「1粉 、2種 、3技術
パン作りのプロに教える職人」
田島 實 氏

名言はここに…

日本製粉で粉づくりの現場に10年、その後二次加工(パンづくり)の分野へ。
日本パン技術研究所、カルベル学校(フランス)ジャーマンベーキングスクール(ドイツ)にて学ぶ。
現在はホームベーキングからプロまで幅広く技術指導にあたっている。



パンのプロを教える職人と聞いて、皆さんはどんな人を思い浮かべるだろうか。恐そうな人?厳しい人?いえいえ、田島先生はとっても気さくで明るい方。そして先生の授業はいつも笑いが絶えず、大盛況。(たまに話題が脱線することもあるくらい...筆者も昨年先生の授業を経験済)が、さすが仕事は正確。先生の手からはおいしそうなパンが次々と生まれてきます。そんな田島先生の魅力を探るべくお話をうかがってきました。


Q. 今までのご経歴をお聞かせください。
A. 「日本製粉に入ってまず粉作りから。工場で10年、白くなってやってました。工場っていうのは月曜日の朝運転したら日曜日の朝まで止めないんです。粉は例えば8時間とかで止めてしまうと製品にばらつきが出てくるので1週間ずっと動いたまま、当時は3交代制でやってました。それを卒業すると製品のチェックにまわり、次に粉の分析の仕事をしていました。そのうちに粉だけじゃなく二次加工にどうかということで、パンを焼き始めました。ちょうどその頃日本でフランスパン専用粉を作ることになって、フランスパン作りの難しさ、楽しさを知ったこともパンを焼くきっかけになりました。青山のドンクでカルベル先生(日本におけるフランスパンの父ともいうべきレイモンド・カルベル氏、日本全国で技術指導にあたった。)の講習を受けたり、パンの学校に通ったり、その後本場に行ってこいとのことでフランスのカルベル学校、ドイツのジャーマンベーキングスクールで学びました。そのうち自分のところで焼くだけでなく技術指導もするようになり、ホームベーカリーから大量生産の大手までこの道で30年やってます。今は自分が習ったパンの学校で講師もしています。」

Q. 最近のパンの傾向は?
A. 「近頃パンへの関心がますます高まってきましたね。自分でパンを作る人も多くなってきました。傾向には2つの方向があると思います。一方は日本的なお惣菜パン。例えばひじきを入れたり、ごぼうを入れたりそのままで食べられるようなオニギリ感覚のパンともう一方は主原料だけのリーンなパン、レーズンやりんごの天然酵母でつくったものなど生地を楽しむパンの方向です。」

Q. パン作りのコツを簡単にお願いします。
A. 「1粉、2種、3技術、この3つが柱です。まず粉を知る。それぞれのパンに合った粉を選べるよう粉を知るということ。次に種を。イーストなどの酵母、あるいは天然酵母。そして技術、ストレート法、中種法、液種法などの製法を学ぶということです。」
「最近人気の天然酵母のパンはゆっくり発酵させます。ガスの出た量が問題で容積が約2倍になったときが目安です。発酵によっていろいろな味がでてきて、食べたとき穀物の味、粉の味、滋味といったものが感じられます。ですから発酵は手を抜かないようにしてください。」

お話はまだまだ尽きないのですが…
粉を挽くことからパンの世界に入ったのは本当によかったと田島先生はおっしゃっていました。今教える立場になって、工場での10年間の経験がとても役立っているそうです。

田島先生は群馬のご出身。現在は講師として、各方面そして全国から引っ張りだこですが、いずれは生まれた土地の人々においしいパンを広めたいとお考えだそうです。筆者も群馬出身なので、榛名山のふもとに先生の工房ができるのを楽しみに待っています。

こぼれ話
パン屋さんで行列ができているとついつい並んでしまうという田島先生。特にフランスパンはパン屋さんの腕のみせどころ、一番技術を要するのでフランスパンを見れば他のパンの技術もみえるといいます。今まで焼きたてパンで売れていたものも老化が早いものは最近嫌われてしまうので温度を守って、発酵もきちんととらなければ…と。
取材日 1997年