エヴァンタイユ

本間 淳 氏

製菓学校を出た後、銀座の「ぶどうの木」、「ホテル西洋」を経て渡仏。1年後、ベルギーへ。そこで2年過ごした後、99年春に帰国。99年7月より、広尾「エヴァンタイユ」のシェフに。


製菓学校で知り合った女房とは、2人でパティシエをやっていたんです。それから一緒に渡仏。夫婦でって珍しいでしょ。でも、同じことをやってもしょうがないな、2人で行って違う勉強をしようかなと思いました。彼女には売り子のスペシャリティになって欲しいなと、フランスの後に行ったベルギーではその勉強を。ベルギーに最初に行った時は、どんよりと雲が立ち込めていて、人もそんなに歩いていなくて、嫌〜な国だなあって思いましたよ。こんな所で働くのかなあって。でも、働くお店もとても気に入ったし、とても生活しやすい国だった。

ベルギーのお菓子は、一概には言えないけれど、基本的にフランスより甘くないです。お酒も使っていませんね。やっぱりチョコレートのお菓子は多い。ベルギーの人たちは小さい頃からチョコレートを食べなれています。僕が今このお店で使っているのも、ベルギーのチョコレートです。向こうの味そのままというわけにはいかないですから、カカオ分も糖分も抑えていますけれどね。向こうの食事は、甘いものが欲しくなる食事なんだと思うんです。料理には砂糖を使わないから。そこが日本と一番違うのかな、欲するケーキの味にも影響を与えているのかな、って思うんですよ。

帰国して、去年の7月に「エヴァンタイユ」に来ました。お店のケーキのほとんど全部に手を加えちゃったんですよ。せっかく来たのだし、僕自身が納得の行くものを作りたいですから。あと、僕、基本的に真似をするの、好きじゃないんです。オリジナリティーを出してまずやってみる。売れなかったら、そこから考えようと思ってるんです。

最初はこの店のスタッフも大変だったと思います。やり方も、作るケーキも変わったわけだから。やっと慣れてきたかなという感じがしますね。僕自身に、今よりももっと余裕が出てきたら、季節限定の商品とかにも取り組んでいきたいなと思っています。若い人たちには、愛情を持って、「これでいいや」って思わずに、手を抜かないで仕事をして欲しいと思います。そして、夢を持って、いい師匠をみつけて欲しい。そこから道が開けると思うから。僕自身、たまたま母親のパン作りなんか見ていて、面白そうかなってこの道に入ったんだけれど、しばらくは物足りなかった。「ホテル西洋」にいた時ですね、目覚めたのは。そこでは時間の使い方から教えてもらいましたし、シェフのものの考え方にも影響されました。今の原点と言えるかもしれません。

昔から、試作したものは女房に食べてもらっているんですよ。自分だけだと、どうしても入り込んでいってしまいますから。こうしたら、ああしたらという彼女のアドバイスはとても役に立ちます。今は産休中なんですけど、いつか一緒に役割分担して店を出したいと思っています。
取材日 2000年2月

本間さんの秘密