冷たい風に天を仰ぐと、もう空は秋色。パティスリーに行っても、夏までのフルーツいっぱいのビタミンカラーから、栗のケーキやショコラ、キャラメルなど深いブラウンカラーが増え、それはまるでショウケースが紅葉していくよう。そんな季節に恋しくなるのが、温かいお茶とおいしい焼き菓子。
ガレットの甘いバターの香りに酔いしれたり、こっくりと飴色になるまで火を通したフィナンシェの端っこをカリリ・・・と噛み締めていると、ホントは苦手な寒い冬の到来も、どこか心躍るものに思えてきます。何度かご紹介させていただいている「パリ・セヴェイユ」ですが、今回は焼き菓子のおいしさを再認識。まさに、“時差ゼロ”のフランスのエスプリは、ケーキのみならず、焼き菓子のすみずみまでも浸透しているもの。シンプルだからこそ心に響く、上品かつ力強いバターの旨み、砂糖を焦がす絶妙な火の通し。パリ・セヴェイユ〜パリの目覚め〜という店名の通り、魂のこもった焼き菓子は、どれも目の覚めるような味わいです。焼き菓子はパティスリーに行くと、ついついギフトやお土産といったような脇役になってしまいがちですが、改めて主役級の存在感を感じます。
 これから到来する冬に移り行く前に、焼き菓子が一番おいしい、ささやかな季節を捕まえて。甘く奥深い黄金色のお菓子の世界に、身も心もどっぷり漬かってみるのもいいかもしれません。 (2007.10)


バールドール
¥315

顔を近づけた瞬間に、アーモンドとバターの薫りが強くしなやかに立ちのぼる。ホロッとした生地を噛み締めると、シードルで柔らかく煮た甘酸っぱいリンゴのコンフィが。中までしっかりと火が通っているのでしつこさを感じさせず、キレの良い後味。表面にぎっしりと敷き詰められた、ほろ苦くキャラメリゼされたアーモンドが全体の印象を引き締めます。

バスク・ノア
\315


カチッと焼き込まれたビスキュイ生地と、みっちり濃厚なキャラメルの攻撃的な苦味。生地を噛み締めるとサラサラ・・・と砂のようにほどけ、同時に押し寄せるバターの風味は目が覚めるよう。フィリングに練りこまれた、まったりとした甘さのレーズンや、芳ばしく火が入ったクルミ。ディテールにまで行き渡った力強さは、記憶に刻まれる味わい。

ガレット・ブルトンヌ 
\200

シャクシャクと砕ける生地の隙間という隙間から、口いっぱいに広がるバターの薫り。発酵バターは、チーズのような力強さとまろやかな乳風味、そしてすっきりとした瑞々しさ。バターを更に引き立たせるのは絶妙な塩加減と、エレガントな甘い余韻を残すバニラビーンズ。シンプルだからこそ、素材使い、火入れ、甘さの均衡に卓越したセンスを感じます。

パヴェ・フロマージュ
\200

フタを空けた瞬間から、甘く濃厚なフロマージュの薫りが鼻を打つ。サクッパリッと軽く仕上がったフィユタージュは、香ばしさと同時にバターがするすると溶け出します。口の中には、バターの旨みとチーズの風味の長い長い余韻が。ひとかけらでも満足できそうな、存在感のある一品。

サクリスタン
\525


焦げる寸前まで火を通したキャラメルが、カリンッと弾けるたびに香ばしいナッツの薫りと風味が顔を出す。キャラメルの食感と苦味の強さと、パイ生地のサクサクとした口どけの優しさのバランスが巧妙。ほのかに感じさせる塩気が後味にキレを生み出し、全体をまとめ上げます。





パティスリー パリ セヴェイユ
住所東京都目黒区自由が丘2-14-5 館山ビル1階
Tel03-5731-3230
Fax03-5731-3235
営業時間10 :00〜20:00
定休日無休
アクセス東急東横線・大井町線自由が丘駅より徒歩3分