富夢富夢(トムトム) 

関口 義哉

両親が、ここで1972年に喫茶店を始めたんです。それを10年位前に、パンとケーキの店にしました。自分はまずケーキのほうを5,6年、それからパンのほうを1年ほど修業しました。パンのいい香りに子供の頃からひかれていたので、最終的にパンを選んだのはデイリーなものだからというのもありますが、子供の頃からのその気持ちかなと思います。

1999年にね、店をリニューアルしたんです。コンセプトは"下町を愛するパン屋さん"。ケーキをすっぱりやめ、売るのはパン一筋に。厨房も広げ、人も増やしました。2階にはカジュアルなトラットリアも作ったんです。ここは兄がやっているのですが。

パンのほうは、この時を機に素材の見直しもしました。恥ずかしながらそれまで冷凍生地も使っていたんですが、一切辞めることにしました。僕らは、お客さんをリードしていかなきゃいけないと思ったんです。そのためには、素材の吟味がまずは大切なんじゃないかと。マーガリンをバターに替えたり、内麦も使いはじめたんです。それからサワー種やブドウの酵母も。

サワー種、これを使ったパンは、やはり最初はなかなか売れなかったですね。それで、食べ方から提案していこうと、サンドイッチにして出したんです。ここからライ麦パン、カンパーニュなどの美味しさを知ってもらえれば、パンそのものを買ってくれる日も遠くないと思ったから。今では徐々にですが、そういう方もでてきました。

でも、ハード系はアイテムとしてはそう多くはありません。地元のお客さんを大切に、昔ながらのパンも大切にしていこうとクリームパンやジャムパン、あんぱんなどにも力を入れています。下町は、お年寄りも多いんです。だからこういうパンって、とても喜ばれていますよ。一番人気は角食ですね。毎朝とか、日常的に食べてくれる方が多いから何より嬉しい。惣菜パンも多いです。これには積極的に季節を取り入れるようにしていますね。

自分自身、もっとヨーロッパの文化を勉強することで、新しいパンが生み出せると思うんです。例えばクリスマスにシュトーレン、パネトーネというのもその代表ですよね。パンって、食べるにしても作るにしても、奥が深いものだと思うし、それが魅力でもあります。

店は無休。でも交替で休みをとっています。定休日を決めても、酵母の様子を見たりしに、誰かは来なくちゃいけないでしょう。それなら店は無休にして、交替で休んだほうがのびのび休めると思ったからなんです。

今、墨田区内は1000円以上お買い上げで宅配サービスをしているんですよ。まだ実験的ではありますが、年配の方に向けたこんなサービスも充実させられたらいいですよね。なんといっても"下町を愛するパン屋さん"ですから。

取材日 2001年11月
















明るいスタッフの皆さん


富夢富夢
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TEL:03-3610-1651

関口さんの秘密