壌発酵菌を入れることで、微生物が自然のサイクルを自動的に循環するような仕組みをとっています。これならば牛は健康でいい堆肥ができ、土もよくなり植物もよく育つというわけです。さらには牛の寝床を初めとする敷地内のあちこちに活性炭を埋めることで、生物・物質のもつエネルギー(電子)の循環をスムーズにし、働きを活発にするのです(物質から電子が離れていくということはすなわち酸化するということ。活性炭は物質の電子を集め、電子の足りないものへと流す働きをする)。

舎内のみんなで作り上げた牛舎



また、水も環境を整えるのに重要な要素です。ここではELIXIRUという浄水器を使っているのですが、これはハーキマーダイヤモンド(水晶)を中心として各種の鉱石・磁石・活性炭・セラミックスが層になって水を浄化するというもの。水晶が正確な振動を刻むことでこれらの岩石が水の分子を整えてくれるというしくみになっています。」

「ここでは新しく入舎した人が働きたくないといえば無理矢理働かせるようなことはしません。好きなようにさせておいても、他のみんなが生き生きと働いているのを見ると段々興味を持つようになるんですよ。そうなったらおやつやご飯作りを手伝わせ、畑作りや牛の世話を手伝わせるといった具合に徐々に仕事を与えるんです。そういう仕事をするうちに自分の食べているものがどこから来ているのか、身を持って知るんですね。ここはそういう自然のサイクルや営みを全て実体験して一人一人が「生きる」ということを学んでいく場所なのです。」



共働学舎新得農場ホームページhttps://www.ssl-on.net/SHOP/onokako/ss-kyoudou.html