あちらこちらでチョコレートの熱狂が渦巻いた2月。チョコレートとは一見縁のなさそうな「夢の島 熱帯植物館」でも、「ル・パティシエ・タカギ」の高木康政シェフによるチョコレートのセミナーが行われていました。
実はこの熱帯植物館には、ベネズエラやガーナなど赤道付近の国の植物、カカオの木が栽培されています。そのような経緯から、2月4日から26日まで「チョコレート&コーヒーフェスティバル」を開催。その一環として、チョコレートのセミナーを開くことになったそうです。



カカオ豆などの展示品もたくさんあります

開始の少し前に会場に到着すると、すでに立ち見のお客さんがいっぱい!
会場中央には緑の葉をつけたまだ若いカカオ豆の木。そして、周りには世界各国のチョコレートや珍しいコーヒーマシン、それから胡椒の木などが並べられています。
夢の島という場所柄でしょうか、子供連れや中高年の方たちの姿が目立ちます。



まだ若そうなカカオの木
残念ながら実はありませんでした

バニラの木はラン科の植物
果実を発酵させて使います



そして、いよいよ高木シェフが登場!
高木シェフといえば、思い通りのチョコレートを作りたいとの思いから、オリジナルのチョコレートを作る日本でも数少ないショコラティエ。原料となるカカオ豆を選別し、焙煎やコンチングの具合などをコントロールして、他にはない味を作り出しています。現在、厳選した豆から8種類のオリジナルタブレットを作っているほか、NHKの番組に出演したり、あの「キット・カット」のパティシエシリーズをプロデュースをしたりと、いちパティシエに留まらない幅広い活動が注目されています。
「カカオ豆からチョコレートを作る際に大切なのは、ロースト。焦げてしまうと香りが良くないので、この加減が重要です。最近注目されているポリフェノールですが、一般にカカオ分70%以上のチョコレートが体に良いとされています。僕がチョコレーを開発する際にも色々なパーセントを試してみたのですが、味や香りのことも含めて最終的にカカオ分72%に落ち着きました」
ちなみに、フランスでは南米系のカカオ豆が、ベルギーではアフリカ系(コートジボアールやガーナ)の豆が好まれるのだそう。そして、質の良い豆の半分は日本が輸入しているのだとか。




今年はヴァレンタイン用に20万個もの
ボンボンを作ったという高木シェフ!すごい!!

まずは、イチゴトリュフとトリュフナチュールのデモンストレーションから。
「チョコレートを扱う際に大切なのが、テンパリングの作業です。溶かしたチョコレートというのは、簡単に言えば油分と水分が混ざったドレッシングのような状態。これを一緒にするために、まず45℃で油分と水分を同じ液体状にし、しっかりとつながった状態を保ったまま31℃まで下げます。これがうまくできないと、かたまりや白いブルームができて、口どけが悪くなってしまうのでとても重要な工程です」
丸いチョコケースに手早くガナッシュを絞り入れながら、初心者にもわかりやすい説明を続ける高木さん。参加者たちも熱心に耳を傾けています。

続いて、ショコラショーのデモンストレーション。
小さななべを火にかけ、牛乳が沸騰したら、チョコレートを一度に加えてホイッパーで均一な状態にしていきます。これは、「ショコラティエ・タカギ」で販売されている、ショコラショー用の刻んだチョコレート。瞬く間に会場中が、チョコレートの甘い香りに包まれます。


趣きのある
スペイン製のコーヒーミル

打砕式コーヒーミル
苦みが強く抽出されそう!


そして、試食用に先の話に登場した8種類のタブレットが配られました。
ここで高木シェフから食べ方のアドバイスが。
「最近は日本でも、ミルクチョコレートよりもカカオ分が高く苦みのあるチョコレートが好まれるようになってきました。味覚というのは、発達して変わっていくものなんですよね。あまり食べなれない方は、最初、苦いとかすっぱいと感じるかもしれません。でも、だんだんとカカオ豆の持つおいしさがわかるようになっていくので、敬遠せずぜひ食べてみてください」
以前の取材で、「日本のチョコレートの底上げをしたい」と話していた高木シェフ。最近は、カカオ分の高い個性的なチョコレートが人気ですが、全体をみるとまだまだ少数派なのだと再認識しました。




どんな風にチョコレートができるのでしょう?
わかりやすく展示されています


「僕自身、修業のためフランスで暮らしていた最初の頃は、チーズや羊の肉の匂いが苦手でした。でも、羊肉は値段が安いから仕方なく食べていたんです。そうすると、不思議なものでだんだんと味に慣れ、美味しさがわかるようになってくるんですよね。チーズも同じで、今では匂いの強いものも大好きです」
せっかくのおいしいカカオを、少しでも多くの人に楽しんでもらいたい。今のようなショコラブームが訪れる前から、チョコレートに取り組んできた高木さんならではの、説得力のある言葉が響きます。



植物館には色鮮やかな
花や、珍しい植物がいっぱい!



最後にこんな言葉をいただきました。
「食欲というのは死ぬまでなくならないものですよね。だから、自分の味覚に合った食べ物を見つけられれば、人生はもっと豊かになります。大切なのは、まず色々な食べ物を食べてみること。そうすると、味覚がだんだん向上し、今までわからなかった味や旨みがわかるようなります。そして、そのうちにきっと、自分の好きな味に出会えるはずです。自分の好きなお菓子屋さんを見つけること。それが何より幸せなことだと、僕は思っています」

チョコレートはヴァレンタインデーだけのものではありません。
ぜひ、自分自身の幸せのために、あなただけのショコラを見つけてみてはいかがでしょうか?



夢の島熱帯植物館管理事務所

住所:東京都江東区夢の島3-2(夢の島公園内)
TEL:03-3522-0281
詳細は下記をご覧ください
http://www.tokyo-park.or.jp/yumenoshima/