<関西押しかけ取材日記>

花とお菓子の工房

フランシーズ 横川 哲也 氏


Franchise
「フランシーズ」は、大阪府堺市・泉北ニュータウンに近い静かな住宅街にあります。入り口に飾られたきれいな花達に心をなごまされつつ、お店に入ると… まず目を引いたのは、正面奥のガラス張りのキッチン。ケーキを作る職人さんの姿が見えます。ショーケースには美味しそうなケーキがずらり。広い店内には、カフェとフラワーショップも併設され、テラスでオリジナルのデセールをいただいたり、お菓子のプレゼントにお花を添えることもできます。「フランシーズ」は“こんなお店があったら!”という私たちの願いを叶えてくれたのです。
コンセプトは〜プレゼントショップ〜 「お菓子、お花そしてカードなど必要なものがすべて揃うお店づくりをしたい」という横川さん。ラッピングペーパーやアメリカから直輸入しているメッセージカードも充実。お菓子の種類や店内の雰囲気も季節毎に変え、常に新鮮さを提供したいそうです。


〜cafe〜
カフェのテラスは優しい光が差し込むぜいたくなスペース。目の前の土手につつじが満開の頃には、オルガンの生演奏とデセールを楽しむ企画もありました。「地域の人々の憩いの場になってもらえると嬉しい。」とこれから絵の個展を開く予定もあるそうです。
カフェで出されるデセールは、ベースの部分は横川さんが考え、盛り付けは他の職人さんに自由な発想でまかせているそうです。すぐに食べていただくものなので、ゼラチンの量を極力減らし、素材の持ち味を大切にしています。

Chef Yokogawaのこだわり
「良い素材を最も良い状態で加工、保存、販売して初めて素材の良さが生きてくる。」とお菓子作りに関しては、徹底的なこだわりを持つ横川さん。冷凍するものは、急速冷凍した後の解凍のしかたに十分注意するなど、保存状態にはかなり気をつかわれるとか。材料はメーカーの名前だけで買うことはせず、必ず自分で使って、味わってみて、一番良いと思うものを選びます。

〜creme〜
生クリームは、関西の方が関東より高脂肪の傾向ですが、最近、重たいクリームは好まれなくなったそう。横川さんは口あたりの軽いクリームを作るため、最新の機械を導入されました。0度近くまで冷やしたクリームにミクロのフィルターで空気を注入しながら、一気にホイップすることによって、高脂肪のクリームも軽い口当たりに仕上げることが出来るそうです。クリームを厚くサンドしたケーキでも「口どけのいい、軽いクリームですね。」とお客様に大評判。

〜beurre〜
バターについて、日本はヨーロッパに比べかなり遅れていると横川さんはいいます。「今は海外の美味しいバターを知る人も多く、日本のバターは改良が不可欠。もっとおいしいものを」とメーカーに改良をお願いしているとのこと。バターは言わば他の乳製品を作った残りでつくるため、メーカーも主力製品にできないのがネックになっているそうです。

〜sucre〜
「甘味のインパクトを抑えながらも、必要な量はきっちり使うため、思い通りの味がだせる砂糖をメーカーに改良してもらっている。」と砂糖にもかなりのこだわりが。東京から大阪に戻られて、横川さんが一番悩んだのは、“甘さの違い”。関西のケーキは関東に比べ、甘さが控えめ。以前勤めていた「成城アルプス」は甘みの強いケーキを作るお店だったので、それに慣れていた横川さんは、甘みを抑えながらも自分の意図する味をだすのに大変苦労されました。


教えて横川さん!
東京のものより一回り大きくて、フルーツ使いの華やかなケーキが人気の関西。東京出身者の多いパナデリアスタッフが疑問に思ったことを質問してみました。

パ) 関西のケーキ屋さんには、どこもかわいいラッピング物やかご盛りの焼き菓子がディスプレイされていますが、これはどうしてですか。
横) このスタイルはもともと「ツマガリ」さんが始めたもので、お客様に大変喜ばれたため、他店も追随したようです。これはツマガリの社長が長い時間をかけて考え出したスタイルであり、形だけをまねしようとしたお店の中には、コスト的な問題をかかえてしまったところもあります。
パ) 関西のお店の焼き菓子には、ほとんど脱酸素剤が入っていますが。
横) 関西ではお菓子の種類が多ければ多いほど喜ばれる傾向にあります。どこのお店も前もって大量に作り、日持ちをさせて売るという方法をとっているため、脱酸素剤を入れざるおえないのです。脱酸素剤は酸素と一緒に水分も吸収してしまうため、袋の中でお菓子が乾燥しない様あらかじめ水分量を増やして作るところも多い。すると焼き菓子の食感がだんご状になって、本来の美味しさがなくなってしまいます。私はそれがすごく気になります。うちの店では作る回数を増やし、常に良い状態で食べてもらえるよう、脱酸素剤は入れないでがんばっています。



久しぶりにお会いした横川さん、なんだか貫禄も出てきたみたい。ますますのご活躍を期待しています。

取材日 1998年