イタリアピッツァコース第2回目の授業は、梅雨の晴れ間が広がる6月下旬に行われました。いったい雨の気配はどこにいってしまったの?と思わせるほどの夏日で気温はぐんぐん上昇。開始時間となる午後1時の時点には、室温はなんと33℃に!

「こんなのまだまだ。この間仕込んでいたときなんて38℃だったから、今日は全然涼しいよ。皆さん、頑張って!」

普通なら冷房をガンガン効かせたいところですが、そうもいきません。エアコンの風で生地が乾燥してしまったり、室温が低いと発酵がうまくいかなかったりと、冷房は大敵なのです。おいしいピザのためなら、暑さも我慢しなければ!


アスパラとオリーヴオイルをなめらかなペースト状に。このシンプルさがいいのです


「今日は「アスパラのピッツァ」と「4種のチーズのピッツァ」の2種類を作ります。前回は基本のトマトソースを作りましたが、今回は違うタイプのピッツァをお見せしましょう。まずはアスパラのピッツァ用のクリームから」

クリームといっても、材料は缶詰の白アスパラとオリーヴオイルだけ。作り方も水気を切ったアスパラと適量のオイルをフードプロセッサーでペースト状にしたら出来上がりで、こんなに簡単でいいの?と心配してしまうほどの手軽さです。これをトッピングのベースとして使用します。もちろん、生のアスパラを塩茹でして同様にペースト状にしたものでも可能。



トッピング用の下準備が整ったら、ピッツァ生地の成形へとうつります。

「これは前回同様に作った生地を48時間熟成させてから、室温で30分程度発酵させたもの。今日は暑いから発酵時間は少し短めです」

熟成は1℃の冷蔵庫で。発酵しない温度で、というのがポイント

バンジュウの中では、適度に膨らんだなめらかな生地が今か今かと待ち構えているようす。生地を傷めないようにそっとカードでとりだして、打ち粉を敷いた上でひとつずつまるめていきます。

さて、ここでひとつ疑問が。パオロ先生は打ち粉にデュラム・セモリナ粉を使用していますが、それは何故でしょう?

「セモリナ粉は強力粉よりも粒子が粗いから台につきにくいんです。それに味の面でも甘みがあっておいしいですよ」

なるほど。こんなちょっとした工夫がおいしさを引き出しているのかもしれません。


綺麗な円に仕上げるためには、綺麗な丸い生地からはじめるのもコツ


「まず指先で端から1pほどのところを1週して溝をつくり、真ん中を押さえて平らにします。それから両手の平で少しずつ生地を薄く伸ばしていって、最後は持ち上げて粉を落とします。ほら、こんなふうに。皆さんも早速やってみて」

見ているといとも簡単そう。でも、いざ試して見るとなかなか思い通りにはいかないのが、パン作りの難しいところ。綺麗な円形にならなかったり、均一な厚みにならなかったり、持ち上げたときにやぶれてしまったり・・・前回作ったとはいえ、皆さん悪戦苦闘しながら生地と格闘しています。

一番難しいのが、生地を持ち上げて伸ばすところ。なかなか均一にならない!


「うーん、これは丸じゃなくて四角だね(笑)」

丸く伸ばしていたつもりが、いつのまにか四角くなってしまった人も。

「初めはミスするのは当たり前。わからないのも当たり前。そこからどうするかっていったら、練習、練習!」

その言葉どおりパオロ先生にお尻をたたかれながら何度も繰り返すうちに、皆、少しずつコツをつかんできたようす。やはり地道に続けるのが成功への近道?!




思い思いに丸く伸ばした生地には、先に用意しておいたアスパラのクリーム生地を塗った後、モッツァレラチーズ、ホール状のアスパラ、パルメザンチーズを散らして窯の中へ。



ペーストとホール、アスパラのダブル使いが新鮮


もうひとつ、4種のチーズのピッツァのほうは、生クリームを塗ってからモッツァレラ、リコッタ、パルメザン、ゴルゴンゾーラをトッピングして焼成。320℃もある熱々の窯に入れて待つことおよそ3分。この、高温短時間が石窯ピッツァの秘訣。おかげで外はパリッ、中はふんわりと仕上がるのです。やっぱりピッツァは石窯が一番!そしてトッピングとの相性も抜群。さっくりとした食感と粉の旨みがしっかりと主張する生地だから、シンプルな具材がぴったりなのです。特にアスパラのピッツァの、野菜のクリームという発想は新鮮でした。

木のへらに乗せる時には、形が崩れないようとにかく素早く

ついに完成!黄金色のフレームがいかにもおいしそう




「このクリームはいろいろ応用がききます。例えばアーティチョークやラディッシュ、トレビスなどとオリーヴオイルを合わせたクリームもお薦め。野菜じゃないけれど、甘エビをボイルしてオイルと塩を加えたエビのクリームもおいしいですよ!」


4種のチーズを贅沢にトッピング。焼けたチーズの香りがたまりません



オリーヴオイルとの相性が良いものであれば自在にアレンジできそう。・・・と、ここで生徒さんからある質問が。

「エビのクリームって、アメリケーヌソースみたいなものですか?」

「あー、やめてやめて。アメリカだなんて、全然違うよ!」

“アメリカ”ということばに敏感に反応するパオロ先生。何やらわけがありそうな予感がします。

「ピッツァをファストフード的に楽しんだり、変わったアイデアなどで創作するのがアメリカ流。でも、イタリアは文化を大切にする国。自分の国で長年培われてきたことにはそれなりの意味がある。だから大切にしないと」

さすがは伝統を守るイタリア人!自国の文化や風習を誇りに思うようすがひしひしと伝わってきます。そういえば、前回も、“魚介類(海のもの)とチーズ(山のもの)は一緒にしない”って訴えていたような・・・。どうやら決して侵してはいけないルールがあるようです。




ミキシング時間はできるだけ短く。熟成させて旨みを作ります



最後に、一般的な業務用ミキサーを使って家庭でもできるピッツァ生地の作り方を教えていただきました。

「とにかく気をつけて欲しいのは生地の温度。決して上り過ぎないように。理想の捏ね上がり温度は24℃です」

これがピッツァに最適なアルトフェックス。いつかは欲しい!



粉とイーストを合わせたもの、水、塩、オリーヴオイルの順にミキサーボウルの中で混ぜ合わせていきます。室温が高いため10℃に冷やした水を使用しましたが、それでも2〜3分捏ねた後の生地温は24℃に!パオロ先生が溺愛するイタリアのミキシングマシーン『アルトフェックス』を使えば、40分ミキシングしても2℃しか温度が上昇しないというから、その差は歴然。あらためて、アルトフェックスのすごさを実感です。





授業が終わった後は、皆でパオロ先生を囲んでのピッツァパーティー。

「このフレームの断面を見てみて。これは気泡が均一だから理想的だよ」

「確かにさっくりふんわりとしておいしい!」

「余り生地を棒状にカットして焼いたものも味わい深いですね」

「これに生ハム巻いたら最高だよ!」

「んー、でも食べ過ぎて太りそう・・・」

「いーえ、ピッツァはヘルシーな食べ物だから大丈夫!」

ヘルシーかどうかはさておき、ピッツァがあるとそれだけで会話も弾むから不思議。

生地だけで作ったフォカチーノも美味



「イタリアンレストランは多いけれど、日本にはまだまだピッツェリアは少ないですね。本物のピッツァを作ったら、きっと日本でも人気になりますよ!」

生徒さんの中にもピッツァに目覚めた人は少なくないはず。パナデリアも、ピッツァ職人の誕生を心待ちにしています!