カフェ タカラヤ

釣部 高央 氏
(つるべたかお さん)

子供の頃から朝はパンを食べていました。食べるのも、近くで売っているのも、ふわふわのパンがほとんどでしたが、あるときハード系を売っている店で、フランスパンとか食べたんです。小麦の味がして、美味しかった。そこからのめりこむのは早かったですね。ほとんどが独学で本から知識を得ていましたが、実際に自分で作ってみたパンをその店の人に見てもらったりしていました。時には材料をもらうこともありました。結局学校を中退して、その店で働くことに。
そして実際に働き出したら、趣味でやるのとは違うなあと実感。労働の厳しさもありますが、食べ物は極論でいうと"好み"だから、自分が美味しいと思ってもみんながそうであるとは限らない。だから商売って大変なんだと思いました。

最初に働いた店はイーストを使ったパンがほとんどでしたが、オーナーが天然酵母が好きで、1つだけそれを使ったパンがありました。自分もそれに興味を持ち、隣の石川県の金沢に天然酵母を中心にやっている店があって、今度はそこで働かせてもらうことに。東京とは違い、当時このあたりでは天然酵母を使ってパンを作る店はここしかなかったので、遠くからわざわざ来る常連客も多い店でした。そこでは本格的に天然酵母のパンを学びましたが、その後、自分をもっと生かせる場所、また違った形で学べる場所を求めて、同じく金沢の、フレンチレストランが出したパン屋に移ってハード系を中心に焼きながら、半年過ごしました。

東京に来たとき、興味のあった『ルヴァン』に行ってみたんです。そうしたら、『タカラヤ』の貼り紙があったのが、今の店との縁です。ちょうど『タカラヤ』のオーナー職人の女性が、お店を知人に譲り、職人を捜しているときだったんですね。実は『タカラヤ』のことはそれまで知らなかったのですが、詳しく訪ねたら、『ルヴァン』の店の奥から甲田さんが出て来て説明してくれました。自分の興味のある天然酵母を使ったハード系のパンを中心にやっていると聞き、興味が深まったんです。善は急げ・・ということで、すぐに連絡をとり、その日のうちにここに来ました。

初めて食べる『タカラヤ』のパンは、粉の味がして、自分好みで、美味しかった。この味を引き継ぎたいと思い、今では元オーナーとなった女性から、2ヵ月引継ぎをしました。だから、ジャガイモとトウモロコシで起こしたという酵母もそのまま今も引き継いでいます。この店では、中力の国産小麦を使っていて、それが自分ははじめてだったから、生地の捏ね具合と発酵の見極めをつかむのに苦労しましたよ。全粒粉とライ麦は、どちらも国産で、毎朝挽いています。挽きたてって、最初自分もびっくりしたくらい、いい香りなんです。それに国産のライ麦なんて珍しいでしょう。

今、店の上に住まわせてもらっています。パン職人としてはこの上なくいい環境ですね。自分は『タカラヤ』のスタイルを替えるつもりはありません。『タカラヤ』らしさを大事にすることは、自分の中に自然に入りこんできましたし、またそれによって自分も確実に成長できると思っています。そして新しく商品を開発するときは『タカラヤ』らしさを一番に考えます。ベーグルを作ってみたんです。これは、店で働くほかの女性2人からも「店のカラーにピッタリのパンだ」と賛成が得られて。
喫茶のほうで、一時お休みしているメニューがあるんですよ。ペーストやジャムなどもそうです。復活を待っている、今までのお客さんを早く喜ばせたいですね。

取材日 2001年11月


















Cafe Takaraya
鎌倉市御成町5−34
TEL:0467-22-1862

釣部さんの秘密