パティスリー ロア レギューム 
シェフ 小寺幹成さん
 
<経歴>

1973年埼玉県生まれ。「エコールキュリネール国立」卒業後同校の助手を5年務める。
「レ・サヴール」で2年修行後、「パティスリータダシヤナギ」へ。
スーシェフを約2年務める。
2002年11月独立し「パティスリー ロア レギューム」をオープン。

   


製菓学校を出てから5年間は母校で助手をやっていました。店よりも楽といえば楽なのですが、「やっぱりこのままではだめだ」と思い直し、店に入る決心をしました。
初めての店が「レ・サヴール」、高木康政シェフの時です。学校と違うのは、とにかく量が半端ではないということと、拘束時間が長いということ。それまで知識ばかりで頭が先行していたんだと思い知らされました。口は達者ですが、技術やスピードが身についていないから、当然失敗も多かった。でも今になって思えば、理論的なことをきちんと理解して、店に入る前に準備段階のようなものを踏めたのはよかったと思います。
1軒目だったし一番下だったので、高木さんに直接お菓子作りの指導をされることはありませんでしたが、見て学ぶことは多かったです。スーシェフだった長嶋正樹さん(現在「リュー ド パッシー」のオーナーシェフ)や、同じ頃店にいた仲間にもいろいろなことを教わりました。

2年ののち「パティスリー タダシ ヤナギ」へ入りましたが、柳正司シェフには「お菓子作りはもうできるでしょう」と言われて、技術面よりも経営のことや人を使うということについて教わりました。とにかく優しい方で、人生や人間性についてたくさん学ばせてもらった気がします。2年間はスーシェフもやらせてもらい、今でも時々相談にのってもらっています。

この店で作っているケーキは、修業時代に作っていたものに比べると脂肪分高め、味も甘めです。チョコレートも自分自身があまりクセのないタイプが好きなので、ベルギーのものを使います。味にしても素材にしても、ブランドより自分で食べて素直においしいと思えるものを選ぶようにしています。店の裏の実家で野菜を作っているので、その中でお菓子に使えるものがあれば使っていきたいと思っています。ただ、無理やり野菜を使うというのではなく、ゴマや紫蘇、ヨモギなどお菓子に合うものを違和感なく使いたいですね。
お店の横にある野菜スタンド。
箱に代金を入れて野菜を買っていくというのどかなシステム

今、紫蘇に酢と砂糖を加えて似た「紫蘇のジュース」というのを店で出しているんですが、これは母親が昔から作っていたものです。卵も、庭のニワトリが産んだものです。フルーツに関しては、できるだけ地元で作られた安全なものを使いたいのですが、味や値段を考えると難しいこともあります。値段も味のうちですからあまり高価なケーキになってしまうのは避けたいですし。今までの店とは客層も違いますが、「おいしいものを食べたい」というお客さんの気持ちはどこでも一緒です。2人のシェフに習ったことを自分なりに消化して、この土地の人に合うように作っていきたいです。


もうすぐ店をオープンして1年になりますが、売り上げは別にしても、地元のお客さんに受け入れられて仲良くやっていくという点では、順調すぎるほど順調にいっていると思います。そうやって自分の好きなことをやりつつ、まわりの人ともうまくやっていけるのは本当にありがたいことです。もし今後売り上げが伸びたとしても、支店を出したりデパートに出したりということは考えていません。それよりもこの店を充実させていきたいですし、店のスペースを広げることはあったとしても、あくまでもこの場所でやっていこうと思っています。


(2003年9月取材)


パティスリー ロア レギューム

埼玉県朝霞市三原3-32-10 048-474-0377

小寺さんの秘密