去る4月4日、学校法人服部学園で行なわれたヴァローナのマスタークラスへ行ってきました。このマスタークラスとは、ヴァローナが現役で活躍中のプロのパティシエ向けに行なう講習会で、日本では今回が記念すべき第1回となります。既存の講習会と最も違うのは、ヴァローナのみならず、アジアを含め世界各国のパティシエたちに毎回講師を務めてもらい、開催国のニーズやコンセプトにあった技術・情報、また全く新しいアイデアやコンセプトの提供をしようということ。そして、講師から受講者へ向けての一方的な講習ではなく、小人数制で講師・同じ業界の同士たちが一緒になって技術や意見を交換しあう場であるということです。

講師を務めたのは、本国フランス ヴァローナの製菓学校「レコール」校長フレデリック・ボウ氏。2日間で25種類以上ものボンボンを作るというハードスケジュールです。パナデリアをはじめ、取材陣は2日目の後半に講習風景を見せてもらえることになりました。当日、指定された時間に会場へ着くと、ボウ氏を中心としてあちこちでボンボンを作っているのは和光ルショワの川口行彦シェフをはじめとする日本全国のトップ・パティシエの面々です。



ボウ氏が手作業でガナッシュにチョコレートを上掛けする方法を教えてくださいました。機械化が進んでいるとはいえ、やはり手作業でコーティングするのは基本中の基本。しっかりと習得しておかないといけないということなのでしょう。見ていると、ただチョコレートが全体についていればいいというものではなく、いかに薄く美しくつけるかというコツがたくさんあって、パナデリアもシェフ達に混ざって食い入るように見てしまいました。

その後はエンローバーという、テンパリングされたチョコレートをガナッシュにかける機械を使ってのコーティング作業です。機械でコーティングされるとはいえ、スムーズに作業を進めるにはその前後でうまくチョコレートを流れにのせる必要があります。エンローバーの詳しい使い方はわかりませんが、やはり機械とはいえデリケートなチョコレートを扱うものですから、温度管理などは難しそうです。

コーティングの終わったボンボンは銀箔や転写シートで最終的な仕上げを施され、美しく並べてデモンストレーションに入ります。取材中のプレスも混じってシェフたちと一緒に仕上げのお手伝いをしました。



エンローバー


ボンボンをきれいに並び終えたら、参加したシェフ全員が前に並んでプレスのために一人ずつ自己紹介とマスタークラスの感想を話してくれました。パナデリアでは普段あまりお目にかかれない関西をはじめ地方からいらしたシェフの方も多く、今後チョコレート市場は日本全国でもっと広がるだろうなと実感しました。

最後にヴァローナ ジャポンのアンリ・クリストフ社長、フレデリック・ボウ氏、そして通訳をしてくださった奥様の藤森利香さんからも挨拶が行われ、和やかな雰囲気のもと、講習会の終了となりました。

参加したシェフたち、勢揃い!

左からアンリ・クリストフ社長、藤森利香さん、フレデリック・ボウ氏


もちろん終了とはいえ、シェフたちが2日間かけて作ったボンボンの試食は忘れてはなりません。 全てを試食するのは数が多すぎるので、おすすめの7種類についてボウ氏自らカット・解説をしてくださいました。試食したボンボンの中で印象的だったのは、アールグレイのボンボンとトンカ豆のボンボンです。アールグレイは煮出さずに一晩漬けておくことで渋みのない爽やかなベルガモットの香りが引き出されていました。トンカ豆はあのマルコリーニ氏も注目していると言っていたもの。ちょっと薬っぽいような香りが特徴的です。まさにグルメのためのチョコレートといった趣です。


ボウ氏から教わった「おいしいボンボンの見分け方・味わい方」

・まず、噛んだときガナッシュに歯型がくっきりとついて断面がツヤツヤとしていること。
・そして、なめらかではありながらあぶらっぽくないもの。例えていえばフォアグラのような・・・。
・最後に口の中で香りの持続するもの。

以上3点です。今度からボンボンを食べるときの参考にしてみてください。


今回の講習会では、ヴァローナの2種類の新しいチョコレートも紹介されました。 ARAGUANI(アラグアニ)は72%というヴァローナの中でも最も高いカカオ分を持つビターチョコレート。酸味がしっかりとあるものの、後には残らずさっぱりとしたキレのいい味わいです。とても風味が豊かで加工するのがもったいないくらい。 もうひとつのTANARIVA(タナリヴァ)は、ミルクチョコレート。しっかりと甘く、濃厚な乳の風味の、広く受け入れられそうな味わいです。 (この二つのチョコレートについては、その製作に関して興味深いエピソードが!詳しくはフレデリック・ボウ氏のインタビュー記事に掲載しますので、お楽しみに・・・。)


講師、生徒、そしてプレスの人までもが一緒に楽しいひとときを過ごせたこのマスタークラス、やはり今までの「講義」形式のものとはひと味違った和やかな雰囲気だったのが印象的でした。 さっそく次回はシンガポール ラッフルズホテルのショコラティエールを講師に招いて行われるとのこと。ヴァローナの目指す「チョコレートを通じたインターナショナルな交流」は着々と実現化されていっています。日本人ショコラティエ、パティシエたちが講師として諸外国で活躍する日も近いのではないでしょうか。

(2003年4月4日取材)



おまけ!
このマスタークラスの4日後、パナデリアはまたしてもヴァローナの講習会場へ・・・。フレデリック・ボウ氏の単独インタビューの際に「明日の講習会ではケーキをつくるから、出来上がったころいらしてください」とあまーいお誘いを受けたのでした! 当日、会場となった世田谷区池尻の洋菓子会館へ行くと、またしても全国から集まったたくさんのパティシエたちが熱心に講義に聞き入っていました。 美しくプレゼンテーションされたケーキをどうぞご覧ください。


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