6月に入り、イタリアパン教室の第2回目を迎えました。東京は梅雨入り宣言もどこ吹く風、連日真夏日が続き、当日も会場に到着するだけで、大汗をかいてしまうほど。猛暑ニモマケズ、生徒の皆さんはキリリとエプロンを締め、真剣そのもの。パオロ先生もそれに応えて、丁寧に指導してくださいました。今回、教えていただくのは、『Pane ai Fichi(イチジクパン)』。朝ごはんにぴったりの栄養価の高いテーブルパンです。
今回もおいしいパンが焼きあがりますように・・・と、オーブンの神様に願いを込めて、第2回イタリアパン教室スタート!


まずは材料の仕込みから。今回パンに使うイチジクは、粉10kgに対してたっぷり4kg!使用するのはトルコ産のセミドライイチジク。グルテンのダメージを防ぐ為、柔らかいタイプを使用します。4分の1にカットして、くっつかないように小麦粉をまぶします。

「イチジクにはビタミンやカリウム、ミネラルがいっぱい。美容・健康にいいけれど、果糖が多いから、食べすぎには注意ね!」

・・・って、説得力が無いですよ、パオロ先生(笑)
まず始めに、ミキサーに小麦粉とイーストを入れます。室温が高かったので、イーストの量は少し減らして調整。冷たい水にモルトと蜂蜜も加え、粉に加えミキシング。


今回は、ハードなパンに仕上げるため、前回より水分控えめにします


「ハチミツは、砂糖に比べて直接的な甘さではなく、噛むごとにじんわりと感じるような自然な甘味をつけられます。それと、焼いた時にきれいな黄金色に仕上がるのも特徴。今回のパンは水の代わりに牛乳やヨーグルトを代用してもまた風味の違ったパンができておいしいですよ」

材料を軽くミキシングしたあと、大切な“おかあさん”を入れます。ちなみに、パオロ先生のいう“おかあさん”とは、生地種のこと。

「この“おかあさん”は、一週間前に仕込んだもの。きちんと熟成されているからとても香りがいいんですね」

鼻を近づけると、ふんわりと酵母の甘い香りが!種と塩を加えれば、基本的な材料は準備完了。低速でゆっくり、ゆっくりとミキシングしていきます。



合わせたばかりの生地は、このようなネバネバした状態

ミキサーを覗いて、生地の変化する様子をじっくり観察


「ミキシングの目標温度は26℃。それよりも少しでも温度があがりすぎると、過発酵になってしまうので、見極めが大切です。あくまでも時間ではなく、自分の目と耳、そして温度で、生地の状態で計るのが大切」

ミキサーに耳を近づけると、始めは“フーッ、フーッ”と空気を吐き出すような音が。次第に“ピューッ、ピューッ”と高音に変化していきます。

捏ね上がった生地。指でつまんで、薄い膜が張るのが良い生地のサインです



生地がボウルの底からきれいに離れ、目標温度に達したら、先ほど粉をまぶしておいたイチジクを加えて、混ぜ合わせます。この時、あまり混ぜすぎると、イチジクが生地を痛めてしまうので、注意が必要です。
今回は、プレーンの生地も作るので、イチジクを入れる前の生地はこの時点で少し取っておきます。


たっぷりのイチジクとあわせた生地は、フルーティーな甘い香り。鼻を近づけて・・・思わずそのままパクッと食べたくなってしまいそう?


「イチジクは北イタリアでは採れないので、南イタリアで多く食べられます。その他にも、南では巨峰タイプのブドウが9月頃採れるので、生のブドウをそのままフォッカッチャに入れて焼きます。これもおいしいですよ!」

イタリアならではの、地産のフルーツとパンのおいしい組み合わせに思わず、ゴクリ。
さて、イチジクパンはビニールをかぶせて、一次発酵へ。この時の室温は既に32℃。ホイロ状態の工房で、生地はどんどん発酵。フロアタイムを利用して、しっかり水分補給と休憩を取り、この後の成形作業に備えましょう!

発酵してどんどん成長中のパン・・・かと思いきや、パオロ先生のおなかでした(笑)


発酵をしっかりとった生地は、ガスを抱き込み、ふっくらつややか。さて、次は分割です。スケッパーで500gごとに分け、とじ目を下にして丸めます。

「丸め方は、とにかく生地をいじめないように、優しく優しく。イチジクがたっぷりはいっているので、外にはみ出ないようにうまくまとめながら丸めてください」

2回目とあって、作業も板についてきました。たくさんの生地を流れ作業で一気に丸め上げます。

全員で丸めたパンは合計30個。まるでパン屋さんみたい!?


分割して丸めたパンは、さらにベンチタイムを取った後、成形へ。今回は、第1回のフィローネの時と同じく、長いパンに仕上げます。これも、ポイントはやっぱり“生地を痛めない”こと。

「力で無理に延ばすのではなく、ゆっくり優しく転がしながら延ばしてください。このとき、両手を均等に動かすのがコツ。どちらかの手に力が入ると、左右の太さが偏ってしまいます」

さあ、いよいよ皆さんの腕の見せ所!パオロ先生の手さばきを見ると、いとも簡単そうだけど、自分でやると・・・いかがでしょうか?

