即興詩人 草柳 正昭さん  

   


相変わらず、夜は9時頃寝て、朝1時に起きる生活をしています。普通の人にはまだ夜中という時間ですか。

冬は2時半、夏は3時から厨房で仕事をスタート。他のスタッフは6時半から8時に来ます。8月は1ヶ月間休みです。本当は、もう1ヶ月どこかで休みたいと思っているんですよ。この期間は好きな写真と、歩くことを徹底的にします。こういう時間を持たないと、いいパンはできないですからね。

今は10数人で1日千数百個のパンを作って詰めてとやっていますが、将来は自分とあと2,3人で、もっともっと遊びの気持ちでパンを作りたいですねえ。遊びで作ると絶対いいものができるんですよ。アマチュアほどいいものができると思うんですが、どうでしょう。そのときは、作る量も少ない予定だから、全部国産小麦にするつもりです。ひとつひとつの大きさは、不揃いなのがいいですね。適当にスケッパーで切った生地を焼くんですよ。パンはファッションじゃなく生活ですから、そういう方がいいなあと思うんです。そして太陽まで届く気分になるような、力のあるパンを作りたいですね。

これを、貧乏旅行と写真の合間にやれたら最高と思っています。貧乏旅行は絶対したいですね。そのとき自分がどんな写真を撮りたくなるか、今から楽しみなんです。

さて、夢のような話ばかりしましたが、今の店の話に戻りますと、このあたりはびっくりするほど開発されてきました。昔は本当に何もないところで、それが気に入っていたのですが。3年前にパナデリアの方がいらした時から見ても、大分変わったと思いませんか? コンビニエンスストアまでできたのだから驚きですね。住宅が増えたことで新しいお客様も増え、車ばかりでなく、年配のご夫婦が散歩がてらいらしてくれることも多くなりました。


僕自身は、生活ペースだけでなく、パンへの思いもずっと変わりません。誰かがこのパンを食べて、恋をしたようにラブリーな気分になればいい、と思い続けて作っています。これでもか、これでもか、と毎日いいパンを目指して作っていますが、完成というのはないですね。前に向かう気持ちが大事で、多分こうやって完成しないで求めるだけで死んでいくんだろうなあと思います。趣味でやっている写真も同じ。求めて求めて、満足はありません。でも、それがいいんだろうと思うんです。


といってもパンも写真も、少しずつは進歩している実感があります。パンは、第一に作りやすくなりました。厨房に酵母が舞っているのかもしれません。昔よりずっと発酵が安定し、やりやすくなったのを感じます。昔、酵母を使わなくてもパンができるという話を聞いて、そんなことあるわけないと思ったけれど、なるほどこういう環境のことなのかもしれないと最近は思うようになりました。あと、1ヵ月休んでも酵母の調整はそう難しくなくできるように。

こう考えると、白髪が増えた以外にも年々変化していることってあるんですね。また来年もいらしてください。写真が生活に占める割合を増やしている予定です。仕事は大事だけれど、仕事には負けていられませんからね。


取材日2002.11.9.


即興詩人
福岡県前原市多久507
092−324−3205

草柳さんの秘密