ル・プロッテ

佐藤 吉男
2軒で修業をした後、9年前「ル・プロッテ」へ。99年3月、この下北沢店、日本橋高島屋内店舗、上大岡の京急百貨店内店舗のオーナーとなる。


こだわりやポリシーはありません。メインの材料、粉や卵、バター、クリームについても、どこのじゃなくちゃだめ、というのはないと思ってるんですよ。例えば卵なんて、自分が鶏を飼っている訳ではないですよね。だから、業者を信頼するしかないです。もちろん、鮮度は大事ですから、毎日運んでもらうことはしています。

使うフルーツにしても、今って、季節感がなかなかショーケースで出せないですよね。色々なものが一年中手に入りますから。理想を言えば、その時期の旬のものだけを使うのがいいのでしょうが、それでは商売も成り立たないというのが本音です。いちごが時期でなくとも、いちごは使いますし。妥協と言われるかもしれませんが、ただ、今手に入るものの中で一番いいものは選んでいます。産地についても、自分の中で納得できる美味しさであれば、それがどこ産であってもいいと思っています。
お菓子を作る上で、素材に対するこだわりより、そこからの発展、要するに技術的な部分が勝負なのでは、と僕は思うんです。もちろん、素材そのものが安全であることは大事ですが、お菓子屋ですから、美味しいお菓子を作らなくては意味がないですよね。

実は実家が饅頭屋なんです。そういう意味で、他の人よりお菓子に対するなじみはあったと思います。でも、子供の時から忙しい時は手伝ってきたので、和菓子の大変な部分を見てきちゃいました。自分がそこで働いても、父親と比較されるでしょうし、勝てる訳もないと思ったので、同じジャンルでやっていこうとは思いませんでした。同じ業種でも違う分野で、でも、何か作りたいと、コックさんなんかも考えましたが、たまたまケーキ屋さんになりました。今のお店で3軒目です。修業時代は結構辛いこともありましたね。

今、お店で修業している若い子もね、このまま一生このお店にいようと思っている子は100%いないわけだから、次のお店にいって恥ずかしくないように、僕ができる範囲のことは教えたいと思っています。そのために、イーストの使い方も学んでほしいからビエノワズリも作らせる。アイスクリームやシャーベットもやらせたいんですけど、なかなか時間も場所もなくて。

厨房をね、少し狭くしてしまったんですよ。喫茶のコーナーを作ってしまったので。お客様からの要望でもあったんですが、自分自身、その場でしか楽しめないような、皿盛りデザートをいつか提供できたらなと思っているんです。そのために、この席を作ったというのが、本当のところあるんですよ。なかなか、下北沢という土地は難しくて、喫茶コーナーも大人気というわけにはいかないんですが、それでもなくしたくない理由はそのあたりにもあります。

今は、焼き菓子も、生菓子も、お遣い物に使う人が多いですね。どういう条件でも同じとは思いますが、特に贈答用というのは、一度の失敗も大目に見てもらえない気がして、気が抜けない毎日ですね。
取材日 1999年


佐藤さんの秘密