ロートンヌ 神田 広達さん 

   


前回の取材の時(3年前)から一番変わったのは、店全体の仕事のスタイルでしょうか。3年前までは、僕が「自分で」という感じだったんです。何でも自分がやらなきゃ気がすまないようなところがあって。それが今では「みんなで進めていこう」というスタイルになりました。これは僕の人間的成長というより、ひとえにスタッフのレベルアップのおかげだと思っています。お互いの信頼感が深まり、厨房は今、とてもいい感じなんですよ。

休みの日にはみんなで映画を見に行ったりもします。先日見たのは『スパイダーマン』。そこからヒントを得て、みんなで考案したデコレーションをクリスマスケーキに施しています。ノエルの断面のところ。一目見て分かると思うので是非楽しんでください。


仕事中、僕がスタッフを怒ることですか?

ほとんどないです。殴る蹴るなんてとんでもない! 

今まで怒ったことといったら、そうだなあ、生クリームを冷蔵庫にしまわないでだめにしてしまった、とか、冷蔵庫が開けっ放しだった、とかそういうことくらい。当然こういう事態はめったにないですから、怒る機会もありません。怒ってもろくなことない、って、自分が若い頃怒られた経験から思うから。  



でもね、テクニックにしても、仕事の姿勢にしても、「伝える」ということは難しいと日々痛感しています。スタッフに力をつけるにはどういう環境がいいのか。僕がどうあればいいのか。相手によっても違うでしょうし。

本当に、伝えるのはとても難しいことなんですよね。でもこれだけは僕がしっかりやっていかなければならないこと。店の力はスタッフの力だから、どんどんみんなにはレベルアップしてもらいたい。そうするともっと色々なケーキが作れる。もうあと少しみんなの力がついたら…、と思うことも正直あります。例えばチョコレートを使ったケーキを増やしたいけれど、今はまだ時期じゃないかなとか。あともうちょっとなんです。
コンクール用作品


チョコレートといえば、3年前の材料はヴァローナ一辺倒でした。今はもっと色々使っているんですよ。ヴァローナは確かに美味しい。ただ、あの個性や特徴をいかせないケーキもある。それには別のものの方がいいいんじゃないかと思って。チョコレートに限らず、お菓子のレシピはしょっちゅういじっているんです。それぞれのケーキに僕が目指す味があって、それに近づくよう、もうちょっと甘く、とか、酸っぱく、とか、チョコの割合を多くというように。


それから、嬉しいのはここ1,2年のお客さんの反応ですね。昔は、ショートケーキやモンブラン、シュークリームばかりが出ていました。他のケーキはね、作ってショーケースに並べても毎日毎日捨てていたんです。それはもう、悲しい気持ちでしたねえ。今はそういうことがなくなって、お客さんに色々な味を受入れてもらえるようになったのが分かるんです。保守的なケーキの人気というのも悪いことではないけれど、「今日はあれを食べてみようか」と、他のものにも目が行くというのは、信頼してくれた証拠なのかなと、心から嬉しい。

それを裏切らないよう、これからもがんばっていきたいし、ますますお客さんに楽しんでもらえるように、スタッフの力もつけていいケーキを増やしたいんです。遠い場所ですが、喫茶コーナーもあるので皆さん是非いらしてください。



ロートンヌ
東京都東村山市秋津町5−13−4
0423-91-3222