他の生徒さんに見つめられ、ちょっと緊張・・・

何度か繰り返すうちにコツを覚え、パオロ先生からお褒めの言葉も。「パン屋さんになれるネ!!」


とじ目を下にして、粉をつけたらキャンバスの上に並べます。イチジク入りのものと、プレーンなものの2種類を同じ形に成形しましたが、イチジク入りのものは、イチジクの影響で多少生地が締まり、プレーンよりも小さめに仕上がります。ビニールを被せ、50分の二次発酵を取ります。

手前の二つがイチジク入り。プレーンよりも生地が締まって小さめなのがわかる




この時点で、室温は36℃に上昇!パンもしっかり発酵が取れました。石窯も準備完了で、いよいよ、焼成に入ります。

今回は、イチジク入りの方が膨らむ力が弱い為、クープを入れるのはイチジクパンのみ。 パンを入れる5分前にダンパーを開けて蒸気を逃がしてから、200℃に熱した石窯に入れます。さあ、どんなパンが焼きあがるか・・・!?

イチジクパンには、大きく格子状のクープを。この作業は手早く、でも慎重に・・・

いよいよ焼成。蒸気をあげる石窯は迫力満点です。


窯の前で焼きあがりを待っていると、汗が吹き出てきます。まさに溶岩浴状態!?さすがのパオロ先生もちょっと暑そう・・・

「イタリアでは、本物の薪をくべて窯に火をいれるからもっと暑いよ!焼き上がりも、捏ね上げと同じように時間で計るのではなく、焼き色などパンの状態を見て判断することが大切」

しばらくたつと、窯の中からイチジクの甘い香りが、芳ばしいパンの香りと共に、プーンと立ち上ります。暑い中での作業で、すっかりお腹もペコペコに。窯に入れてから30分弱、ついに焼き上がりです!

あこがれ(?)の長い木ベラで、石窯からのパンの取り出しも体験

パチパチッ・・・おいしそうな焼き立てパンの音に、疲れも吹っ飛びます




焼きたてのパンはしばらく冷ましてからお待ちかねの、試食タイム!“いただきます”よりも、思わず“お疲れ様!”の言葉が出てしまうほど、本当に暑い一日でした・・・。
焼きたてパンと一緒に食べるのは、パナデリアスタッフお手製の具沢山のおいしいブイヤベースに、フレッシュなサラダ。そして、パオロ先生も思わず笑顔がこぼれるワインが登場。疲れた身体に染みる〜!

「パンは、スープに浸して食べるのがイタリア流。こうやって“おいしく、残さず食べる”のが、イタリアの正しい食いしん坊のあり方なんだよ」

贅沢にイチジクがぎっしり入ったパンは、フルーツの甘味とほんのり蜂蜜の風味が、冷えたワインにぴったり。モチモチした食感で食べ応えがありますが、お腹には軽く、次々と手が伸びてしまいます。
プレーンのパンは、魚介のスープに浸して、最後の一滴まで残さずいただきました!

2回目なのでパオロ先生ともすっかり打ち解けて、(ワインの力も手伝って・・・?)楽しい試食会となりました


頭とカラダに、知識とおいしいパンをしっかり詰め込み、お土産のパンの袋を抱え、第2回イタリアパン教室も無事終了しました。シンプルなレシピですが、毎回生地を触るごとに発見があり、まだまだ奥の深いイタリアパンの世界・・・。次はどんなパンが焼きあがるのか、楽しみです。






Pane ai Fichi(イチジクパン)

同じ生地で、イチジクのみ抜いたパン

おまけのパン“スキャッチ”




今回は、パンの発酵時間を利用してパオロ先生に“schiaci(スキャッチ)”の作り方を教わりました。スキャッチは、パンの余り生地を使って職人さんのおやつやランチ用にササッと作る、いわば『まかないパン』。 作り方は至って、シンプル。そして簡単!



1.粉にインスタントドライイーストを混ぜてから種を加え、水に溶かしたモルトと、塩を入れたらミキサーにかけ捏ね上げます。目標温度の26℃まで達したら、生地を取り出し、軽くまとめて30分の一次発酵をとります。

オイルも水分も多いので柔らかく、グルテン弱めのクリーミーな生地


2.一次発酵を終えた生地は、表面はつややかでふんわりモチモチ!

「まるで、赤ちゃんのおしりみたいでしょ!?」

と、パオロ先生。今年生まれたばかりの愛娘みほちゃんを思い浮かべたのか、ニコニコ顔です。分割してから、生地は優しく丸め、さらにベンチタイムをおきます。

ふんわりまあるい生地は、本当に赤ちゃんのおしりのような柔らかさ。思わず「かわいい〜!」


3.成形は、指で上から穴を開けるようにして伸ばす、という至って簡単なもの。なんともイタリアらしい、ラフさが嬉しいお手軽パンです。その後、二次発酵。お手軽・・・とはいえ、しっかり熟成は外せません!

柔らかい生地なので、上から5本の指で押さえるだけで簡単に生地を広げられます。


4.表面に塩を入れたオリーブオイルを塗り、200℃のオーブンで20分焼き上げます。こんがりと色がついたら焼き上がりです!

キツネ色に焼きあがったスキャッチは、オリーブオイルの香りがプンと芳ばしい!