ダム・ド・フランス
ウイヨー・アンドレ氏


   


2002年7月、店は20周年を迎えました。そもそも鳥越製粉の指導者として日本に来たのは1970年のこと。7月15日、パリ祭の翌日です。当時はそれぞれの製粉会社がフランス人をよんで粉の研究をしていたころです。わたしも、研究とともに日本全国で指導をし、料理学校だけでなくたくさんの家庭の主婦にもパンを教えました。家にある道具で作ろうと、ホイロも発泡スチロールの下にお湯をはって替わりにしていました。
その後、来日からちょうど12年後の1982年7月15日、この店をオープンさせたのです。最初は共同経営で、1989年に完全に独立しました。場所はずっとここです。


20年を経て、機械も大分古くなってしまいましたが、どうぞ厨房を見てください。入ってすぐ右にあるのがフランスパンを焼くためのボンガードオーブンです。窯から出したばかりのフランスパンに耳を傾けてください。パキパキという音がするでしょう。わたしはこれをパンの歌といいます。焼きあがった時にこの歌を歌っているのがいいパン。失敗すると歌ってくれません。フランスパンの皮は薄く強くが基本。中の白い部分をしっかり守るのが役目です。ホテルにも卸しているので、1日120本、多い時で300本くらい焼いています。

奥には、少し温度を下げたデニッシュルームがあります。ここではクロワッサンなど作っています。もちろんフレッシュバターを使っています。フランスではマーガリンを使ったクロワッサンは三日月形に、フレッシュバターを使ったものは真っ直ぐの形をしていたものですよ。

こちらの奥にもうひとつ部屋があります。ここでは夜中にサンドイッチを、昼間はケーキを作っています。ケーキは、フランスのレシピより甘さを押さえていますね。焼き菓子についてはそのままですが、卵やバターの味が違うので、おのずと日本の味になります。ちなみにスタッフは2交代制で、夜9時半からと朝6時から。パンの焼き上げ、ケーキの仕上げと一番忙しい早朝は両方が重なるようになっているんですよ。




では店に戻りましょうか。商品を一通り眺めると、一見菓子パンが多いように感じるかもしれませんが、菓子パン生地というのはありません。食パン以外は、フランスパン生地か、デニッシュ生地、ブリオッシュ生地、バターロール生地で作っているのです。レシピは220くらいあり、その中から定番や季節のものなど選んで商品構成しています。そうそう、このカヌレ。一時大ブームになりましたが、うちではブームのずっと前からやっています。これはボルドー地方のお菓子で、フランスでも他の地方の人は知らないんですよ。わたしもボルドー出身ではないので、そこを訪れるまでは知らなかったお菓子です。

福岡は自分の日本のふるさとだと思っています。パンのレベルは高いと思う。日本では普通1万人の割合にパン屋が1軒と言われますが、福岡は8千人に1軒くらいあると思う。実はこの1,2年でまわりに7店ほどパン屋がオープンしたんですよ。競争が激しくなり、ますますレベルも上がるのではと思っています。



取材日2002.11.9

ダム・ド・フランス
福岡市中央区薬院1-12-8
092-712-3100