フランス・ヴァローナ本社併設の製菓学校「レコール・ドゥ・グラン・ショコラ」の校長、そしてヴァローナのシェフ・パティシエをされている、フレデリック・ボウ氏による講習会が開催されました。パナデリアでも何度か取材させていただいているボウ氏、今回も講習会の様子をのぞかせていただきました。
今回のテーマは「生産性、効率アップ」。日本のパティシエたちの腕前を認めた上での、新しい課題ということなのでしょうか?




会場はドーバー洋酒貿易の講習会場。
きれいで見やすく、みな熱心に聞き入って
います。

「生産性、効率アップ」と聞くと、ちょっと味わい深さに欠けたデザイン性のないものを想像してしまいますが、ボウ氏は「日本人は量産の自動車のような、非の打ち所のない同じものを好みます。でもロボットが作るわけではない。多少デザインが違って、職人の味が出てるものもいいと思います。それは決して、雑に作るわけではありません」 と説明。



ケーキは大きなカードルで仕込み、ショックフリーザーで冷凍保存。それをプティガトーサイズにカットをしてデコレーションというスタイルがメイン。デコレーションに使うチョコレートのクリームも作業性がよく、冷蔵保存をして使う直前にバーミックスでちょっと攪拌するだけで、トロリとなめらかになるという優れものを紹介してくださいました。
チョコレートは温度による状態変化が激しいため、扱いが難しいというイメージがありますが、きっちりとテンパリングを取るなど基本的なことをわかっていれば、効率の良い作業ができるようです。



約1年ぶりの私たちを笑顔で
迎えてくださったボウ氏。
インタビューをさせていただきました。

「チョコレートのブルーミングには配慮が必要。冷凍状態にチョコをまくということは避けるようにします。ミルクチョコレートの方がブラックチョコレートよりもウォータープルーフ性があります。ただ、ブルーミングは実は冷凍ではなくプラスの温度帯で起こるもの。ショーケース内の湿度に注意をすることが必要です。」と私たちの質問に答えてくれました。



ボウ氏が、長方形にカットしただけのシンプルなケーキに、片方だけチョコレートを貼り付けると、見違えるほど個性豊かなに仕上がりに。「シンプルでエレガントなスタイルが好き」というボウ氏のデザインは、パレットナイフでムースにオウトツを付けたり、巻きつけるチョコレートの上方だけにフリンジをつけたりと、オリジナリティのある美しさ。
カードルで一度に仕込むケーキであっても、表現の仕方によってはすばらしいものになるという、ボウ氏からのメッセージが伝わってきました。



いつもの通り、講習に熱が入り予定の時間は1時間もオーバー。「何時に終わるか知らなかったので」と軽い冗談を交えながら講習会が終了しました。

では、今回のケーキをご紹介します。




Alinea
アリネア
Biloba
ビロバ
Casta
カスタ
Ringo
リンゴ

Triangle
トライアングル
Murmure…
ミュルミュール



Va Bene…
ヴァ・ベーネ



デザイン性もさることながら、ショコラの深い味わいを引立たせる素材との組合せはボウ氏ならでは。日本のパティスリーの平均的な味のレベル上昇に貢献する、ボウ氏。またまた、ご本の出版を控えているそうで、ますますご活躍の日々を送られているご様子。その合い間をぬって今年の秋、来日されるかもしれないとのこと。次回はどんな講習会になるか、楽しみです!