Sylvain Cabane氏の経歴

1995年 国家適正試験CAP取得(パティスリー、キュイジーヌ共)     
     Le train blue(パリ)にて研修
1997年 Patisserie Cassel(フォンテーヌブロー)にて勤務
1998年 三ツ星レストランGuy Savoy(パリ)にて勤務
1999年 Francois Payard(N.Y.)にてショコラティエのシェフとして勤務
2000年〜Patisserie Cassel(フォンテーヌブロー)にてパティスリーのシェフとして勤務中
2000年 アルパジョンの飴細工(青年の部)にて優勝     
      同コンクールのデセール部門にて最終選考者に選ばれる


去る10月18日、洋菓子会館で行われたSylvain Cabaneシェフの講習会に取材に行ってきました。指導してくださったSylvain Cabaneシェフは現在もフランス・フォンテーヌブローのパティスリー「Patisserie Cassel」(パティスリー・カッセル)で働く若干23歳のパティシエ。2000年のアルパジョン・コンクール飴細工部門青年の部で優勝した経験の持ち主。今回の講習会は、休暇で来日されるCabaneシェフに本場フランスのお菓子を披露して頂こうと、アトリエ・アムール・ピュールによって企画されました。パナデリアのホームページでも参加者を募集した今回の講習会ですが、急遽企画されたものだったことやシェフの日本での知名度が低かったために、集まった人数は少なかったものの、質問も多くアットホームな雰囲気で楽しいひとときでした。


デモンストレーションしてくれたケーキは3種類。Manjari(マンジャリ)というチョコレートとアプリコットを使った冬向けのアントルメ、Babylone(ベビロンヌ)というバニラのババロアと洋梨・パイナップルのコンフィチュール(ジャム)を使ったビュッシュ・ド・ノエル、そしてVerre des Cevennes(ヴェール・デ・セヴェンヌ)というレストランのデザート向けの一品です。それぞれ、普段や記念日向けのグラサージュで仕上げるケーキ、とい型で仕上げるクリスマス向けのケーキ、そしてグラスでサーブするデザート向きのものと、形・材料・場面の違う3タイプのお菓子を紹介してくれました。


作り方の上でのポイントはもちろん、Cabaneシェフが終始強調していたのは、「サービスとプレゼンテーションのポイント」です。パティスリーのウィンドウを飾るケーキは長時間美しい状態を保てるということが何よりも大事ですが、ケーキのデコレーションにフルーツをのせると、味だけでなくフレッシュさや季節感を演出できるので、是非フルーツは取り入れたい。ただしこの時、フルーツの色や質の劣化を防ぐためのナパージュはまんべんなく塗っておくことがポイントとのこと。また、「持ち帰る途中で崩れてしまわないというのは、買った人だけでなく家でケーキを待っている人のためにもとても大切なことなのです」というシェフの言葉には、シェフのお客様への心遣いが感じられました。そして、特にアントルメの場合、「外見の美しさだけでなくカットした時の断面の美しさは第2のデコレーションと言われるほど重要なのだ」とのことでした。

レストランでサーブされるデザートは、パティスリーとは違ってその場ですぐに食べてもらえるもの。その利点を生かして、冷たいものと熱いものを組み合わせるということができます。その例として今回のデザートを用意してくれたのですが、これもマロンのアイスクリームとクレームシャンティの間にフランベした熱いマロンが入るというものです。パティスリーで買うお菓子では味わうことのできないデザートならではの一品です。


生地やムースなど、パーツができあがる度に試食させてくれたり、ゼラチンやナパージュ、ペクチンなどは既製品がない場合どうやって作るかなど、レシピの説明には留まらないとても親切な指導をしてくれました。また、Babyloneに詰めたコンフィチュールは日本人には甘すぎるかもしれないとの配慮から、代わりに詰めるジュレの配合まで教えてくれて、「日本の方々にフランスのお菓子の魅力・おいしさを伝えたい!!」というシェフの思いがひしひしと伝わってきました。


さて肝心なケーキの味ですが、Manjariはパート・ダマンド入りのどっしり、しっとりした生地の上に、グラサージュ・ショコラ、ムース・マンジャリ、クレムー・ショコラ・オ・レという3種類のチョコレートのパーツがのった、まさに冬向けの濃厚なケーキですが、中に入ったアプリコットの酸味がとても爽やかで、重たくなりがちなチョコレートのムースをさっぱりと後味よく仕上げています。まわりにアプリコット色のマカロンが張りつけられているのは、美しさだけでなく「このケーキは中にアプリコットが使われていますよ」というサインなのだそうです!


Babyloneは薄いビスキュイ・ジョコンドの中にバニラのババロアが詰められ、中には厚めのビスキュイ・アマンド、その間には洋梨とパイナップルのコンフィチュールが入ったケーキ。シェフの言う通り、コンフィチュールは確かに甘さが強かったけれど、ババロアの優しい味としっとりとしたビスキュイ・アマンドはとってもおいしかったです。


Verrre des Cevennesはグラスの底に敷いて冷やしたカシスかグリオットのジャムと、同じく冷たいマロンのアイスクリーム、フランベしたばかりのマロンとクレーム・シャンティという、冷たくて温かくて甘くて酸っぱい!といういろんな味が一気に楽しめる楽しいデザートでした。栗のシロップ煮が、フランベしただけでグンとおいしくなるのには、みんな驚きでした。



今回の講習会は、フランスで働くパティシエのCabaneシェフが日本の方々にフランスの今のお菓子を伝えたい!ということで企画されたものでしたが、シェフの願い通り、フランスのパティスリー、レストランそれぞれでのお菓子のあり方、楽しみ方を知ることができました。また、フランス人にとって欠かせないクリスマスのケーキ、ビュッシュ・ド・ノエルの実演は、プロの方にとってもこれからのクリスマス商戦に向けてとてもいい参考になったのではないかと思います。
今月末にはフランスに帰国されるというCabaneシェフですが、帰国後も腕を上げて是非また日本の私達にフランスの情報とおいしいお菓子を届けてくれることを期待しています。(そんなパナデリアと同じ気持ちなのか、はたまた「いつか有名なパティシエになるかも!」というミーハー根性からか、帰り際一緒に写真を撮る参加者も多かったのでした。)



アトリエ・アムール・ピュール
横路純子&升田愛子さん主催
「世界中の情報・感動を、食を通じて伝えたい!」というコンセプトのもとに、教室やデモンストレーション、ホームページ上での情報の発信など幅広い活動を行っている。 今回のデモストレーションは、横路さんのフランスでの研修先のシェフ、Cabane氏が来日するということで企画された。
詳しくは… http://www.framboisecafe.com



注)板ゼラチンはアイビスの「ゼラチンリーフ600」を使用。製品によって固まる強さが違うので、確認の上ご使用ください。

Manjari
マンジャリ
Babylone
ベビロンヌ
Verre des Cevennes
ヴェール・デ・セヴェンヌ