ぴすとーれ

山下 秀雄 氏
(やました ひでお)
山下さんをクリック!

1945年生まれ 東京都出身。娘さんの病気を治すため、自然食に目覚め脱サラ。『ルヴァン』で1年7ヶ月修業、独立。'88年 秦野市で「むぎ工房」を5年と4ヶ月経営後、'93年、現在の「ぴすとーれ」を開く。


自宅の一角をお店にした「ぴすとーれ」は世田谷の住宅街の中にあります。お店の前には全国各地から届いた材料の箱がたくさん積み上げられています。取材はその日の忙しい仕込みが終わったわずかな合間でしたがたくさんのお話をうかがうことができました。山下さんはとても明るくて元気な方、数々の苦労話さえもユーモアを混じえながら話してくださいました。

もともとは普通の会社員だった山下さん。パン職人になるきっかけは意外なことでした。それは娘さんが膠原病という病にかかったことでした。それまでは食生活には全く関心のなかったという山下さんは自然食と出会い、「あきらめちゃいけない」と心に誓いました。、娘さんの病気を治すため自然食を取り入れ、自然療法も試されたそうです。一時はお医者さんから治療不可能とまで診断された娘さんがだんだんと回復していくのを見て食べ物がいかに体を左右するかを考え、さらには人生観にまで影響を受け脱サラを決意されたそうです。

 そんな時、ちょうど「ルヴァン」でスタッフの募集を知り、話を聞きに行った山下さんはそこで天然酵母パンと出会い、その魅力に感激し、パン作りに関しては全くの初心者でしたが働くことになったのだそうです。こうして山下さんのパン作りの人生が始まったのでした。「ルヴァン」でパンの仕込みを覚えた頃、「ルヴァン」のオーナーの甲田さんから「山下さん、仕込み覚えたら、もう自分のパン焼けなかったらだめだよ。自分のパンを焼きなさい。」とアドバイスされたそうです。そこで山下さんは酵母も自身で起こす事から始め、試行錯誤を幾度と繰り返し、山下さん自身のパンを作り上げていったのです。そして遂にお店を開くことになったのだそうです。

 最初のお店は秦野市の「むぎ工房」。開店当時はなかなかパンも売れなかったそうですが、それでも毎日、毎日、パンを焼きつづけていた山下さんはある日、売れ残ったパンを近所の子供達にあげたそうです。その子供達が友達を連れてくるようになり「この子達が食べてくれるんだったら大丈夫。子供達が食べに来てくれなくなったらパンを作る資格ないんじゃないかな。毎日、同じ子供達がもらいに来てくれるのが嬉しかった。」こうして自分のパン作りを信じて作り続けていくうち段々とお客さんが増えていったそうです。ご自身の引っ越しで止む無くお店を現在の世田谷区代沢に移転し、93年に「ぴすとーれ」をオープン。

山下さんのパン作りのコンセプトはいつでも娘さんにどんなパンを食べさせたいかから始まるのだそうです。色々な経験を通じて山下さんが作り出したこだわりは、無添加、低農薬といった安全な素材選び、そして自然培養した酵母など、体のことを考えたことばかりです。

酵母はリンゴなど数種類の果実と完全粉を使った独自に自然培養したサワー種。粉は国内産の低農薬小麦粉を使用。またきび、ひえなどの雑穀類は石臼で挽き、塩、水、すべてに「自分としてこだわれるぎりぎりのところまでこだわった。」と山下さんは、私達に実際に酵母や小麦を見せてくれながら丁寧に説明してくださいました。山下さんの経験から生まれた食に対する想いは「ぴすとーれ」のパンにぎっしり詰まっていて、食べた人がみんな元気になれるそんなエネルギーがありそうです。そして素朴な形とあたたかな味わいに山下さんの優しい人柄が現われていると感じました。

秘密はここ!
取材日 1998年




ぴすとーれ
東京都世田谷区代沢4−4−2
TEL:03-3795-8967
営業時間:9:00〜18:00
アクセス:東急田園都市線三軒茶屋駅徒歩15分